独立行政法人化 どくりつぎょうせいほうじんか

略語: 通常「独法化」と略される。

英語:独立行政法人:Independent Administrative Corporation

使用上の注意: 「独法化」は,音の上で「独」+「法科」のように取られてしまう恐れが あるので,通常の会話の中に「独法化」という言葉を いきなり持ち込むのは避けた方がよい。最初は,長くてめんどうでも 「独立行政法人化」と言うようにしたい。

説明:
独 立行政法人制度は, 当初,国家機関の業務効率化を目的として作られた。
◯ 2003年7月9日に国立大学法人法が成立。この法案は, 「それぞれの大学に権限と責任を与え、個性的で競争力のある存在にさせることが狙い」 とされているが,実際には,文部科学省の権益・支配を確保・拡大する可能性が 高い(詳しい経緯に関しては,国公 立大学独立行政法人化の諸問題を参照)。
その特徴は:
● 6年という中期目標を掲げて研究する,
● 中期目標は文部科学大臣が最終的に決める,
● 大学の管理を学長に集中させる,
● 文部科学大臣には,学長の解任権まで与えられている,
● 6年という中期目標が達成されたかどうかは,大学評価機構と総務省が審査す る,
● 大学の教員を非公務員化することで,営利企業との兼業を容易にすることが できる, など。
その結果,大学の淘汰が進み序列化が深刻になり,地味な長期間の研究が必 要な分野は日本の大学から消えていく恐れがある。 大学経営に焦点が集まり,予算も経営効率化の名目で年々減らされていく 可能性が高い。
◯ 2004年4月1日から,国立大学が法人化された。法人化の前に, さっそく当初からの予算削減を行うとの予定が発表され,すでに大問題になった。
◯ 2003年7月3日に,地方独立行政法人法が成立し,東京都の現4大学も2005年4 月開学予定の「首都大学東京」と並んで法人 化される予定。そうすると,2010年までは,1法人5大学の形になる。
◯ 公立大学の法人化に当たっては,公立大学協会の会長である 西澤 潤一氏 (現岩手県立大学学長,「首都大学東京学長予定者」)自らが, 「公立大学法人化に関する公立大学協会見解」(pdf) を発表している。その中には,次のような要請が含まれている。
「設置自治体が法人化を選択する場合、 公立大学と十分な協議を行い、新たな協力関係を築いていくことを要請します。」
しかし,皮肉なことに「首都大学東京」を設計するに当り,東京都(大学管理本 部)と現4大学の間では,相変わらず協議はおこなわれていないし, 新たな協力関係を築こうという姿勢すらない。大学管理本部は, 「話し合いはしても協議はしない,『新しい大学』を作っているのだから, 旧大学の人の意見は聞かない」と繰り返している。

いったい西澤潤一首都大学東京学長予定者は,この現実をどのように とらえているのだろうか? かつて公立大学協会会長として自分で主張した ことを自分で否定していることに気づいていないのだろうか?

◯ 地方独立行政法人法では,その第71条に「効率大学法人の理事長が当該法人 が設置する大学の学長となる」と規定されているが,なんど, <学長を理事長と別に任命することが可能である>というただし書きが ついている(東京都の強い要請が背後にあったという説がある)。

関連説明のポインタ:
O-4 独法化すると大学はもっ と自由になるか
O-5 独法化するとど んな問題が起きるか

蛇足情報:
東京都のこのような「大学改革」は,行政当局が徹底的に教育をコントロール できるようにするという意図が背後にあるといわれている。独法化により, 東京都→首大理事長→首大学長→首大学部長→教員という縦の 管理体制が完備される一方,教授会の決定権が否定される。 すなわち,現場で起っているさまざまな教育や研究の問題を, 教授会という場で話し合って大学を運営していくという民主的なボトムアップ (bottom-up)な意思決定が消滅し,外部委員を含めた各種委員会を 立ち上げて,教育や研究に関わる意思決定をトップダウンにやっていく 方式が採用される。そのような方式に変える理由は,これからの大学が, 社会のニーズにすばやく反応して変っていくべきだというもの。 しかし,残念ながら多くの政治家や企業家は社会のニーズだけを追いかけるのが大学での高等教育では ないという基本的認識に欠けている。 何十年,何百年という基礎研究の元に,現在のテクノロジー社会が 存在していることが分かっていない。基礎研究をおろそかにする国は, やがて基礎研究を地道に積み重ねる国に隷属させられ,滅んでいくであろう。
間連語:<中期目標,大学評価機構,学長の解任権,総務省, 定款,公立大学協会>
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