都立大の危機 --- やさしいFAQ

B.  今の都立大生の卒業と学習権に関する質問


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B-1   大学って入学したら,その時の条件で卒業するまで身分が保障されるん じゃあないんですか? 次へ

ポーカス博士

普通は,学生の身分は,入学してきた時の条件は引き継がれて卒業ま でできるようにするもんじゃ。10月1日に総長の呼びかけが出ているのを 知っているか? その中で,こんなことを言っておる。


  既に本学の学生・院生である皆さんについては, 新大学設立後も卒業するまで,現行大学のカリキュラムにそった授業科目が当然 に保障されます。 このことは,設置者である東京都が都議会等で公式に表明しています。

問題は,この文章の中の「設置者である東京都」が誰で,いつ,どのように言っ たかという点。これは9月29日の東京都の文教委員会質疑で,福士敬子委員の質 問に対して東京都大学管理本 部の大村参事がこのように答えたのに基づいて いる。 では,具体的にどうやって現行大学のカリキュラムを提供するのか? 人文の文学系のように消滅してしまう専攻の教員が, 別組織に送られてしまい,これまでのような研究教育環境を奪われてしまえば, 今と同じカリキュラムを維持することはできないのは明らかだな。 今の新しい大学構想では,都立大学の学生が教員免許状を取得することができなくなったり, 困難になる専攻があるのを東京都側はどうやって責任をとるのか。
総長を初めとして人文学部や文学科などでは,公開質問状を送っているが返事が ない。11月13日の文教委員会では以下のような議論があった。


曽根委員(共産) 都立大は半世紀かかってここまでになった。これが知事とそのまわりの数人の人により壊される。新大学が今の知的財 産にふさわしいものとなるのか?レールを敷き直して、総長をはじめとして参加させた論議が必要。この前、科技大を見学した。大変立派 であり本当に統合が必要なのか疑問をもった。
山口委員(生活者ネット) こうした大きな転換が非民主的になされている。学生などの声明、質問に回答しているのか?
改革推進担当参事 所属の大学を通じて周知してほしいといっている。大学が周知していないのだ。
山口委員(生活者ネット) 管理本部が答えるべきだ。書面回答はしていないのか?
改革推進担当参事 個別に回答はしていない。大学に通知しているものもある。

このように管理本部は個別に質問状に答える意図がないことが都議会文教委員会 ではっきりしている。そのかわりに 都立の大学に在籍する皆様・平成16年度に入学する皆様へ というページを設けて,これまで大学へ送りつけてきた資料をpdfファイル で公表している。今度は,ここで発表されている文書に対しての質問を直接, 大学管理本部にするしかなさそうだな。

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B-2  ぼく,去年,大学の係りの人から,卒業するまで はちゃんと東京都立大学の学生として身分は保障されると聞かされた気がするんです。 あれってどうなっちゃったんですか? 次へ

ポーカス博士

2003年7月までは,そのように話が進んでいたんじゃ。当然のことだがな。 2003年8月以降は,わからん。一説には,都立大の学生も,「新大学」の学生と して組み込んでしまうという考えもあるらしい。 都立大の学生として今までと同じように勉強できるか,と問われると非常に心もとない。 なにしろ,新しい大学では所属もカリキュラムも違う教員や学生ができてしまうのだから, その中で今までと同じカリキュラムをどうやって維持できるか,その点に関して は, 11月18日更新の管理本部のホームページ を見ても結局よくわからない。分かることは,2010年までしか都立大学部生を 認めないということだから,本来A類学生は最高年限8年間在籍できるはずじゃが, 2003年入学者は7年間,2004年入学者は6年間しか都立大学には在籍できない。 さらに,急に病気になったり,留学をするなどの事情で休学する権利も 学生には3年間保障されているから,2003年入学のA類学生は, 2013年度まで(2003+(4×2)+3-1)の11年間,同年入学のB類学生は2015年度まで (2003+(5×2)+3-1)で13年間大学に留まる権利があるはずだ。 2004年にはA類の学生しか入学してこないが, 2014年まで(2004+(4×2)+3-1)本来だったら大学に留まれる。
 その後は「新大学」が引きつぐようにすると大学管理本部は言っているが, 重要なのは8年間+3年間(B類の場合10年間+3年間) いることができるという学生の権利が侵害される可能性がある ことじゃ。学則が許容する期間内でどれだけ大学にとどまるかを選 択するのは学生の権利でだからな。確か,「新大学」も 《修学年数を弾力的に設計》することを目指しているはずだが, 都立の4大学は切り捨てるというのはおかしなことだ。

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B-3  学部とか学科とかは,変わらずに残るんですよね?  次へ

ポーカス博士

いや,学部学科構成は,まったく変わってしまう。たとえば南大沢キャンパスは, 「都市教養学部」(定員900名)と「都市環境学部」(定員200名)いう名前の2つ の学部になる予定だ。そして,科学技術大学(日野キャンパス)は,「システム デザイン学部」(ヒューマンメカトロニクスシステム,情報通信システム工学, 航空宇宙システム工学,経営システムデザイン,合計定員210名), 保健科学大学(荒川キャンパス)は,「健康福祉学部」(看護学科,理学療法学 科,作業療法学科,放射線学科,合計定員200名)となる。 一番決定的に変わるのは,現都立大学の学部構成と人文学部の内部構成だ。 そして日野キャンパスの学生も,荒川キャンパスの学生も1年の教養の単位は, 南大沢で取得することになるそうじゃ。


都市教養学部(定員900名)
  都市政策コース(都市教養コースだったものが,河合塾案で提案された名前 に変更されたC-8, C-9)(定員不明)
  人文・社会系(定員200名)--- 社会学コース,心理・教育学コース,国際文化コース
  法学系(定員200名)--- 法律学コース,政治学コース
  経営学系(定員240名)--- 経営学コース(経済学コースは,経済学のCOEグループ が意思確認書提出を拒んだため,2005年4月からの「首大」では含まれない ことになった。I-9
  理工学系(定員260名)---  数理科学コース(40),物理学コース(45),化学コース(45),
    生命科学コース(50),電気電子工学コース(40),機械工学コース(40)
都市環境学部(定員200名)
  地理環境コース(30),都市基盤環境コース(50),建築都市コース(60),材料化学コース(60)


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B-4  うーん,ずいぶん変わってしまうんだな。 でも今の都立大学のカリキュラムは残るんですよね? 次へ

ポーカス博士

2003年10月1日の学生に向けた総長声明や東京都側の説明に従えば,


  既に本学の学生・院生である皆さんについては,新大学設立後も卒業するまで, 現行大学のカリキュラムにそった授業科目が当然に保障されます。このことは,設 置者である東京都が都議会等で公式に表明しています。


から問題ないと言いたいところだが,どの程度保障されるのかが問題 じゃ。たとえカリキュラムが残っても, 文学系5専攻の学部授業は当然このままでいけば激減する。 教員はたぶん「新しい大学」のどこかにいるから,そこにいって指導を受けることになるが, これまでの研究環境はおそらくなくなっているじゃろうから, 研究・教育環境は確実に悪化する。 理学研究科の身体運動科学専攻のように,「新しい大学」 の構成案に入っていないところも,研究・教育環境が保障されない可能性は大きい。 それに,あまり大きな声で言いたくないことじゃが, 優秀な研究者・教育者の中の何パーセントかは他の大学や研究施設に移って行く だろう。 日夜最先端の研究をしているような学者にとっては, 今回の廃校騒ぎが本当に大きな負担となっている。 2003年11月13日の文教委員会での議論の中には,こんなのもある。


改革推進担当参事 研究者は都立大を評価しているかもしれない。しかし就 職が不安という声がある。大学の使命は研究者養成だけではない。社会に出る人 材(学部、修士)が重要だ。

大学管理本部は,今回の「新構想」を発表する1つの理由に, 都立大の学生,都立大人文学部の学生の就職率の低さを理由に挙げてい る。しかし,それは2つの点で非常におかしい。
(1) 都立大は大学院進学率の高い大学であることを無視していること, (2) 都立大の就職担当の職員数が全学で2人しかいないという異常事態を 無視していること(大学改革の話が浮上してから3名いた就職担当事務員 を2名に削減している)。(2)の点に関しては,2004年3月18日の都議会文教委員 会で曽根議員が明らかにした。


〇曽根委員   もう一つ、先ほどもありましたが、就職の問題についても、実は三年前、私、 文教委員になるちょっと前に、決算委員会で、就職支援の充実をということで、 都立大学の決算のときに質問したことがあります。 そのとき、当時、二村次長でしたが、お答えの中で、就職の体制充実の努力 をしているというお話がありました。現在、都立大学の事務職員が何名いて、 そのうち就職専任の職員数は何人でしょうか。
〇大村参事 現在、都立大学の事務局の職員につきましては、技能系、技術系 も含めまして一般職員百二十五名、事務職員については百九名でございます。  就職の関係でございますけれども、都立大学では、学生課長のもと、専任の 担当係長と係員一名を置いて対応してございます。
 なお、ほかの三大学、科技大、保健科学大学、短大につきましては、一つの 係の分掌事務の一つとして、係単位で対応をしてございます。
〇曽根委員 数千名の学生がいる大学で、事務職ももともと少ないんですけれ ども、中で就職支援の仕事を専任に持っている人は、係長とあと職員一名、二 人しかいないんですよ。しかもこれは、私、読み返してみてびっくりしたんで すが、私が前に質問したとき、二〇〇〇年度には、就職担当係長一名に二名を ふやしまして三名体制としたというふうに答えているんですよ。このときは、 既に大学改革の基本方針が出た直後だと思います。
 その夏の選挙の後に、私、文教委員になって、その年の秋に大学大綱が出た んですね。だから、このときに三名にふやしたのを、その後、大学改革の取り 組みの中で二名に減らしているわけです、都立大学は。そうですよね。あのと きの議事録で三名とはっきり答えているんです、次長。
 それで、就職が把握されていないとか、就職率が悪い責任をあたかも大学の 先生たちの責任のようにいっておいて、一万人近い学生がいる大学で二人しか 職員を置かないんですよ。どうやって統計とるんですか。大変じゃないですか。


曽根議員は,この後,他大学の就職担当事務職員の数を引き合いに出し, 比較しているが,都立大規模の大学で就職担当職員が2名しかいない というのは,極めて異常だ。つまり,「都立大は就職率が 悪いから,首大では就職率を向上させるように教育体制,就職支援体制を 作っていく」という議論の筋道は間違っている。一方で研究者養成大学としての 都立大を無視し,他方で都立大就職担当職員の削減をしておいて, 都立大の就職率が悪いもへちまもあったもんじゃない。
 もう1つ,2003年11月13日の文教委員会での改革推進担当参事の発言から 読み取れること,それは, 「首大」が優秀な研究者を抱えて研究し,後継の研究者を作るような研究者養成大学を 目指しているのではなく<東京という限られた>社会に出て実際に <東京都のために>役立つ人材を育てる ことに大学教育を位置づけようとしていることだ。 都立大学は,さっきも言ったように優秀な研究者養成大学としての 顔を持っているということを無視している。この部分の教育・研究上の資産 を引き継ぐ気はないらしい。従って,都立大のこれまでのカリキュラム構成 が首大で引き継がれるという可能性は, 今回の「首大構想」で大きくリストラされる専攻では極めて低い (リストラの対象にならない専攻は,表面的に専攻名が変わっても温存される だろうが...)。困ったもんじゃ。大学院に関しては, J-1で詳しく話そう。

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B-5  2004年2月9日の総長声明は,これまでの説明とどこ が違うのですか? 次へ

ポーカス博士

2003年8月1日の突然の知事の会見から, 都立大の学生・院生に向けて出された説明という点では3度目になる。 最初は,2003年10月1日の学生に対しての総長の説明。これは, 管理本部からこのように都立の4大学で説明せよ,というお達しを受けてのもの。 その後が,2003年10月31日に突然やってきた管理本部からの説明書き。 これは,同じく都立の4大学に対して送られてきて, いきなり掲示しろといわれた文書で, 総長はこの文書の一部分が不適当だと判断して, その部分を削除して掲示したために,後々問題になった。 そして今回の2004年2月9日の 「学生・院生の皆さんへ」 (注1) (pdfファイル) という学生への呼びかけじゃ。
 まず基本的確認事項として,「新大学」設置後も「東京都立大学は平成22年度 まで存続する」こと,「都立大に入学した学生は原則として都立大を卒業する」 という点。 次に都立大学における履修指導は, 平成22年度に都立大学が廃止されるまで,学生がちゃんと卒業できるように きめ細やかな履修指導をするけれども, 平成22年度までの卒業が困難な学生に関しては, 「新大学」に学籍を移して勉強を続けることになる,とした点。 これは, 「学生の在学期間の上限は,現行の大学の学則の規定によるものとする」 という説明と連動しているが, この当たり前の部分を,強引に学則を変えることで切り捨ててしまえ, というのがこれまでの10月31日の方針だったが,学生も教員も大反対したので, ようやく正常化された部分じゃ。
 これに伴い,卒業・修了は「新大学」になってしまうが,卒業証書や証明書等は, 現大学を卒業・修了したことを「新大学」の学長が証することになる。 学位の専攻分野の名前も変えない。つまり, 平成23年度以降も残ることになった都立大生は, 都立大がなくなった後も,都立大の授業を受け, 都立大生として卒業できることを制度上保障した形になった。 平成23年以降,都立大学生が残った場合は, 「新大学」の授業科目を旧大学の授業科目に 読み替えるか,一部の科目を開講するような措置を検討する。 これがあらましじゃが,その後に表と具体例がある。
平成16年度以前に入学した学生は,都立大卒業になる, という最初の例はいいとして,その後の部分を見て欲しい(分かりやすくするた めに,パラグラフごとに番号を付けた)。


(1)  平成16年度に都立大学の大学院修士課程に入学を予定している方が、 平成18年度に博士課程に進学するときは、新しい構成の大学院に進学することと なります。
(2)  また、平成16年度末に都立大学の学部を卒業見込み(現学部3年生)で平成17年 度に大学院進学を予定している学生は、新大学の大学院(現大学と同様の構成の 「暫定大学院」)に進学できますが、平成19年度に博士課程に進学するときは、 新しい構成の大学院に進学することとなります。
(3)  このため、一部教育課程の内容やキャンパスに変更が生じる場合があります。


(1)  2004年4月に都立大学の修士課程に入学したら, その後で博士課程に進学する時は,都立大学の博士課程には入れないということ。 これは,修士課程から博士課程への進学の際,一度そこで一貫性がとぎれる, という解釈じゃな(しかし正式には,どちらも博士課程と呼ばれ, 前期と後期というように位置づけられているので, このように切ることが一般的なのかどうか,疑問が残る)。
(2) 「平成16年度末に都立大学の学部を卒業見込み(現学部3年生)で 平成17年度に大学院進学を予定している」 というのは,現在の学部3年生が,来年度(平成16年度)一年間を4年生とし て過ごして,大学院を受験することになった場合,という意味じゃ。 つまり,2004年の秋,あるいは2005年の春に都立大の大学院の入試を受けるとす ると,その時の大学院は「『新大学』の暫定大学院」になる。 これはどういうことかというと,平成17年(2005年)4月からは, 大学院も実は形式上,「新大学」の大学院として,今の 都立大の大学院がそのままの形と内容で置かれる予定 (「首都大学東京暫定大学院」=「東京都立大学大学院」)だが,これは, もはや都立大学大学院ではないよ,という意味だ。 つまり,今の計画で行くと, 「新大学」の大学院の成立は1年遅れるが,初年度の大学院は, 都立大の大学院がそのまま残るのじゃな。そして, それが「新大学」の大学院として位置づけられる。 おかしい話じゃ。大学の設置審には, 形の上でも大学と大学院をペアで出さねばならないようで, 管理本部が考えた奇妙奇天烈な案じゃ。さてさて,「新大学」の大学院 として成立してしまう実質都立大学大学院が, その翌年に改組できるものかどうか,じっくりと様子を見てみたいものじゃ。
 おっと脱線してしまった。平成17年度に大学院修士課程に進学しようとすると, 中身は都立大で外見は「新大学」の大学院になっているが, その後で博士課程に入ろうとすると中身は「新大学」になっているよ, という不思議な話じゃ。 (3) は,都立大学から「新大学」へ入り直すということは, 教育内容の違いやキャンパスの違いを伴う可能性があるという補足だ。 さらっと補足されているが, (2) の補足なのになぜパラグラフが別になっているか, というと,この部分は保障されていないというメッセージだと思う。 2004年2月3日に発表された「河合塾てこ入れ案」だと,人文系の場合, 文学5専攻のみならず,哲学や歴史も定員を減らされ, 大学院との一貫教育が不可能な状況に追い込まれている。 「新大学」の大学院は,闇の中。今の「社会直結実利専門学校名ばかり」大学構想 では,学問をやる大学院が作られる可能性は低いというのが, わしの予想じゃ。

注1:2004年2月5日の文書「現大学の学生に対する教育の取り扱いについて」は, 削除された。推測だが,2月5日の文書はほとんどが管理本部で作成されたもので, 部分的に総長の説明が入ったものだった。2月9日の呼びかけは, 管理本部作成の説明を具体的に分かりやすく書き直したものだろう。 質問や意見がある場合には,担当の教員や事務局に聞け,という最初の部分は, 2月5日文書と変わっていないが,裏をかえせば管理本部に問い合わせをするな, とも読める。

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B-6  平成22年(2010年)まで,都立大が残るというのは 分かりましたが,本当に僕たちの学習権は保障されるんですか?  次へ

ポーカス博士

それはな,管理本部の保障がただの*うわっつら*の制度保障だけなので, 学生の身分保障にはなったとしても,学習権の保障にはならないというのが わしの予想じゃ。上で述べたように,言葉では管理本部も総長も学習権を 保障しますと言っているが,もし,2005年4月から「首大」が開校 したらどうなるか想像がつくかな? 同一のキャンパス内に2つの大学 と2つの大学院とそれぞれの大学生・院生が同居することになるのだ。 教員も2つに別れる。「首大」の先生と「都立大」の先生のようにな。
(1) 大学の施設,設備,機材,研究資料は, おそらくすべて「首大」に所属するようになるだろう。 そうすると「都立大」の教員と学生・院生が,それによって大学の施設,設備, 機材,研究資料を使う上で何らかの不利益をこうむる事態が想像できる。
(2) 研究・教育予算もそうだ。「都立大」の研究・教育予算は,すでに一定に圧縮するような 方針が打ち出されているので (N-11), 減ることはあっても増えることはない。 研究資料の新規購入だけでなく継続購入ですら, 2004年度予算から大幅にカットされている。
(3) 教員流失がすでに始まっているが,その後任人事が凍結されているから, 学生・院生にとって学習に必要だった教員,魅力のある研究者が 他大学へ転出しても,後任の人事が行われない。その結果, 学生の学習環境が悪化し,院生は,指導教授を失うという事態が 発生している。

都議会で大学管理本部は,繰り返し「学生の学習権は保障する」という*うわっつら* の答弁を繰り返したが,2004年3月11日の史学科院生会の質問に対する 管理本部の回答(M-19)でも分かるように, 「保障はするが、どういう保障になるかはそのときの状況による」というような 回答しか得られていない。これからは,都立大生としても (1) 施設,設備,機材,研究資料の公平な利用を保障, (2) 研究・教育予算の確保を保障, (3) 人事の凍結を解除の3点を(最低限)要求していくことが必要になるだろう。 この3点の要求は,(「首大」ではなく)都立大学に残る教員達が当然要求していくべき 事柄なので,これからも都立大教員と学生・院生の共同した行動が必要にな るだろう。これまでの経過を振り返ると,管理本部は何を言っても話を聞いてく れない,回答してくれない,という予想があるが,だからといって黙っていては いけない。黙っていると,「何の文句も出なかった」と後で言われて, こちらが不利になるというやり方だからだ。 2004年に入学したばかりの都立大生も,これまでの経過を理解して, 一緒に行動してもらいたい。

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B-7   2004年4月26日に法学部生有志の公開質問状 がキャンパスに出ていましたが,大学「改革」と何か関係があるのですか?  次へ

ポーカス博士

大ありじゃ。公開質問状の中には,「首大」の話はまったく書いてなかったが, このような事態を引き起こしたのは,8・1事件後の非民主的な「大学改革構想」 が原因となっている。問題点としては次の3つが挙げてある:


<問題点>
a) 開講科目の減少 --- 平成16年度の開講予定科目は、 法学部全体で約100科目(集中含む)にとどまる。平成15年度の開講科目の約 130科目(集中含む)に比べ大幅な減少となっている。
b) 必修科目の開講 --- 現時点において、法学部の必修科目である 憲法一部が土曜日の1〜2限のみ、また法律学科必修の民法二部が水曜日の5限の みの開講となっている。このような措置は、学生に対して著しい履修上の困難を 生じさせる。加えて法律学科必修科目7科目のうち3科目が土曜日に集中しており、 土曜日が休みでない有職者の学生に多大な不利益を与えることになる。
c) 重要科目の開講 --- 現時点において民法四部(相続法、家族法) という法学部における重要科目の開講が予定されていない。



このような事態は,極めて異例だ。I-6 で述べたように,8・1事件後の「大学改革構想」に反対した法学部の教 授が,昨年の11月から12月にかけて4人辞職した。 また,法科大学院が2004年4月から無理やりスタートしたが, その影響も当然あるのではないかと思う。 まずさっきB-5で述べたように, 教育・研究費の削減が行われている。さらに,人事の凍結じゃ。 どれも,「新大学構想」に端を発しておる。それに加えて, 非常勤講師の手当ても大幅にカットされて いる。これでは,流失した教員の持っていた授業を補うことができないのは, 当然の帰結だ。
 さて,この法学部生有志の質問は,以下の6点だ。



<質問>
1.法学部の教員の補充は十分か、非常勤講師の手配は万全か
2.昼夜開講制にかなったカリキュラム編成になっているか
3.土曜日に必修科目を集中させるようなカリキュラムになっている理由は何か
4.追加開講の決まった科目(民法一部)に関しての周知徹底に努めているか
5.開講が必要とされる科目に関して集中講義、追加講義等の対応措置を講じる 意思はあるのか
6.法科大学院の開設がカリキュラムに影響を与えているか


これから,都立大学生・院生の学習環境を本当に大学として保障できるのかを よく見守っていかねばならない。管理本部や総長の「保障します」という一言を, ただ鵜呑みにするわけにはいかない。 「首大の学生の学習権の保障」しか考えないようでは困るのだ。 おかしいと思ったら積極的に教員に尋ねたり, このような公開質問状を出すことが必要になるだろう。 黙っていては,都立大の学生の学習権の保障は守れない状況になってい る。キャンパスも施設や設備も共有して2005年から「首大」がスタート したとすると,最初のうちは,当然「都立大」の学生の方が多い状況に なる。それにもかかわらず, 都立大生だけが不利益をこうむるような体制が作られては困る。 都立大の現法学部には,責任を持ってこの公開状に返事をして欲しい。 つまり,どのような原因で,このような状況にあるかを説明すべき だと思う(法学部長は,「新大学構想」が原因だとは言いたがらない かもしれないが,事実は事実なのだから,覆い隠すことなく現状を さらけ出して欲しい)。

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