東京都の新大学設置に向けた教員公募・選考体制の問題点

文部科学省大学設置・学校法人審議会御中


東京都は、都立の現存4大学を統合しこれを改組転換する形で新大学(首都大学東京)の設置認可申 請中であり、新大学の教員組織としては、現4大学の教員の移行を前提に構想を固めてきた。しかし、 大学側との十分な協議を経ないまま、トップダウンで新大学開学準備を強行した結果、教員の転出を招 き多くの欠員を抱えるとともに、新分野の研究組織等の設置もあり、現在新規教員の公募と選考を急い でいる。しかしながら、我々人文学部教授会は、この教員公募・選考の体制およびその運用に関し、大 学の自治を侵すものとしてここに深甚な危惧の念を表明せざるを得ない。教員の選考という大学組織の 根幹に関わる重要事項が、大学管理本部のもとに設けられたまったく別個の組織(教員選考委員会)に 委ねられ、大学として責任を負えない体制のもとに進められているからである(注)。しかも、相当数の 教員選考に結論を下すはずのこの委員会には、規程および運営規則があるようには見えず、審議内容も まったく公表されてはいない。

たしかに、新大学は現4大学とは別個の組織であり、その設置準備も別個に行われうるという考え方 が可能であろう。しかしながら、新大学はまったくの新設ではなく、現4大学の改組転換を前提にする ものである限り、現大学との連続性に十分な配慮を払う必要があることは言を待たない。自立的な教育 研究組織としての大学は、たとえ組織編制上の部分的組み換えがあったとしても、同じ教員集団に立脚 する以上、新大学における教育・研究にも直接の責任を有しその十全な遂行に努める義務を担うもので ある。その意味で、実際に選考作業に携る「分野別小委員会」に委員として現大学教員が参加すること は当然と言えるが、しかし、この小委員会委員の選任が評議会・教授会等大学の正規意志決定機関に図 られないまま行われていることは大きな問題であろう。さらに付言するなら、この小委員会にも委員会 規程や細則などは存在せず、公の委員会組織としての要件を満たしているとは考えられない。 また、少なくとも現体制を見る限り、分野別小委員会の結論が親委員会である教員選考委員会に諮ら れる段階で、必ずしも専門的知識を有するとは限らない委員により恣意的な判断が加えられる恐れがあ ることも指摘すべきである。教学準備会議の座長(新大学学長予定者)によって主宰される選考委員会 には現大学の教員は一人も加わっておらず、小委員会の主査は、議決権を持たず参考意見を述べるだけ のオブザーバーに過ぎないのである。このような体制のもとで、どのようにして教育・研究への不当な 介入を避け、大学が自らの義務を主体的に遂行することができるであろうか。

以上の理由により、我々東京都立大学人文学部教授会は、貴審議会がこうした事態を重く受け止め、 新大学設置認可審査の過程で申請者に対し強く注意を促すよう要請する次第である。

※(注)教員選考委員会は、教学準備会議委員のうち、座長(学長予定者)および外部専門委員   (外部学識経験者)3名の計4名のみにより構成される。

以上

              2004年5月27日    東京都立大学人文学部教授会