2004年5月13日の人事給与制度説明会にむけての質問事項 東京都立大学 総長 I 5年の任期制の新制度と昇給・昇任のない無任期の現行制度との選択制は、違法では ないか?
東京都の新公立大学法人は、地方独立行政法人法上の移行型一般地方独立行政法人であ
るので、現大学の教員の身分は自動的に新法人に承継され、それに伴い、別途、労働協約
や就業規則等において労働条件を新たに定めない限り、現在の労働条件がそのまま維持さ
れるはずである。そして仮に新たに労働条件を定める場合には、この身分承継関係に鑑み
て、労働者の一方的不利益に労働条件を変更することは原則としてできないのが判例であ
る。さらに、同法案の衆議院総務委員会における附帯決議においては、「地方独立行政法
人化に当たっては、雇用間題、労働条件について配慮して対応するとともに、関係職員団
体又は関係労働組合と十分な意思疎通を行うこと」が求められている。 II 助手の身分について 1 新法人の下では、現在の助手は、「研究員」という身分になるとされているが、そ の労働条件の実態はいかなるものと想定しているのか? すなわち、教授等の教員の教育 研究活動の補助者なのか、それとも自立した専門研究者なのか? 2 理工系の助手については、既にその再配置や交流・戻し交流をすることが言われて いる。他方新大学の認可申請書においては、助手もその配置数が記載されているはずであ るが、先の計画と認可申請書の記載との関係はどうなるのか? 3 理工系の助手について経過措置として特別に設けられた「准教授B」なる教員の准教 授への昇任は、いかなる機関においてどのように行うのか? 4 理工系の助手については、その任期、定数管理、再配置などの構想が一方的かつ不 十分ながら示されているが、人文系の助手については、「別途検討する」としたままであ る。どのように検討するつもりか? III 任期制について 1 新大学の教員の人事・給与制度の方向性の一つに「優秀な教員を確保」ということ が挙げられているが、任期制がネックになってそれとは逆の結果になるとは考え ないか? この間に行われた新大学に向けた公募人事における応募状況の低調さは、まさに上の推測 を実証しており、せっかくの公募制が非競争的になっているとは考えないか?さらに任 期制が契機のひとつとなって教員が流出しており、今後ますます同様の事例が増加するこ とも危倶されている。この点に関してどう考えているか? 2 任期制の導入に当たって任期法の任期制と労働基準法の有期雇用契約を混用する結 果、例えば同じ5年任期の教員でも、前者は1年就労すればその後は随時転出できるのに、 後者は5年間の就労を義務づけられるのは不合理ではないか? 3 任期制によって複数年度にわたる(長期的な)外部資金の獲得に不利になるとは考 えないか? 4 任期制の適用によって例えば住宅ローンなどの面で種々の不利が生じると考える が、こうした問題についてどう考えているか? IV 年俸制について 年俸制を構成する基本給、職務給及び業績給のうち、基本給については中期的業績評価 が、業績給については単年度の業績評価を反映して決定されることになっている。このよ うな業績評価は、いかなる機関がどのような基準で行うのか?具体の教育・研究の業績 の個別的評価を想定すれば、評価者は自ずと専門分野等を共通にする教員とならざるを得 ない。その場合、評価者教員と被評価者教員の間に「主従関係」が生み出されることにな るとは考えないか? V 人事委員会について 1 人事委員会の主宰者は、事務局長(理事)であるとされている。しかし、教員人事 は、経営・教学双方に係わり、かつ大学の自治の根幹とされている事項であるから、人事 委員会を設けるとすれば、その主宰者は、教学側のメンバー例えば副学長(理事)とする べきであるとは考えないか? 2 個別教員の選考・審査を行う教員選考委員会の結論に対して人事委員会が介入する ことは許されないと考えてよいか?逆に教員選考委員会の結論に対して教授会が関与で きないとすれば、それは大学の自治に反することになる。教授会が関与する制度設計をす る意思はないのか? VI 新大学に向けて行われている教員人事について 先般来、新大学設立に向けて行われている教員人事については、現大学の教授会が全く 関与することなしに行われている。一方、新大学の設置認可申請は、認可済みの現大学教 授会による審査を経て採用された教員からなることを前提にした個別教員の審査省略の手 続によってなされている。これらのことは相矛盾するとは考えないか? |