2004.11.9

                               中期目標素案(たたき台)・本文


中期目標策定の基本的な考え方


 明治以来行われてきた日本の教育は、欧米に追いつけ追い越せという時代にあっ ては、有効に機能し、社会の安定と発展に寄与してきた。しかし、欧米のキャッチアップを成し遂げた今日、既存の教育システムは根本からの変革を迫られてい る。つまり、すべての分野に一通り精通した、画一的な人材を育成しようとするシステムは制度疲労を起こしている。

人材は社会の発展のための重要な要素である。次世代を担う人材育成という教育に 対する社会の期待は大きい。そうした状況の中、その人しか持ちえないような能力、創造力を引き出す教育が、21世紀の日本社会を支える礎として求められて いる。

 大学は学校教育制度の最終目標、すなわちターミナルである。そのターミナルで ある大学が変わらなければ、教育全体が変わらない。こうした視点に立って、大学改革を行い、日本の教育を変えていくことが必要である。


これからの大学は、社会から閉ざされた大学の中に閉じこもり研究を行う、いわゆ る「象牙の塔」ではなく、時代や社会状況の変化に柔軟に対応していかなければならない。

大学でどのような人材教育を行うか、大学でどのような研究成果を出しているか、 大学はどのような社会貢献ができているか、といった観点から、積極的に教育研究等に取り組み、改革を進めていく大学でなければならない。


多くの大学が存在する東京において、東京都が設置する大学は、都民に対して、そ の存在意義を明確にしていくことが必要である。

東京には都市が抱える様々な問題が複雑化、先鋭化した形で現れている。東京とい う現場における諸課題を見据えて教育研究活動を行っていくことは、世界の人口の約半数が都市に居住する「都市の時代」において、アジアをはじめとする世界 諸都市に共通する、人類の諸課題の解決に貢献していくことにつながっていく。

 一方、東京における集積のメリットを活かした取組も求められている。東京を中 心とする首都圏には多くの大学、研究機関、学術文化団体が集中している。大都市に集積する教育、研究、文化施設と人材、情報の活用、そして、大都市の産 業、文化との連携は、大都市東京に立地する大学のメリットである。そのメリットを最大限に活かし、学外の教育資源等を活用し、大学を超えた取組を積極的に 進めることが重要である。

また、これまでの大学運営については、経営の視点の欠如、意思決定の遅さや硬直 的な運営などが指摘されてきた。教育研究の活性化のために、教員間の競争原理の導入や教学と経営の適切な役割分担を行うなど、運営面での改革が必要であ る。


 以上の大学改革の考え方に基づき、東京都は、平成174月に首都大学東京を開学し、その運営主体として公立大学法人首都大学東京を設立 した。

 この大学改革を着実に、かつ継続的に実施していくために、大学を含む法人に対 し、本中期目標を策定する。


公立大学法人首都大学東京の基本的な目標


 公立大学法人首都大学東京の中期目標の基本的な考え方は以下 のとおりである。


【基本理念】

 首都大学東京は、「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命として、大 都市共通の3つの課題を重点的なテーマとして掲げる。

  1. 都市環境の向上

  2. ダイナミックな産業構造を持つ高度な知的社会の構築

  3. 活力ある長寿社会の実現

この使命の実現のため、幅広い知識と深い専門の学術を教授研究し、大都市の課題 解決に貢献するとともに、大都市で活躍する人材を育成し、人間社会の向上・発展に寄与していく。


【教育】

学生にとって、大学は生きた学問を修得できる場となるべきである。意欲ある学生 一人ひとりの自主性を尊重し、大都市の特色を活かした教育を実施し、人材の育成を図る。


【研究】

「大都市」に着目した高度な研究を推進し、大学の存在意義を世界に示す。大学の 使命に対応した研究に、学術の体系に沿った研究を有機的に結合させ、研究を推進する。


【社会貢献】

都政との連携を通し、東京都のシンクタンクとしての機能を発揮するとともに、東 京の集積のメリットを活かし、他の大学や教育研究機関、産業界、住民及び行政機関と協力、連携し、大学の教育研究成果を社会に還元し、都民の生活文化の向 上・発展、産業の活性化に貢献する。「地場優先」の視点に立って大都市東京の現場に立脚した教育研究及びその成果の地域への還元に取り組むとともに、様々 な大都市の課題が集積する東京や、さらには首都圏を視野に入れ、アジアをはじめ世界を牽引するようなダイナミックな大学をめざす。


【4大学の教育の保障】

公立大学法人首都大学東京は、首都大学東京のほか、東京都立大学、東 京都立科学技術大学、東京都立保健科学大学及び東京都立短期大学の4大学(以下、4大学という。)を運営する。4大学については、平成22年度末までに廃止するが、在籍する学生に対しては教育責任を果たす。


【法人運営】

地方独立行政法人として、組織・人事・財務などの経営の基本的な事項を自ら決定 し、自己責任のもと実施し、自主的・自律的な運営を行う。

また、効率的な業務執行を行うとともに、法人化により人事制度や財務会計制度が 弾力化されることを踏まえ、法人の努力により生み出された剰余金等を原資として新たな教育研究等の発展につなげる仕組みを作り、時代のニーズを先取りして いけるような戦略的な大学運営を実現する。


【中期計画等の策定】

本中期目標の達成に向けた具体的取組を示す中期計画・年度計画を自ら作成すると ともに、その実績を評価・検証し、不断の自己改善につなげていく。

中期計画等の策定にあたっては、本中期目標に定めのあるもの以外についても、数 値目標や達成年度目標を定め、着実に実現していくものとする。

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 中期目標の期間及び教育研 究組織

  1 中期目標の期間

平成17年4月1日から平成23年3月31日までの6年間とする。

 2 教育研究組織

(別紙:教育研究組織図 添付予定)

 首都大学東京に関する目標

首都大学東京では「大都市における人間社会の理想像の追求」の実現を めざし、特色ある教育研究及び社会貢献に取り組み、大学に対する社会的要請や学術研究等の変化に対応して教育研究の改革を進める。


 1 教育に関する目標

  多様化・複雑化している大都市の課題に取り組むには、高度で専門的な知識や理論 のみならず、幅広い知識の修得を通じた広い視野や、物事を多面的に見る力が必要である。首都大学東京は、大都市の実社会で様々な課題を解決し、リーダーと して活躍していける人材の育成をめざす。


学部においては、幅広い知識と専門の学術をバランスよく教授研究する とともに、工夫を凝らした実践的な教育手法により、都市社会の抱える様々な課題を理解し、課題発見・解決能力をもつ人材を養成する。

大学院においては、都市社会が抱える様々な課題の解決に向け、高度な 専門的知識を有する職業人や、学術研究の最前線で活躍する研究者など、高度な知的社会基盤を支える人材を養成する。

そのため、大学の構成員たる教員一人ひとりは、これらのことを踏ま え、各自、教育の質の向上に取り組む。

   

(1) 教育の内容等に関する 目標

 【入学選抜】

多様化・複雑化する大都市の課題を解決するには、様々なタイプの人材 が各自の個性や能力を最大限活かしていくことが必要である。

大学の入試制度が、初等・中等教育全体へ与える影響を考慮し、これま での偏差値のみを重視した入試制度の見直しを図る。

具体的には、一般選抜だけでははかれない、個々の学生の潜在的な能力 を発見するために多様な選抜の充実を図る。また、アドミッションポリシーを明確にし、首都大学で学びたいという意欲あふれる人材を幅広く受入れる。大学全 入時代が目前に迫る中、アドミッションポリシーに則り、適切な人材を受入れる。


【教育課程・教育方法】

   首都大学東京の使命に沿って、社会状況の変化に対応した学部の 編成、コースの設置、プログラムの提供を行う。

   新しい教育システムとして、単位バンクシステムを導入し、自大 学のみならず、他大学での授業等を単位として認定するとともに、学生の将来設計に合わせた多様な選択を可能にし、学生一人ひとりのキャリア形成に合わせた 弾力的な学習カリキュラムが設定できるようにしていく。

   

学部においては、都市にまつわるテーマに沿って、幅広い学問領域の教 養科目を体系的に学習する「都市教養プログラム」や、実践的な英語教育、課題解決型の情報教育やインターンシップなどの都市教養教育を充実し、幅広い視野 や課題解決能力、実践的能力等を育成する。これらの取組を通じて、都市教養という概念が広く社会に認知されるよう努める。

また、これらを基礎に、各分野における専門教育の充実に努めるととも に、学部横断的な都市政策コースを全学的な協力のもと、魅力的なものとする。

こうした教育を実施するにあたり、各学部や基礎教育センターにおい て、責任ある体制を整備し、充実を図る。

大学院においては、各専攻で育成する人材像や課程修了までのプロセス を明確にし、体系的な知識の修得と専門分野の訓練や技術の修得とのバランスのとれた教育課程を編成する。また、高度専門職業人の養成や、職業能力の向上を 目指す社会人のリカレント教育ニーズに応えるため、社会人向けコースの設定等を行う。


   また、図書情報センターにおいては、全学的レファレンス機能の充実を図り、学 術情報の受発信機能をさらに向上させ、教育研究の活性化を図る。


教育の質の評価・改善】

   首都大学東京に おける教育が大学の使命、社会ニーズ・学生ニーズに合った教育を提供しているかどうかという視点に立って、教育の質を自ら見直し、その改善に取り組むこと は、必要不可欠なことである。そのため、首都大学東京においては、各学部、研究科をはじめ全学をあげて、不断の教育の質の改善に取り組んでいく。

基礎教育センター等が中心となり、ファカルティ・ディベロプメント(FD)の体制整備や、効率的に教育の質を改善する仕組みづくりを行うとともに、自己点 検・評価等だけでなく、認証評価機関などの外部評価も加えて、教育の改善に取組む。

また、単位バンクの科目登録において、詳細なシラバスの公表など、一 定の評価基準を満たした科目のみを認定し、教育の質の確保に努めるとともに、学生の授業評価なども活用していく。

あわせて、成績評価の基準を明確に示すことにより、学生の目標設定を 容易にし、学習意欲を刺激するとともに、社会に対しては透明性を確保し、首都大学東京における評価が十分信頼に足るものであることをアピールする。


 (2)学生支援に関する目標

   学生生活は、教育を受ける場だけではなく、自分の将来について 考え、自己決定していくために、様々な経験をする場でもある。学部の学生の中には、進路の自己決定が十分にできないものが増えており、人材育成を側面的に 支える学生支援の重要性が高まっている。一方、これからの大学では、学生支援を学生に対するサービスとして明確に位置づけることも必要である。とりわけ大 学全入時代が目前に迫り、学生一人ひとりに対する支援が注目される。

   学生一人ひとりに快適な教育環境、キャンパスライフを提供する ため、学生サポートセンターを中心にきめ細かな支援を行う。学生に対する支援をサービスとして明確に位置づけ、ニーズを把握しながら質の向上を図る。ま た、東京都、The Tokyo U-club(略称「Uクラブ」)、同窓会をはじめとする学外の団体などとも緊密に連携し、学生にとって満足度の高いサービス提供に努める。 

   卒業生に対しても、就職支援などサービス提供を行っていく。


【学習支援】

   首都大学東京では学生の個性を尊重した教育を提供していくが、 学生にとって、自分の将来の進路に合わせて、どのような分野や科目を選択していくかということは重要である。学生の履修相談に応じるため、教員のオフィス アワーを設けるとともに、学生サポートセンターにおいて、学習カウンセラーが履修相談・キャリア形成などを通じ、学生の自己決定能力を支援する。さらに、 就職カウンセラーと連携することにより就職支援に結びつける。


【留学支援】

   留学を通して得られる知見が学生本人のみならず、国内及び国際 社会での貢献に結びつくという観点から、留学支援を積極的に展開する。

   協定校への留学に加え、私費留学を希望する学生に対し、その目 的が充分に達せられるよう、最新の情報提供などの支援を行う。併せて、協定校の拡大を図る。


【就職支援】

    就職を希望する学生を支援するため、学生サポートセンターが中心となり、きめ細 かな就職指導や就職ガイダンスなどのプログラムを実施することをはじめ、適性検査の実施、求人情報の提供などを行う。

就職カウンセラーが個々の学生の相談に応じながら、進路決定を支援す る。また、

  U クラブ、同窓会の協力を得ながら、大学が一丸となって就職支援を行うことができる体制を整備する。

   学部学生の就職率について、適切な数値目標を定め、その向上を 図る。


  【外国人留学生支援】

   アジアを代表する大都市東京が設置する大学の使命を踏まえ、ア ジアを中心とした留学生を積極的に受入れる。

外国人留学生が首都大学東京での経験を活かし活躍することは、海外で の日本に対する正しい理解の促進や都市間ネットワークの強化にもつながることが期待される。

学生サポートセンターでは、外国人留学生が良好な環境で学習できるよ う、学内のみならず、日本で生活するうえでの様々な障害を取り除くためのサポート体制を用意するとともに、留学生のニーズを注意深く受け止めながらサービ スの向上を図っていく。


   【支援の検証】

   各種支援に対しての学生アンケートなどを行い、成果を検証した うえ、改善を図っていく。

   社会や時代のトレンド、求められる人間像、学生の意識などを常 にリサーチし、各種支援が適切かつ効率的に提供されているかを検証する。



<>2 研究に関 する目標

     首都大学東京における研究が大都市の課題に取り組むことは、ひいては 人類全体が抱える諸問題の解決に貢献するものであり、これが、大都市東京を象徴する大学としての存在意義を世界に示すものとなる。

     一方、これらの取り組みの成果を世界に発信するとともに次 世代に継承するためには、学術の体系化に併せて取り組むことが不可欠であり、これらの基礎的基盤的研究を深化・発展させることは、首都大学東京の使命に強 固な土台をすえるものとなる。

     このため、研究者一人ひとりが、首都大学東京の使命と既存 の学問体系の双方を意識し、社会のニーズを踏まえて、確実な成果を生み出すことを目指す。

また、研究実施にあたっては、社会的責任に十分に留意し、教員の倫理 意識の確立と倫理的配慮を確保していく。


 (1)研究の内容等に関する 目標

大都市の課題は、従来の学問体系とは無関係に複雑かつ多面的に発生す る。このことから、研究をより魅力的なものとし、社会のニーズや時代の変化に応じて機動的・弾力的に対応するため、組織の枠組みを超えて、戦略的に先端 的・学際的な研究を推進する。

東京都が持つ試験研究機関などとの共同研究等により、都のシンクタン クとしての機能を果たす。

また、実社会での課題やニーズを的確に捉え、実用・実践の面から、国 内外を問わず、試験研究機関や他大学などと積極的に連携し共同研究・共同プロジェクトを推進し、大都市の諸問題の解決に貢献する。


 (2)研究実施体制等の整備 に関する目標

     社会のニーズを意識し、その変化や要請に弾力的に応えられ るようにするとともに、多様化・複雑化する大都市の課題を解決していくために、細分化された研究体制を大括りにし、既存の学問体系を横断するような幅広い 視点から研究体制を整備する。

     

また、新たな研究領域にも柔軟に対応できるよう、適正かつ機動的な教 員配置や外部人材の積極的導入を進めるとともに、既存の研究施設や外部の研究用施設等の有効活用を推進し、研究環境の向上を図る。


研究のための外部資金には、国の競争的資金や企業等からの受託研究費 などがある。大学の研究体制等を向上させるため、国は競争的資金の充実を図っており、企業等も大学との連携に期待を持っている。こうした外部資金の獲得は 財源の確保による研究の活性化だけではなく、研究成果の外部アピールともなる。そのため、産学公連携センターを中心に体制の整備を進め、外部資金の獲得を 積極的に進める。

首都大学東京の使命を踏まえた研究に対して、傾斜的に研究費を配分 し、研究の活性化を図る。



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3 社会貢献に関する目標

東京都が設置主体である大学として、その研究成果を積極的に社会に還元すること は、首都大学東京に課せられた大きな役割のひとつである。都庁が持つ組織基盤を活用できることは首都大学東京にとって大きな強みであり、現場が抱える課題 に直に触れることにより大学の教育研究自体を活性化させるとともに、外部資金の調達など、様々な効果が期待できる。

首都大学東京は、大学に蓄積されている知的資源を最大限活用し、大都 市の具体的な課題解決に向け、都をはじめとする地元自治体や産業界など社会との連携を強め、開かれた大学として、先進的な社会貢献を実施していく。


(1)産学公連携に関する目標

   産業技術力強化法においては、人材の育成、研究及びその成果の 普及を大学の責務としている。この趣旨を踏まえ、産学公連携センターを中心に、受託研究・共同研究など、産業界等との連携を組織的に強化し、大学の知を具 体的な成果として、社会に還元していく。

また、学術研究成果について積極的に対外的な情報提供を行っていく。

   産学公連携センターにおいては、大学が保有する特許などの知的 財産を適切に管理するとともに、TLO等との連携を図り、知的財産の有効活用を図る。

   国の内外を問わず、大学・研究機関との連携を図り、研究情報を 共有化するとともに、中小企業などを対象にした技術相談に応じるなど、広く社会に貢献していく。

    

(2)都政との連携に関する目標

   首都大学東京は、大都市東京をバックグランドにもつ、都政の現 場に立脚した大学として、都の各局と連携し、都政が抱える様々な課題において、都政のシンクタンクとしての役割を積極的に果たす。また、都庁をはじめ、 国、区市町村の審議会等への参加を通じ都政及び社会に貢献する。

   また、(産業技術研究所などの)試験研究機関、(都立病院など の)福祉・医療施設、(江戸東京博物館などの)文化施設などの都の施設との共同研究・共同事業等を通し、大都市東京の課題解決や文化の発展などについて連 携を図る。

    

(3)都民への知の還元に関する目標

   大学は学生に対する教育研究の場としての機能に加え、広く地域 の教育・情報拠点としての意義を持っている。首都大学東京では、図書情報センターの一般開放やオープンユニバーシティの設置により、大学が保有する知識・ 情報・教育資源を都民に還元し、地域の自治体と連携も図りながら、生涯学習等のニーズに対応していく。


 東京都立大学、東京都立科 学技術大学、東京都立保健科学大学及び東京都立短期大学に関する目標


 1 教育に関する目標

   東京都立大学、東京都立科学技術大学、東京都立保健科学大学及び東京都立短期大 学は、法人の第1期中期目標期間である平成22年度までに廃止するが、この間、首都大学東京の運営と整合性をとって、円滑かつ効果的、効率的に運営を行 い、原則として、在学生が卒業するまで教育の保障を確実に行う。


  (1)教育の内容等に関す る目標

 標準修了年度又はそれに近い年度までに卒業できるよう、学生に対しきめ細かな 履修指導に努める。平成22年度までに卒業困難な在学生は、首都大学東京へ学籍を移し、首都大学東京におい て必要な教育課程を履修するように措置する。


(2)学生支援に関する目標

   学生にとって、学習環境の保障や将来の進路の自己決定は重要な 課題である。公立大学法人首都大学東京の組織である学生サポートセンターを中心に、就職支援をはじめ様々な学生支援のより一層の充実を図る。


 法人運営の改善に関する目標

 これまでの都立の大学の業務運営に関しては、非効率な大学運営や、税金投入額 に見合った成果が明らかにされていないことなどが指摘されてきた。

  そこで、公立大学法人首都大学東京においては、大学運営における 経営の視点の導入や、自律的・弾力的な運営、適切な事後評価と業務の見直し、業務運営の透明性の向上など、法人化の趣旨を踏まえ、効率的・効果的な法人運 営を行うための取組を推進する。


 1 業務運営の改善に関する 目標

理事長と学長のリーダーシップのもとで、経営と教学の適切な役割分担 を行いつつ、迅速かつ効率的、戦略的かつ効果的な法人運営に取り組む。

   また、経営及び教育研究に関し、法人及び大学全体の見地からの 企画立案機能を充実させ、地方独立行政法人法に基づく経営審議会及び教育研究審議会の審議を経て、業務運営の基本方針を決定し、それに基づき教員と事務職 員が一体となって業務運営を行う体制を整備する。


   一方、法人化に伴い、法人の自己責任において、限られた人材や 財源などを最大限に活用し、首都大学東京の使命に照らして大きな成果を生み出すことが求められる。

そうした観点に立って、本中期目標を中期計画及び年度計画において具 体化を図るとともに、その達成状況等について、法人全体の視点から具体的に評価を行い、評価結果を以後の人材活用や財源配分に反映させるなど、戦略的・機 動的な業務運営を行う。


2 教育研究組織の見直しに関 する目標

   社会状況の変化や技術の革新など学問を取り巻く環境の変化に対 応していくには、既存の学問体系に過度に縛られ、社会の要請に対応できない硬直的な組織では、大学も存在意義を問われることになる。

   このため、公立大学法人首都大学東京においては、時代の変化や 社会のニーズを敏感に察知するとともに、自己点検・評価や外部評価等を踏まえ、柔軟かつ機動的に学部・研究科等の教育研究組織を見直し、それに対応した新 たな組織の整備や適切な教員配置を行う。

   また、部局内の事項については、部局長がリーダーシップを発揮する。


3 人事の適正化に関する目標

適切な人員管理のもと、限られた人材を、首都大学東京の使命や基本理 念を実現するため、戦略的・効果的に配置する。

教員に関しては、首都大学東京の専任教員の定数530人、研究員の定 数190人の早期実現に向け、適切な現員管理を行う。また、法人化のメリットを活かし、教育や学生支援の強化、産学公連携や社会貢献の強化、学内運営の活 性化を図るため、新たな人事制度として、任期制・年俸制や業績評価の導入、勤務条件の弾力化などを進める。

  事務職員に関しては、業務の内容に応じ、都派遣職員、固有職員、 人材派遣職員など多様な人材を適切に活用するなかで、事務組織機能の充実を図るとともに、固有職員については任期制を導入し、幹部固有職員には業績評価・ 年俸制を導入し、組織の活性化を図る。




4 事務等の効率化に関する目標

   法人化に伴い、これまで以上に業務の効率的運営、経費の節減を 進める必要があることから、情報ネットワークの整備やIT化の推進、外部委託の活用等を図り、不断に事務処理の効率化・業務の改善を行う。

   事務組織は、首都大学東京、東京都立大学、東京都立科学技術大 学、東京都立保健科学大学及び東京都立短期大学の各大学の学生の学年進行なども踏まえ、柔軟に見直しを行う。


 財務運営の改善に関する目 標

 これまでの大学運営においては、財源は所要額が措置されてきたが、法人化に伴 い、今後は、ルールに基づいて措置される運営費交付金、授業料等の学生納付金、外部資金等により、財政運営を行っていく必要がある。

 また、法人化に伴い、企業会計方式が適用になるとともに、法人の財政状況を表 す貸借対照表や、法人の運営状況を示す損益計算書などの財務諸表を適正に作成し、公表することが必要となる。

  一方、予算執行の弾力化、効率化により、年度途中で生じた喫緊の 課題に対しても対応できるほか、事前の想定を上回って節約し、又は自己収入を獲得した場合には、設立団体の長である都知事の承認を得て、剰余金を原資に、 新たな業務活動を行うことも可能となる。

  こうした財務会計上の仕組みの変化を踏まえ、経営の視点に立っ て、法人をあげて外部資金等の確保・拡大に努めるとともに、経費の抑制や資産の効率的な運用を推進し、自己の努力と責任のもとでの持続可能な財政運営を行 う。


 1 外部資金等の増加に関す る目標

 一定のルールに基づき交付される運営費交付金を主たる財源として業務運営を行 う中で、法人として、十分な教育水準と高度な研究活動を維持・向上させていくためには、外部資金等の獲得に努めていく必要がある。

 そのため、研究関連の外部資金獲得のための体制を整備するとともに、知的財産 の活用や都政のシンクタンク的機能を果たすための受託調査事業など、多様な収入源の確保に努める。これにより、外部資金の額については、数値目標を定め、 その向上を図る。

 また、オープンユニバーシティにおいても、受講料などの自己収入の増加を図 る。


 2 授業料等学生納付金に関 する目標

 授業料等の学生納付金も、法人の業務運営における重要な自己財源となる。

 授業料等の学生納付金については、地方独立行政法人法に基づき、議会の議決を 踏まえ東京都が認可した上限額の範囲内で法人が定めることとなっていることから、社会情勢等も見定めつつ、適切な料額を設定していく。


 3 経費の抑制に関する目標

     契約方法の改善、管理的業務の簡素化・合理化、IT化等に より管理的経費の節減を進める。


 4 資産の管理運用に関する目標

  法人化に伴い、法人が保有する資産をできる限り有効かつ効率的に 活用するとともに、法人の自己責任において、厳格な資金管理を行っていく必要がある。

 そのため、法人全体の視点から、知的財産、学内施設・設備等の効率的活用を進 めるとともに、安全かつ効率的な資金運用管理を行う。


 5 剰余金の適切な活用による戦略的な 事業展開に関する目標

自己収入の増加やコスト削減などの経営努力により生じた剰余金につい て、それを積み立て、中期計画で定めた使途の範囲内で、翌年度以降の業務の財源とするなど、法人化に伴い柔軟な財政運営が可能となる。

そのため、法人内部においても、経費削減に向けてインセンティブを与 える仕組みの導入を検討するとともに、教職員の意識改革を進め、剰余金を有効に使い、時代を先取りするような、新たな戦略的事業などを展開できるように努 める。


 自己点検・評価及び当該状 況に係る情報の提供に関する目標

  少子化の進行などを背景に、大学間競争が激化するなかで、教育や 研究、社会貢献など、大学が提供するサービスの水準に対する社会の目は厳しくなってきている。

そのため、自らが提供する教育研究その他のサービスの質が、社会が求 める水準に達しているかどうか、定期的に点検・評価を行い、継続的改善に努めることが不可欠である。こうした取組は、その成果を適切にアピールしていくこ とにより、大学の信用力を高め、社会における確固たる地位を確保することにもつながる。


  これまでも、大学の自己点検・評価については、学校教育法などに 基づき、自らの教育研究活動に関する自己点検・評価の実施とその結果の公表が義務付けられるとともに、評価結果の学外者による検証が努力義務とされてき た。また、平成16年度から、すべての大学は、教育研究活動の状況などについて、定期的に、文部科 学大臣の認証を受けた第三者評価機関(認証評価機関)から評価を受けることが義務付けられた。

こうした評価に加え、法人化に伴い、中期計画の実施状況などに基づ き、毎年度の法人の業務の実績について、評価委員会の評価を受けることとなる。

また、中期目標の期間終了時点においては、中期目標の達成状況などに 基づき、中期目標期間における法人の業務の実績について、認証評価機関の評価を踏まえた評価委員会の評価を受けることとなる。そして、この評価結果を踏ま え、設立団体の長である東京都知事が、業務を継続する必要性、組織のあり方など組織及び業務の全般にわたる検討を行い、業務運営の方法等に関し、所要の措 置を講じることとなっている。


  こうした状況の変化のなかで、外部評価も含めた評価の基礎として の自己点検・評価を充実していくことは、極めて重要である。

よって、公立大学法人首都大学東京においては、教育研究に関すること のみならず、法人運営全般に関し、本中期目標に定められた事項がきちんと実行されているかどうかなどについて、定期的に自己点検・評価を行う。また、評価 結果は速やかに公表するとともに、教育研究その他法人の業務運営に迅速に反映させ、法人運営・大学運営の継続的改善を図る。自己点検・評価を有効に機能さ せるため、適切な体制やシステムの整備もあわせて行う。

 その他業務運営に関する重 要目標

 1 情報公開等の推進に関す る目標

法人化に伴い、業務の公共性及び透明な業務運営の確保の観点から、評 価委員会による評価結果は速やかに公表されることとなる。

また、財務諸表などの決算書類についても、公認会計士による監査や、 設立団体の長である東京都知事の承認を受けたうえで、速やかに公表することが義務付けられる。

こうした仕組みの変化を踏まえるとともに、都民へ説明責任を果たし、 都民から信頼される公立大学法人首都大学東京においては、自己点検・評価や外部評価など、法人運営・大学運営に関する様々な評価の結果などについて、速や かに公表する。

また、財務諸表をはじめとする法人の経営状況等を示す資料について も、適切に情報開示を行い、法人運営の透明性の向上を図る。

さらに、教育研究活動を含めた法人の活動状況、経営状況、大学の研究 倫理などについても、速やかに情報開示を行い、社会に対する説明責任を果たすとともに、法人・大学の存在意義を常に社会に対してアピールしていく。

一方、大学では学生の個人情報を扱うことから、学生のプライバシー保 護を全うするため、体制の整備を図るとともに、教務事務等のデータの保護・管理を適正に行う。


 2 施設設備の整備・活用等 に関する目標

地方独立行政法人の財政制度においては、法人が主要な固定資産の取得 や更新を行う場合には、通常は運営費交付金によらず、現物出資及び施設費の交付など、設立団体が別途必要な財政措置を行うこととされているが、法人として も経営的視点に立って、効率的な施設の整備・活用に努めていく必要がある。

そのため、中長期的な視野に立ち、必要な施設設備が効率的に整備・更 新されるよう、計画的な老朽施設の改善を行うとともに、施設の貸出しや一般開放なども含め、既存施設の適正かつ有効活用等を進める。

   また、区部等における大学の新増設を制限していた工業等制限法 が平成14年に廃止されたことを踏まえ、「大都市全体がキャンパス」という新大学の理念に のっとり、都心方向へのキャンパス展開も含め、都内各地における適切な拠点配置に努める。


 3 安全管理に関する目標

法人運営が自律的に行われることになる以上、法人のリスク管理も、基 本的には法人の自己責任のもとで行われる必要がある。

そのため、関連法令にのっとった安全管理体制の確保・維持を図るとと もに、教職員や学生に対する安全教育の徹底を行うなど、リスクの発生を未然に防止するよう努める。

また、災害が発生するなど、リスクが現実に顕在化してしまった場合に 備え、法人内部の危機管理体制を整備するとともに、災害時に大学の資源を地域に還元するなど、日ごろより地域や関連機関との連携等を図る。