「宮原試算」(2004年6月15日)

(「大学に新しい風を」第1号,宮原恒晃(都立大学理学研究科)
『傾斜的研究費配分の重大な問題点について』P.7-11 よりの抜粋, P.9 (4))

理工系の研究では150万円の最低保障が必要
理工系の場合、最低限の研究費とはどの程度のものでしょうか。 まず学会への参加費があります。これは年間1人あたり3ー4回の学会参加を仮 定して、約20万円程度と見積もられます。次に論文を読むための図書費ですが、 これは専門雑誌という形態をとることが多いものです。 専門雑誌は外国の出版者によるものが多く、1種類の雑誌の購読に100万程度か かりますから、このような雑誌を20種類購読するとして、その専門に係わる教員 組織の人数で頭割りすると1人あたり60万〜70万円程度が見込まれます。 ただしこの雑誌は中央図書館におかれるのでだれでも閲覧できるものです。 また、前述したコピー代とか郵便代や、パソコンで印刷するための用紙・インク の費用を含めると、1人あたり20万円は下らないでしょう。 さらに、実験系の研究では、液体窒素や液体ヘリウムなどの寒剤や最低限の 化学薬品・実験試料作成のための高純度金属などの購入は不可欠で、 頭割りに平均して1人あたり20万円程度になります。また、自分が出版した 論文の別刷り代金などに10万円程度が必要でしょう。実験系研究室であれば その他に、電気部品や真空部品等に20万円程度が必要です。

以上は、直接研究活動に関わるものですが、直接研究には関わらないけれど 事実上研究費から支出せざるを得ないものがあります。たとえばある学科や 専攻の教育・研究活動の報告書は自己点検・評価のために欠かせません。 その他、必要に応じて研究報告書などを作成するので、1人あたり10万円程度 必要です。

以上を合計すると、1人あたり150万円程度が研究を続けていく最低限の保障 となります。これは単純に頭割りにした金額ですから、教授・助教授・助手を 区別したものではありません。もちろん、この金額の6割以上は、 図書の購読など学科や専攻全体の方針で使途が決まるもので、個々の教員の 自由にならない部分です。物品購入や旅費に支出できるのは1人あたり約60万円 であり,これが最低保障ぎりぎりの金額に近いということになります。  現在、第1次配分により理学部でおきていることは、この60万円の部分が ゼロになってしまったという大変に危機的な事態なのです。したがって、 第2次配分で傾斜配分をおこなうと、一部の教員にのみ配分されますから、 他の教員は自由に支出できる資金がゼロのままであるという事態が継続すること になります。



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