曽根委員の発言より

2003年11月13日東京都議会文教委員会から

http://www5f.biglobe.ne.jp/~s1952328/sone/situmon3-11-13all.html よりの引用


大村参事
...
現在の評価でございます。都立大学の評価につきましてですが、大学受験の面 では難関校というふうにいわれておりまして、比較的偏差値が高い。
 ただ、それに比べまして、またその併願校になっています有名私立に比べま して、社会的、一般的な認知度が必ずしも高くない。大学としての存在意義が 必ずしも明確になっていないためではないかというふうなことを考えられてご ざいまして、特に入り口では難関校ということですが、出口、卒業した後、ど うなっていくということが余りはっきりしていない大学というふうに評価され ているのではないかというふうに考えてございます。
曽根委員
やっぱり管理本部の立場に立った評価です。一体どこでそういう 評価が出ているのか知りたいぐらいですけれども、私、一番新しくて具体的な 評価をビジネズ界でいうと、「ダイヤモンド」という週刊誌があって、ここは こういうのをやっているらしいんですけれども、「ザ・大学ランキング」・・。 十月二十五日付ですから最新の大学のデータ、受験などに活用する、もしくは これはビジネス界の雑誌ですから、そこの卒業生の就職だとか採用に参考にす るんだと思うんですね。
 ここの中でいわれていることは、もっと具体的なんですね。例えば都立大学 が最も評価を受けているものは、第一位というのがあるんですけれども、これ はこの五年間に文科省が出している科研費の伸びを見ているわけですね。  都立大学は200%、つまり、この五年間で文科省からの科研費が二倍になっ たわけです。
 恐らく改革論議も私はそういう刺激にはなっていると思いますよ。そういう 意味では、改革論議というのはあってよかったと思うんですけれども、そうい う意味で、そういうふうに先生たちが、文科省の評価につながる科研費をちゃ んと取るべきものは取ろうという努力も、この間、されてきた。
 あれ、取るのは大変らしいんですけれどもね。それを五年間に二倍にふやし たというのが、全国でトップなんですね。
 ほかにも200%が何校かありますが、これが一番評価のポイントになって いて、それから、少人数教育というのがあるんですね。
 先ほどちょっと話の出た、一先生あたりの学生数、これはこの「ダイヤモン ド」によれば、一教員当たりの学生数は少ないほどいい大学、つまり、手厚い 教育が行われている大学という評価なんですよ。そういう点でいうと、都立大 学はトップテンに入るというぐらいの高い水準をやっぱり示しているというこ とですね。
 もちろん、私もちょっといろいろ調べてみたんだけれども、大学の予算自体 が、学生数に対して決して多いわけじやない。だから、先生の数、人件費を含 めた大学全体の予算が決して膨らんじゃって大きいというわけじやなくて、つ まり、ほかの、例えば事務職員の方なんかは、私は率直にいって、例えば大阪 府立大学に比べて相当少ないですから、事務職員の方々のいわば人数を犠牲に しながら、大学の先生をふやして、学生への手厚い教育の体制をつくっている。
よしあしありますけれども、そういうことが少人数教育としての評価につながっ ているんです。
 ですから、マイナスじゃないんですね。これはビジネス界での評価はむしろ 高いわけです。
 そういう点が評価されているとか、それから、司法試験とか国家公務員試験 とか公認会計士等々の資格取得も、全国百四十五大学の中で十五位ということ でトップクラスに入っているということなど、産業界にも、社会全体に対する 貢献度という点でも、私は総合的に見て、都立大学は大学らしい大学という点 で、総合評価の非常に高い大学ということが、この「ダイヤモンド」などでも 評価が得られているという点は、非常に重要だと思うのです。
 それから、もう一つ例を挙げますが、昨年、たしかこの委員会で取り上げら れたようなんですけれども、 「ネイチャー」という雑誌に論文が載ったという 方がいて、私じゃないんですけれども、たしかほかの委員さんが取り上げて、 すばらしい先生がいるという話がありました。その研究者が、今、外国の大学 に客員研究員として、ことしの三月に都立大学をやめて、移られているのです。  その方から、ほかの委員さんも来たかもしれませんが、私あてにメールが来 ていまして、率直な意見が寄せられているんですよ。これを読んで私、愕然と したんですが、この方は都立の人文学部出身なんですね。で、学生と大学院合 わせて9年間、都立大学に学んで、助手として二年間勤務した。
 彼の意見ですが、都立大学は評判どおりのすばらしい大学で、その最大の特 徴は少人数教育である。教員と学生との距離が非常に近く、教員が一人一人の 学生の特徴と興味を把握してくれていて、きめ細かな指導を受けられたという ようなことで、自分が自由に自分のやりたい研究をやれることができたのも、 まさにそういう大学の中だったからこそだ。 だからこそ評価の高い「ネイチャー」誌に掲載されるような革新的な発見をす ることができたと信じている。 これは私個人の成果ではなく、都立大学が革新的な研究を生み出す環境を持っ ていたことによるんだ。だからこそ優秀な教員が集まり、優秀な学生が集まっ たんだと振り返っている。
 ところが、なぜこのすばらしい大学を彼はやめざるを得なかったかというと ころが、後でまた書いてありまして、つまり、改革の波に巻き込まれて、研究 時間を割かなきやならなくなってしまった。
 改革といっても、結局は学部教員の縮小整理であって、何らシステムを別に 新しくするわけでもなく、全体が少ない人数に多くの仕事をやらせるという体 制に移行することだった。それで自分の研究条件を確保するために、万やむを 得ず離れたということなんですが、しかし、去った後もこの大学のこの八月一 日以降の動きも、外国の大学でも全部つかんでいまして、彼は今後の都立大学 の動きを非常に危倶しているわけです。

 私、こうした現実に人材流出が起きてしまっている。ここの委員会でも取り 上げたほどの優秀な人材が、こうやって流出して、それでもなおかつ、もとの 大学を心配している。
 この声にやっぱりきちんとこたえるのが、その声にあったように、今の都立 大学の本当に一番大事なところをいかに守って、その上に改革を進めていくの かということが、いわばまさにこのメールは象徴していると思いますが、これ をどう受けとめますか。
*註釈
・2003年11月13日の時点での議論である。
・「今年の3月に都立大をやめた」となっているので,2003年3月にやめている。 (これは,2003年8月1日の爆弾会見の前)
・辞職した理由として挙げられているのは
(1)「改革の波に巻き込まれて、研究時間を割かなきやならなくなってしまった。」
(2) 「改革といっても、結局は学部教員の縮小整理であって、何らシステムを別に 新しくするわけでもなく、全体が少ない人数に多くの仕事をやらせるという体 制に移行することだった。それで自分の研究条件を確保するために、万やむを 得ず離れた。」
疑問: 8月1日以前も「改革問題」でこのような悲惨な状態だったのか?
答え: YES. 実は,8月1日以前の管理本部との共同作業も,2年以上に渡る かけひきの連続で,改革に関する委員に選ばれた教員は,毎週非常に長時間, 改革に関する会議で時間を消費していた。

今,管理本部とのやりとりで多くの時間を消費させられているのは, 教学準備委員会の委員,ならびに,個別に任命された作業チームの メンバー。もちろん,対案作りに参加している教員,署名活動をしている 教員,文教委員に説明に行っている教員などにも多大な負担がかかっている。 研究,教育,(行政改革で職員や非常勤講師が減らされている中での) 大学の運営管理だけで,普段から手一杯のところに, 改革論争に巻き込まれているのが実情。
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