都立大学総長声明(2003年10月7日)

略語：「総長声明」とただ呼ばれることが多い。

使用上の注意： 実際には，2003年10月7日以前も，それ以後も総長はさまざまな発言をしているが，この声明がこれまでのところ，おそらく一番の重みを持ったので，ただ「あの総長声明」と言えば，この時の声明を指す。

説明：
◯ 茂木俊彦 (もぎとしひこ)総長声明(2003年10 月7日)の原文は，「新大学設立準備体制の速やかな再構築を求める」というタイトルで，今でも東京都立大学のトップページ（http://www.metro-u.ac.jp/president_s.htm）に掲載されている。掲載にあたっては，一部の人々から好ましくないとの批判を受けたらしいが，断固として圧力をはねのけ，掲載に踏み切ったと言われている。
◯ この声明をきっかけに，都立大が危機的状況にあることが都立大生だけでなく，世間一般にも伝わることになった。しかし，大学管理本部は，この声明にそうとう腹を立て，以後，都立大に対する風当たりを強くした，という解釈もある。
◯ 大学管理本部は，都立大学からの「新大学構想」に対する反発をかわすために，＜都立大学の教員は改革に反対している＞というキャンペーンを繰り広げていたが，この総長声明には「大学改革の決意」が述べられており，むしろ自由闊達に議論をしようと呼びかけている。
「私は、言うまでもなく新大学の設立に反対なのではない。重要なことは、大学およびその構成員と都・管理本部の間で自由闊達に議論が行われ、合意形成へのていねいな努力が重ねられることであると考える。そうしてこそ豊かな英知を結集することが可能となり、学生・都民さらに広くは時代と社会の要請に応えうる新大学ができるのだと思う。総長としての私は、このような認識は本学の部局長をはじめ、すべての教員・職員にいたるまで基本的に共有されているものと確信している。」
（総長声明より）
◯ 石原都知事の「学長は古い人が多い」発言(D-2)は波紋を呼んだが，茂木総長は 1942年生まれで知事，「首大」理事長予定者，「首大」学長予定者より若く，教育心理学､障害児心理学が専門。
◯ この声明の背後には，当時話題となっていた同意書問題があり，このような書類を求める大学管理本部に対しての不信感がある。
◯ 総長声明では，同意書問題の他，「新大学構想」に対しての３つの問題点が特に主張されている。
(1) 大学院問題，(2) 基礎教育，教養教育の充実，(3) 教員免許や資格取得の問題。これらの問題は，結局「首大構想」において十分に議論されないまま， 2004年4月28日の申請へと進んでしまった。
関連説明のポインタ：
M-2　　教員の抗議声明
 M-3　　大学管理本部の反応
 M-5　　都立大は改革に反対していない
 M-6　　2003年10月15日の教員に対しての説明会
 P-1　　2003年12月3日の総長説明会
蛇足情報：
　都立大の学生にとって，「総長」という名前は，「学長」ではないところから，初めてその呼び名を知った時から軽いショックを受ける（「そうかあ，総長って言うんだ！」というショック）。東大と並んで「総長」という名前を使っている大学は，実際のところ少ない。だからこそ，都立大生にとって，ちょっと誇りに思えるところがある。
　その，遠い所にいる「非常に偉い人」と思っていた総長が，突然，声明を出し，新聞をにぎわしたところから，多くの学生が真剣に総長声明を読んだと言われている。また，総長はその後，「大学改革の現状」を，直接学生・院生に向かって説明する集会を2003年10月14日に企画し開催した。教養棟120番教室は学生であふれかえり，急遽別の部屋にスピーカーを持ち込み，音声だけで総長の説明を聞くことになった学生も多数にのぼった。
　大学管理本部は，この声明に怒りをあらわにしたが，後に都議会文教委員会では「自由闊達な議論を大学側と行っている」と主張。総長が声明の中で使った「自由闊達」という言葉を，管理本部があまりにも何回も繰り返すので，学生や院生は一時的にこの言葉に対して不信感を抱くようになった，という話もある（もちろん，現実には管理本部が大学側と自由闊達な意見交換などしていなかった）。
間連語： 関連語　＜大学改革，学問の自由(G-3)，自由闊達(N-6)＞
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