東京都立四大学並びに横浜市立大学の独立行政法人化に伴う教員の雇用制度等に関する要望書(2005年2月25日)

全国大学高専教職員組合 中央執行委員長 関本英太郎




2005年2月25日

総務大臣
麻生 太郎殿


全国大学高専教職員組合
中央執行委員長 関本 英太郎

東京都立四大学並びに横浜市立大学の独立行政法人化に伴う教員の雇用制度等に関する要望書

 公立大学振興のための日頃からのご尽力に敬意を表します。

 地方独立行政法人法の下で、東京都と横浜市はそれぞれが設置する大学について、本年4月よりの独立行政法人への移行・改組を進めております。その際、法人への移行に当たって、東京都および横浜市は、それぞれの大学に勤務する教員に対して、これまでの任用条件からの大幅な変更を伴う雇用条件を提示しています。

 東京都は現在都立四大学に勤務し本年4月以降も首都大学東京並びに現四大学に引き続き勤務する予定の教員に対して、法人への移行に当たって任期制・年俸制に基づく「新制度」または任期の定めがなく昇給・昇任のない「旧制度」のいずれかを選択するよう求めています。また横浜市は現在横浜市立大学に勤務し4月以降も勤務を続ける予定の教員全員に対して、法人への移行に当たって任期制・年俸制の雇用制度に切り替えることを提示しています。

 それぞれの教員はこれまで、「教員任期法」に基づく任期制が適用されていた一部の助手を除き、任期の定めのない条件で任用され、いわゆる「定期昇給」の制度が適用され、個人の業績や所属する学部・学科等の事情により異なるとはいえ昇任の機会も与えられていました。これに対して、東京都並びに横浜市が今回提示している法人への移行に当たっての雇用条件は、これまでの任用条件からの重大な変更であるとともに、明らかな不利益変更です。

 地方独立行政法人法では「移行型一般地方独立行政法人の成立の際、現に設立団体の内部組織で当該移行型一般地方独立行政法人の業務に相当する業務を行うもののうち当該設立団体の条例で定めるものの職員である者は、別に辞令を発せられない限り、当該移行型一般地方独立行政法人の成立の日において、当該移行型一般地方独立行政法人の職員となるものとする」(地方独立行政法人法59条2項)と規定しています。

 森清・総務省自治行政局公務部長(当時)は、この法律が審議された国会答弁において、「これは、設立団体の業務と同一の業務に従事する者につきましては、当該地方独立行政法人の職員として引き続いて身分を自動的に保有しつづけることができるという形を法律上措置したものでございます」(参議院総務委員会2003年7月1日)とした上で、後述する附帯決議等において、身分の承継にあたり、移行にあたっては関係者の充分な話し合いと意思疎通が求められることも明確にされています。

 条文上「別に辞令を発せられない限り」というのはその意義が限定されており、「(1) (独立行政法人に承継せず)〇〇省内で他の部局・機関へ移動させるという〇〇省の辞令、(2) 独立行政法人には承継されるが、「相当の職員」にはならない場合の独立行政法人の辞令」(独立行政法人制度の解説・独立行政法人制度研究会編 松尾剛彦内閣中央省庁等改革推進本部事務局参事官補佐)の二種とされており、雇用・身分の承継については揺るぎのないところであるといえます。

 このような法の趣旨に照らした場合、雇用条件も基本的には継承されるのが当然です。

 労使の充分な交渉・協議を欠いたまま東京都や横浜市が提示しているような重大な不利益変更を伴う雇用条件変更を行うことは許されません。事実、この間独立行政法人に移行した各機関や昨年4月に法人への移行を果たした国立大学は、それ以前の雇用条件を基本的に継承しています。

 以上のことから、現在東京都並びに横浜市が進めていることは、地方独立行政法人法の趣旨からの重大な逸脱であるといえます。

 地方独立行政法人法成立時の参議院総務委員会における附帯決議においても、政府に対し、「地方独立行政法人への移行等に際しては、雇用問題、労働条件について配慮し、関係職員団体又は関係労働組合と十分な意思疎通が行われるよう、必要な助言等を行うこと。」を決議しています。

 地方独立行政法人を指導・助言する立場にある貴省として、これらの事柄についての見解を求めるとともに、必要な指導・助言にあたられることを求めるものです。