[フランス発]東京都知事への要望書

2004年2月11日

2004年5月7日発送(一次集計18名の署名付き)

「世界」7月号,P.218

西川直子訳


東京都知事への要望書

外国語および外国文学の教育に対する強権発動は、つねに自由を侵害するものと なります。通常この種の強権発動は、それぞれの国で文化を担っている あらゆる当事者に事前に諮ることなく、超法規的におこなわれるものです。 東京都立大学人文学部の文学5専攻を廃止する計画を秘密裡にたてた 石原慎太郎東京都知事は、彼自身作家でありますが、憲法を踏みにじっているの みならず、明治期が始まってよりの日本の偉大な文学的伝統、文化的伝統に挑戦 状を突きつけています。

以下に著名する国境を越えた作家、哲学者、教育者は、石原東京都知事が 都立4大学に対し、また数年前から準備されていた[2003年8月1日以前の]新大 学設計に対して加えようとしている、文学の歴史への懲罰ともいうべきこの 暴挙に、断固として抗議をおこなうものであります。

批判精神は真の民主主義の未来にとって、とりわけ人類全体における他者 の理解にとって不可欠なものです。 その批判精神が発展するにあたって、文学・語学教育は高度の必要性を 有しています。 それゆえ我々は、日本の文部科学省と東京都庁にこの要望書を送り、 現計画とは反対にこれらの教育を強化するよう要望いたします。

2004年2月11日
アラン・ジュフロア

[要望書に署名した人々](個々のメッセージは省略)
ジャン=クリストフ・バイィ(作家), ミシェル・ドゥギイ(作家), ユベール・ドラエ(コレージュ・ド・フランス講師), ルノー・エゴ,クロード・エストバン(作家,パリ作家会館館長), ジャン=クロード・グルサール(マルセイユ=リュミニ建築学校校長), ジュリア・クリステヴァ, ジャック・ラング, ジャン=リュック・ナンシー, ドミニク・ノゲス(作家,パリ第一大学教授), アメリー・ノートン, フィリップ・セルジャン(作家,アングレーム高等映像学校美学教授), ジャン=リュック・スタンメッツ(作家,ナント大学教授), ピエール=エチェンヌ・ヴィル(コレージュ・ド・フランス教授), 加藤周一, 大岡信, 海老坂武。

[注:外国人署名者はABC順、日本人署名者はジュフロア氏への返書の 到着順の配列。肩書きは本人の記載による。]