都立大の危機 --- やさしいFAQ

F.   人文学部評価に関する質問


ダイレクト・ジャンプ F-1, F-2, F-3, F-4.

F-1  だいたい東京都は,都立大学の 人文学部をどのように評価してきたんですか? 都立大学の「花形」 は人文学部で,東大,京大と並んで有名だって誰かが言ってたけど。   次へ

ポーカス博士

はっはっは,そうかそうか。確かにそれだけの専攻もあるぞ。 でな,人文学部の評価というのは,予備校や大手出版者の大学案内 を見れば分かるが,非常に高い。しかしだな,今回の都立の4大学の 統廃合は,既存の学部の評価に基づいてこのように変えろ, というプロセスでは進んでいないのじゃ。 現在,人文学部では 「外部評価」を受けている最中で,全国の国公立の中で初めて 文系の評価が出されると注目されている。その評価に 基づいて改革をしろ,というのなら筋が通っているだが。
「都立の新しい大学」では,人文学部の教員の数は現在の半分以下になるらしい。 7月31日までの案では,教員定員139人96人にすると言っておった( これは34%のリストラ)。
それに対して8月1日からの案では,教員定員139人64人にすると言っておる(これは 54%のリストラ)。

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F-2   人文学部から大量のポストが なくなるって話ですが,なんで人文を目の敵にして,つぶそうとするんですか?  次へ

ポーカス博士

4大学統廃合というのは,最終的にはスクラップ・アンド・ビルド方式 を採用しつつリストラをすることなんだ。新しいものを作る場合には,まずどこ かをつぶして(scrap),その代わりに新しいものを作る(build)という発想じゃ。 どこをつぶしたらいいかと言うと,一番弱い所,一番理由を見つけやすいところ。 つまり就職率が悪いとか,教師ひとり当りの学生数が一番少ないところというこ とになる。管理本部では,教師ひとりあたりの学生数は人文で4.6人と 主張しているが,計算の仕方があまりに幼稚じゃ。おそらく人文学部の 収容定数639人を教員定数139人で割っただけ(639÷139=4.59)じゃろう。 人文学部の教員は, 教養の授業も外国語の授業も非常に多く担当しているのに, それを無視して計算しているのだよ。でな,大学管理本部では, その実態を知っていても口にしないのじゃな。都合のいい数字だけを使うのじゃ。 就職率に関しては,人文学部では就職結果を届けてこない学生が非常に多いので 実態がよくわからないのじゃが,実は大学院進学率がおよそ20%ある。 平成15年度の人文学部卒業生の進路に関しては,人文学部学務が発表した この資料 を見れば分かるが,大学院進学率はおよそ23%だった。 もっとも,そんなことは東京都大学管理本部にとってプラスにならないから, 一切言及しないわけじゃ。

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F-3   人文学部の先生が平均してたった4.6人の学生しか 世話していないというのは確かに不思議ですね。 でも,その「教員一人あたりの学生数負担」の計算方法のどこが悪いんですか?  次へ

ポーカス博士

「人文学部の収容定数639人を教員定数139人で割っただけ」では,まず実際の授業数 をまったく考慮していない。教員一人当り週4コマ担当している場合と週5 コマ担当している場合では,対象としている学生の延べ人数に大きな差が出る。 1クラス40名だと仮定すると,教員一人当り週4コマ担当している場合は 40× 4=160名,週4コマ担当している場合は 40×5=200名となるじゃろう。
さらにさっき言ったように,教養科目のかなり多くの部分を人文学部では担当している。 その中には外国語科目の負担がある。これを明らかにするには,実際の履修データを すべて調査するか,あるいはある程度の誤差を認めた上で,特定の知られた数値 から算定する方法がある。この後者の方法で丹治先生が算定した結果, 人文教員1人あたりの学生数の負担は9.9人となった。
詳しい算定の仕方に関しては, ここに書いてあるので参考にして欲しい。 こうやってみると,教員の教育負担の現実の数値をつかむのは なかなか難しい要素がからんでいることがわかるな。 今回の騒ぎで明らかになったのは, 数字で相手を説得する時には,その数字の算出根拠を示す必要がある ということだ。そして,その数値の信頼性は,データと その処理方法に依存するので,盲目的に数字を信じてはならんという ことじゃな。管理本部の数字は,繰り返しマスコミに取りあげられているが, その数値には,授業のコマ数や,教養の人文系科目の負担,教養外国語 の負担は入っていないということを指摘せねばならないな。 「人文教員1人あたりの学生数の負担は4.6人なんですってね」 と言われたら,「いえいえ,9.9人ですよ。」と言い返す必要がある。 もっとも,最近は4.6人という数字があまりにも疑わしいという声が 高まったので,管理本部もまったく繰り返さなくなったと思ったら, 12月24日に 石原知事は,これほどナンセンスな数字をまた何事もなかったように公共の面前 で本当のことのように繰り返した。 都合の悪いと思ったことは言わない,という管理本部の 基本的体質はなんら変わってはいないが,都合のいい数字はいつまでも, たとえどんな反論があろうとも繰り返すというのは輪を掛けてたちが悪い。 南雲人文学部長が資料付き抗議声明 を翌日に出したが,きっと知事は読んでも読まなかったことにするのだろう。 こういうのを「平気で嘘をつく人」と呼ぶのは理にかなっておる。 数字をつかって意図的に嘘をつくというのは,政治家を含めた公人に関しては重 大な犯罪として検察庁に取り締まってもらいたいものだ。「公人が公の席上で数字を挙げる時には, その根拠を示さなかったら禁固10年の犯罪となる」といった法律が必要かもしれ ん。ついでに言うと,その附則として,「一度公開した数字が根拠ある別の数字 で否定されたら,公人は公の席上でその過ちを認める発言をしなければならない」 というのも必要かもしれん。

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F-4    そういった態度,すっごく頭にきますね。そういう政治家,ぼくは許せないな。 それで,人文をスクラップした後,新しい学科を作るつもりなんですか?  次へ

ポーカス博士

例えば南大沢の都市環境学部には「観光・ツーリズム」コースが新設されるらしい。 東京都の赤字解消ためには,学問をやって世界的に貢献する よりも「観光・ツーリズム」の研究をやる方が価値があると考えているんじゃないかな。 その他にも,日野キャンパスには,東京都立科学技術大学を改め, システムデザイン学部を置き,「デザイ ンメディア」コース(仮称)を新設すると言っておる。 もっとも,平成17年度開講には間に合わないだろうが。 C-7で言ったように, 「日野キャンパス」が華やかな専門分野をやるようになっているのが特徴だな。 「ヒューマンメカトロニクスシステムコース」,「情報通信システムコース」, 「航空宇宙システムコース」,「経営システムデザインコース」というのが 日野キャンパスのシステムデザイン学部の内容じゃ。どうだ, 南大沢キャンパスの「都市〜」,「教養〜」というネーミングに比べてなんかかっこいいだろ? 日野をかっこよくして南大沢をかっこ悪くするというのは, 意図的に行われているような気がしてきた。南大沢は,教養部みたいな地位にしてしまえ, という「逆転の発想」を感じる。
この表の数字を見てどう思うかな? 今の都立大学の教員数414名が327名に減らされ87名減少,ただし新大学の教員 定数の中には一部,東京科学技術大学などの他の都立の大学から南大沢キャンパ スに移ってくる予定の教員数も含むので実際はもっと多くの教員が削減されてい るはず)るが,東京科学技術大学は56名から60名へと4名増加する (ただしこの中には南大沢キャンパスに移る教員数を考慮していないので実際は もっと教員数は増えるはず)。 保健科学大学はほぼ変わらずの状態で,都立短大の教員は大部分が基礎教育センターやエクステ ンション・センターへ移るようじゃ。 徹底的にリストラされているのは都立大学で, 新しいコースが重点的に割り当てられているのは, 日野キャンパスだという構図かよくわかるじゃろう。

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