「東京都立大学法学部法律学科の崩壊」(P.66-70.)の<むすび>からの引用

人見 剛(東京都立大学法学部教授)

「法学セミナー」2005年3月号, P.69-70.


むすび

以上、東京都大学管理本部が法を蹂躙し、学問と思想の自由を侵犯し、市民的 常識と人としての品位をも放擲して、東京都立大学の解体に狂奔してきたことを 述べた。しかし、この小論を結ぶにあたり、今一つ述べておかねばならないこと は、このような東京都の異常な大学破壊行為に対して、都立大の大学人が全体と して十分な反撃をなしえなかった、ということである。むろん、都の大学破壊行 為に抵抗し、批判する人々がいなかったわけではない。体を張って抵抗した人々 は確かに存在した。しかし、首大に就任しないという他にないほど明確な形で抵 抗する人々が多数を占めるところとはならなかったことは先に述べたとおりであ る。そして、法学部においては、学部長自らが首大の都市教養学部長に就任する ことに明らかなように、都立大の破壊行為を黙認するばかりかそれに積極的に荷 担する人々もあったのである。誠に残念なことであった。

筆者自身も図書館長という大学執行部の中枢に身を置きながら、都の蛮行に対す る抵抗について十分なリーダーシップを発揮できなかったことは本当に無念であ り、都立大に連なる先学の方々、抵抗の志を共有していた多くの同僚達、卒業生 と在学生の皆さん、さらには教育・研究機関としての都立大を半世紀にわたって 支えてきて下さった都民の皆さんに申し訳ない気持で一杯である。

東京都立大学は、都の暴挙によって解体されたわけであるが、自ら崩壊したとい う側面もあることは直視しなければならない事実であると考える。