東京都立四大学の廃止と都立新大学構想の一方的推進に抗議する
東京都知事 石原慎太郎殿 日本の生活現実に根ざした心理学の発展および、その成果を国民生活と人類の幸福に 役立てることを目指して1969年以来活動してきた本研究会は、わが国の高等教育機関 における学術研究の発展という点から見て、この間の東京都立四大学の廃止と新大学 構想をめぐる一連の動きに対して、深い憂慮の念を抱かざるを得ない。 昨年8月1日、東京都大学管理本部は「都立の新しい大学の構想について」(以下、 「都立新大学構想)と呼ぶ)を公表し、それまで都立四大学と大学管理本部が協議し て作成してきた大学改革に関する検討内容を一方的に破棄し、その後、教員に対して 「同意書」への署名提出を求めるなど、トップダウンで「改革」を推し進めている。 「四大学の意見を聞きながら構想を進めている」という大学管理本部の主張が根拠の ないものであることは、四大学の教員の過半数が「都立新大学構想」に反対署名をし ている事実や、学生自治会のアンケートで圧倒的多数が「都立新大学構想」に反対し ている事実を見れば明らかである。それにもかかわらず、大学管理本部は、大学の構 成員である教員や学生・院生の意見を全く無視して、こともあろうに「改革」の柱で ある都市教養学部の基本設計作業を河合塾に外注するという事態にまで至っている。 こうした行政による大学への介入は、設置者権限の濫用であり、学問研究の自由や大 学自治を著しく侵害し、学問の健全な発展を危うくするものである。 複数の専門学会・研究会が声明・要望書等においてすでに指摘しているように、既存 学部の専攻を縮小・廃止して都市教養学部を「創設」することを目玉とする「都立新 大学構想」自体、学問的な裏付けをもたないものである。人文系学問の軽視または無 理解にもとづく「再編」は、50年以上の研究の伝統と蓄積をもつ都立大学の学問的資 源をふまえて、それをよりいっそう発展させるものにはならない。昨年10月7日の東 京都立大学総長の声明「新大学設立準備体制の速やかなる再構築を求める」に述べら れているように、都立四大学の構成員は、これまで大学改革に精力を注いできたし、 今後も改革の実現に向けて活動していく強い意志を示している。大学構成員の豊かな 英知を結集することは、大学改革の成功にあたっての必須要素であり、そのためには 大学構成員の声を反映していく場を保障することが求められる。 「都立新大学構想」が一方的に推進されるならば、現在、都立大学に在学し学んでい る学生・院生にとっては、入学時に確約された学習権が侵害されるという由々しき事 態となるであろう。今の段階においても、すでに、学生・院生からは、すでにさまざ まな不安の声があがっており、「都立新大学構想」への批判も高まっている。学問へ の大きな期待と希望をもって入学してきた学生・院生の学業計画や学習機会を保障し ながら、大学改革の内容を吟味していくことが、きわめて重要である。 本研究会は、東京都の「都立新大学構想」と「新大学設立」準備が一方的に進められ ていることに強く抗議し、学問研究の自由と大学の自治を尊重する視点に立った改革 に立ち戻り、大学構成員と東京都とが開かれた場で議論して大学改革を進める協議体 制をただちに作って、真に都民と国民の立場に立った大学改革を進めていくことを強 く求めるものである。 心理科学研究会全国運営委員会 |