現在在籍する学生・大学院生に対する教育保障についての問題点




現在在籍する学生・大学院生に対する教育保障についての問題点

開かれた大学改革を求める会
於:東京都庁記者クラブ 2004年2月26日


私たちが今回、請願・陳情という不慣れな運動を起こすにいたったいちばんお おきな動機は、いま目の前にいる学生・大学院生たちが明らかに不利益を被ら ざるをえない、という逼迫した事態でした。
 学生・院生たちからの多数の質問状や要望書を無視し去ることもできず、本年 2月に大学管理本部から現大学の学生に対し、「現大学の学生の教育保障につい て」という通知がありました。学生に何らかの保障をしようとする姿勢はそれな りに評価できるかもしれません。しかし管理本部が提示している案はまだまだ不 備なものです。
 いったいそのどこが問題であるのか、私たちの考えを以下に4点挙げます。

1 大学管理本部案では、現行大学は2010年度まで存続するということです。学 生は2010年度まで現大学に在籍できるとは、逆に言えば、その時点までしか在籍 できないことを意味します。
 管理本部は《学生が経過期間内に卒業できるよう、きめ細かな履修指導に努め る》と謳っていますが、学則で定められた期間内でどれだけ大学にとどまるかを 選択するのは学生側の権利であり、現大学の学生を手っ取り早く追い出そうとす るのは越権行為です。
 学則上、休学期間を含めるなら理論値として、現行の2003年度都立大学入学の B類学生は2015年度まで、2004年度入学のA類学生は2014年度まで、本来ならば 在籍することが可能です。
 大学を最短期間で卒業するかどうかは本人の生活と学習スタイルに委ねられた ものです。時間をかけて大学を出ることを管理本部は学業怠慢と見なしている ように思われますが、B類学生のなかには仕事の関連で休学する者もいます。ま た留学等を経て人より年月を重ねて学業を積む者もいます。こうしたさまざまな 履修スタイルを否定するのは、現行大学はもちろんのこと、《修学年数を弾力的 に設計》できることを売り物にした新大学の方向性にも反しています。
2 大学管理本部は、2010年度までに卒業しない学生は以後新大学へ学籍を移し たうえで、現大学の教育課程を履修する、と述べています。
 しかし新大学へ籍を移しても、消滅している専攻があることへの対処にはいっ さい触れられていません。またたとえ実質的に現専攻に準ずる組織が新大学で 保たれている場合でも、「都市教養学部」という従来とはまったく異なった理念 で運営される教育態勢のもと、現大学の教育課程履修が実際に可能であるか、 はなはだ疑問です。
 またそれ以前に、新旧の大学が併存する移行期には、カリキュラム上でも施設 使用でも、二重態勢のもとでおおきな混乱が生じると予想されます。それらを 考慮に入れた具体的な案を示していただきたいと私たちが管理本部に求めている 所以です。
3 大学管理本部は、学部から一年遅れの2006年度に設置される大学院がどのよ うな組織になるのかいまだにその概略すら示していません。
 修士課程入学者の多くは博士課程での研究続行を考えて入学しており、2004年 度入学者は新大学院の博士課程に進むことになりますが、いざその段に該 当専攻が博士課程に残存しているかどうかすら目下のところ不明です。
4 大学管理本部大村参事は2月19日の文教委員会で曽根議員に対する答弁で、 一方で学習保障を謳いながら、他方で現教育態勢を保障するわけではない、 と明言しています。
 事実、人文学部では定年退職者、転出者がいても「過員」解消までは後任教員 を補充することはできません。さらに由々しき事態として、管理本部による 「大学破壊」に絶望してすでに多くの教員流出がはじまっていて教育態勢を揺る がしています。
 学生・院生たちは、すでにいまの時点でも入学時の教育態勢が保障されていな いという実感を抱いています。さらに近い将来、学部専門教育、大学院教育に おける指導態勢が瓦解にいたることを真剣に怖れています。
 私たちも大学改革の必要性を認めるのに吝かでありません。ただ、現在の組織 形態・教育態勢を必要とする学生たちが事実存在している以上、この学生らに 被害を及ぼさないよう連続性を保ち、これまでの教育・研究の蓄積を無にするの でなくそれを活かすような改革であるべきだ、と主張しているのです。この点 を強調しておきます。