世界文学会抗議声明(2003年12月25日)


東京都立大学「廃止」に対する抗議声明

2003年12月25日

東京都知事         石原慎太郎殿
東京都 大学管理本部長 山口一久殿

世界文学会

報道によると、東京都は去る8月1日、「都立の新しい大学の構想について」(以 下、「新構想」)を発表した。石原慎太郎知事は就任以来、東京都立大学、科学 技術大学、保健科学大学、都立短期大学の都立4大学統合計画を追求してきた。 東京都当局はこれまで都立大学教職員と共同して、「東京都退学改革大綱」(以 下、「大綱」)にもとづく検討を進めていた。しかしながら、都知事はそれまで の積み上げてきたこの「大綱」を廃棄して、突如「新構想」を打ち出し、それに もとづく改革内容について都立4大学の全教員に縅口令を敷いたと伝えられる。
 このように、都知事と大学管理本部が専横的に大学の存続を決定し、「新構想」 による統合計画を強権的に進めていることは、教育基本法の精神と民主主義の原 則を踏みにじるものであると考えざるを得ない。また、大学を唐突に「廃止」す るという措置は、学問の自由、大学の自治の原則にかかわる行為であり、違法性 が高い。それにもかかわらず、都は恫喝的言辞を弄しながら、在学中の学生、院 生、教職員に不安を与えており、このような権利侵害の脅威に対して、在学生や 保護者ばかりでなく、広く都民の間から憤激の声が出ている。
 上記のような問題に加え、「新構想」に従えば、教員定数の大幅削減、人文学 部とりわけ英文学、独文学、仏文学などの文学・語学系学科が廃止されると聞く。 同じ分野の学術研究に携わる世界文学会として、私たちは都立大学の存廃につい て重大な関心を寄せている。
 文学・言語の専門的な研究教育は、伝統的にあらゆる学問や文化の中心である。 今日、文学や言語の研究教育、とりわけ外国語教育に対して、さまざまな批判が あることは事実であるが、「実用性」や「速効性」のみに偏重した外国語教育の ありかたは、真の外国人とのコミュニケーションには役立たない。都立大学の文 学・語学系学科がこれまで果たしてきた教育・研究の社会貢献は、広く社会的に 評価されてきたところである。今回の「新構想」による文学・語学系の教員定数 の大幅削減は、これまで都立大学の社会貢献を無に帰す暴挙であると言わざるを 得ない。
 さらに、東京都当局による今回の強圧的大学改革が断行された場合、都立4大 学だけにとどまらず、独立法人化を目前にした国公立大学をはじめ、日本全国の 国公私立大学改革に悪影響が及ぶと懸念される。都知事と大学管理本部が強行し ようとしている都立大学「廃止」の暴挙に対して、本学会は、このような事態を 招いた東京都知事をはじめ東京都大学管理本部に強く抗議するとともに、東京都 立大学の「廃止」計画をただちに中止し、東京都立大学教職員のみならず広く都 民、都議会各派から十分に意見を聞き、統合計画を再検討することを、世界文学 会評議会の決議により強く要求する。

世界文学会会長 鈴木和子
同 評議会議長 酒井 府
同 運営委員長 山本 證