都立大の危機 --- やさしいFAQ

P.   総長の説明,知事の説明,評議会の説明,管理本部の説明


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P-1  12月3日の総長の説明会にぼくも行ってきたんです が,ポーカス先生は今回の説明会をどう評価しますか?  次へ

ポーカス博士

どう評価するかって? ホーカス君もすごい言葉を使うようになったな。 今回の説明会では総長と教養教育ワーキンググループ代表,大学院ワーキンググルー プの代表から説明があった。わしのいいかげんな見積もりでは 300〜400人の参加があったと思う。全体としては有意義な説明会じゃった。 今回の総長の説明の詳しい説明はここを見てもらうとして, 話の内容には3つのポイントがあった。まず第一に,10月31日の 管理本部 からの書類(学部生向けpdfファイル) (大学院生向けpdfファイル) を都立大ではごく一部しか発表しなかった,十分に説明しなかったという批判に対しての返事だ。 結論から言えば,管理本部は一部の文言を変えて説明してもよい, とのことだったので総長は文書の2個所を削除して掲示した。 一カ所は17年度の大学院についての部分に「便宜的かつ暫定的に」と 説明されていた「便宜的」を削除。これではあまりにもいい加減な印象を 受けると判断したそうだ。もう1つは学生の具体例の3つ目。「15年度以前に 入学した学生については、在学期間は最長8年ですが、存続期間を22年度末と したため、休学期間の繰り入れ方法を変更するよていです。」の部分は学則の改正がなければ出来ないと 判断したので削除したそうだ。 文書の冒頭に,大学管理本部から以下のような文書が届けられたと明示し, 都立大あるいは総長の意見ではないことが分かるようにして掲示したということなので, 管理本部の言うように「ほんの一部しか公表していない」というのは事実に反する, というわけじゃ。ごく一部を削除しただけ,というのが真相だった。
 第二に,任期制・年俸制に関して現在検討中で, 近々大学としての意見を発表するということ。現在まだ 十分な問題点の洗いだしができているわけではないが,単に教員の雇用 が脅かされるだけではなく,学生や院生の指導にも大きな影響を及ぼす と考えているそうじゃ。ちなみに,あの管理本部の発表の中の「従来通り のシステム」として旧制度と呼ばれていたものは旧制度ではなく, あれも新制度(旧制度と見せかけて,昇進なし,給与据え置きという 締め付けを導入しているからな)であるとの認識を示していた。
 第三に,2つのワーキンググループが 10月16日の時点で管理本部に提出していた提案が公表された。 話には聞いていたのじゃが,教養に関しては第一外国語8単位必修、 基礎ゼミ2単位必修、情報教育4単位必修,インターンシップを1〜2年生 に課すのはふさわしくないので削除,都市教養科目群は「1テーマ について3学系,12単位以上」などと具体的な提案がなされている。 全学的に GPAを導入するというのは, 管理本部の「単位バンク」案とは相容れない可能性がある。 大学院案に関しては10月16日に提出されたものからさらに変更が加えられ ているそうじゃが,あまり詳しい説明がなかった。 人文社会科学研究科の他にエクステンション・センターの上につながる 人間科学研究科が構想されているところが新しかったが, 管理本部案に沿って学部と大学院の同時開講をしないという 前提になっているのには不満だった。
会場でも意見として出ていた が,これからは積極的に大学の対案を公表して欲しい。そうしないと,饒舌な大学管理本部 に対して,都立大は何もしていないように世間から見られてしまう。 会場からは,「最低限,これだけは譲れない」という都立大の方針を公表すべき だとの意見があったが,わしもまったくその通りだと思う。総長には, もっと公に語って欲しい。 総長は今の時点では個人的な意見にすぎないとしながらも, 平成22年度で現都立大学を廃止するというのは,学生に対しての学習権を犯すも のだとの認識を示した。A類の学生ならば8年間+休学3年間は在学できる権利が あるのを一方的に22年度で切るのはおかしいからな。何らかの大学の意志表明が 行われるのをわしは期待している。
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P-2  学生や院生がこの頃大学管理本部へ行っていろいろ 意見を直接聞いているようですが,どうやら管理本部は 「都立大では総長と一部の教員が学生に対しての説明責任をおこたっている」と か言っているようですが,本当にそうなんですか?  次へ

ポーカス博士

もちろん管理本部の言い逃れに過ぎない。12月3日の総長の説明会でも明らかに なったが,12月2日に管理本部に行った院生が同じ説明を聞かされたそうじゃ。 「都立大では総長と一部の教員が学生に対しての説明責任をおこたっている」 というが,総長をはじめとして教員も分かる範囲で学生には説明をしている。 ようするに分からないことが多すぎるからよく分からない部分は説明できないと いうのが事実なのじゃ。12月2日に管理本部にいった院生によると,次のような 会話があったそうじゃ(説明会でのメモによるので会話の詳細に関しては不正 確)。

院生:「22年度までは都立大学生・院生の身分を保障してくれるというのはいったい 誰が保障してくれるのか?」
管理本部:「大学管理本部が保障します。」
院生:「管理本部が保障するのでは信用できません。」
管理本部:「なぜか?」
院生:「8月1日にそれまでとまったく違った案を出してきて,話を引っくり返したではないか。」
管理本部:...絶句...
院生:「二度と今言っていることを引っくり返さないと確約して下さい。」
管理本部:「私個人では何もできない。大学管理本部としてもそれはできない。」

そりゃあそうだ。 教学準備委員会でも,議事録を取らずに前回決まったことを平気で引っくり返す のだから,確約なんてできるわけがない。今大学管理本部で働いている お役人だって,6〜7月にあったように突然別の部署へ移動させられて しまうかもしれないからな。
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P-3   12月5日の朝日新聞に載った 管理本部が河合塾に「都市教養学部」の理念を外注するという話ですが, 本当に理念だけの外注なんですか?  次へ

ポーカス博士

実はな,理念を河合塾に外注する(C-8)にあたって 管理本部は「大学の先生に検討をお願いしたが,旧来のタコツボ型の発想しか出 てこなかった」と発言したようじゃ。これは 「教員は発想が古いと言っておきながら,一方では新大学構想の詳細設計をやらせる」と いう今まで通りの管理本部の作戦だ。すでに N-4で言ったように前々から管理本部は 新大学構想に関して教員が反対したり参加を拒否したら外部に委託するぞ,と言っておった。 ある種の脅しじゃ。都立大側で対案を作って持ち込んでも,自分達の構想に合わ ないような部分は,文句をつけて拒否する。そして最終手段として外注を常に匂 わせてきた。これは「気に入らない提案を作ってきたら外注するぞ」という抑止 力(deterrent power)として機能していたのだ。そして今回の報道じゃ。
朝日の記事を良く見ると,こんな部分がある。


河合塾に委託するのは「都市教養コース」「国際文化コース」の理念の補強。 「社会学コース」などの人文・社会系各コースの授業科目名を提案してもらった り、都市教養学部の設計、教養教育の英語、情報教育プログラムの設計なども 補足してもらったりする。

整理すると

(1) 理念の補強 --- 「都市教養コース」「国際文化コース」
(2) コースの授業科目名を提案 --- 「社会学コース」などの人文・社会系各コース
(3) 設計の補足 --- 都市教養学部,教養教育の英語,情報教育プログラム

(1)に関しては別に何が出てきても驚かないが,(2)で「人文・社会系各コースの授業科目名を提 案」というのは恐ろしい。要するにこれまで教員が時間をさいて新大学のカリキュ ラムや授業科目とその内容を書いてきたものをまたひっくりかえす可能性が出て きたということだ。河合塾お墨付きの科目名に変更するにあたって,内容も 書き直せ,という方向に進むことは目に見えている。 「都市教養学部,教養教育の英語,情報教育プログラムの設計の補足」というの も,本当に補足として出てくるかどうかが問題だ。「新大学の設計」は,設置者 としての東京都(大学管理本部)が責任を持って行うと言っていたから,まさか 河合塾の提案で設計の根本が変わってしまうことはないと思うが, 今頃になって「都市教養学部の設計を変えます」なんて言われたら, もう先へ進めなくなる。(それでいい,という声もあるが...) 「教養教育の英語,情報教育プログラムの設計」に関しては,管理本部でじっくり 検討する時間がないし,かといって都立大からの提案はのみたくない。 管理本部の思ったような設計図を河合塾が3000万円をもらって作れるかどうか, お手並み拝見というところだ。
特定の学部のコース内の授業名称を,外部組織がお金をもらって決めるというの は,人文学部長が言うように発想として信じがたいものだ。
例えば,レストランで「カレーライス」を作って,売ろうとしたら, そんな平凡な名前はダメだから「インド風激辛めし」にしろ, と言われるようなことが起こるかもしれんな。 お客さんがお店に入って来て,カレーライスを探しても見つからない。 一部のお客さんが興味本位で「インド風激辛めし」を注文してみて, カレーライスだったらがっかりするじゃろ。 ポイントはな,大学の科目名,学科名に戻って考えると, 本当に需要にあった科目を提供する必要があるということと, 奇抜な名前で興味本位の学生を集めてはならん,ということじゃ。
まったく誰がいった い授業をやるのか? その授業の名称を外部組織が決めるなんてことがあってい いのか?授業の名称が授業の内容にまでかかわってくるとしたら,教育に対 しての外部干渉にまで発展する。 そして何よりもまず教育 理念をたとえ一部にせよ外部にまかせるという事は,教育の責任放棄だ。 もうすでに「東京河合塾大学」という名称が一部で使われだしているが, 冗談として笑えない気もする。(そういえば,11月末には新大学の名称を知事が 決めて発表するはずだったが...)
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P-4   12月5日に知事の定例記者会見をネットで ストリーミング配信しているのを聞いたんですが, 関係ない話かも知れないんですが「紙爆弾」ってなんですか?  次へ

ポーカス博士

ああホーカス君も,新しいメディアにだいぶ慣れてきたようだな。そう,都知事 の定例記者会見というのが金曜日に開かれて実況中継されている。文書として 新聞などに取りあげられる部分はごくわずかじゃな。12月5日にも実は「紙爆弾」 が登場するこんな都立大に関するやりとりが あった。確かに「紙爆弾」という言葉が出てくるな。 これは大学管理本部に送られてくるファックスの山のことじゃ。 大学管理本部も知事もひた隠しに隠して,新大学構想に反対しているのは 都立大総長と一部の人文学部の先生達と主張し続けているが,これはまったく事実に反するの じゃ。毎日、山のような抗議のファックス(=紙爆弾)が送られてくるだけではない。 「メール爆弾」も相当な量になるらしい。都合の悪いことは言わない,隠せるこ とはあくまで隠すという姿勢を貫いているのが大学管理本部というところじゃ。 12月5日に都立大学史学OB会事務局が抗議声明を管理本部に持参した時に, 大学管理本部副参事及び係長の二名と2時間弱にわたる会談 をしたそうじゃ。そこでは,大学管理本部のこれまでのホームページでの 記載の誤りがあったこと,情報の取捨選択に恣意的な部分があったことを 認めて今後検討するとの返事を得たようじゃ。さて,ちゃんと訂正されるかな。 注意して見守っていかねばなるまい。
 おお,そうそう,知事の会見の内容か。あいかわらず頭の固い人だね。 都庁の塔にこもっている人は,東京都という境界を越えた発想力がないからな。 「学者=象牙の塔にこもっている」,「学者=発想力がない」, 「学者=古い」という言葉が毎回飛び出してくる。もちろん「〜多い」とか つけて断定はしないようにしておるが,まああんなことを繰り返すことしか できないんだな。これは,わしの憶測じゃが,政治家,特に権力意識を持った 政治家は一般的に「大学人」は嫌いなんじゃな。なぜかって? そりゃあ,本当の姿を見透かされてしまうのが怖いんじゃな。だから決まって 攻撃的になる。
 「学際,学部をまたいだインターメジャー」の発想力が学者にないって? ハッツハッツハッツ! わしは認知科学という新たな枠の中での研究に 言語研究を位置づけておるが,この「哲学,心理学,言語学,能科学, コンピュータサイエンスなど」の学際的 (interdisciplinary) 分野を知事さんは知っておるかな? まあ,きっと知るまいな。 それにな,学問というのは学際的に広がるだけがやり方ではない。 一つの学問を深く極めると,そこから突然大きな視野が開けてきて, いろいろな他の学問の置かれている位置が分かってくるのじゃ。 大物理学者が哲学や宗教に興味を持つことは知られているだろう。 逆に,人文系の学者が物理学や生物学に興味を広げるということもある。 それは,そう Mrs. Maple が小さな村の出来事をつぶさに知っていることが, その村以外の広い世界で起きる事件を説明するに足る知識になっている というようなものじゃな。おっと,よけいなことまで言ってしまった。
あっ,そうそう,代案はこれから少しずつ公開される予定じゃ。 そうすると管理本部との対立がはっきりしてくるが,さてどうなることやら...
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P-5   河合塾に外注するという管理本部の説明を読んで, ある学生が朝日新聞(12/7)に投書していましたね。なんか誤解していると思うん ですが?  次へ

ポーカス博士

「大学の理念を塾に委託とは」というタイトルで12月7日に「声」の欄に載ったものじゃな。 初めに読んだ時,どこか決定的に誤解していると思った。その部分じゃが,


...
5日の記事で、新都立大の理念を河合塾に依頼することを知り、考えさせられた。
受験生を相手にする商売する大手予備校に、大学までも左右されなければならな いのか。また、大学さえ作れない大学側に学生は何を求めるだろうか。受験生 が予備校が作り上げた大学に入るために予備校に通うなんて、何か本末転倒でむ なしい。
...

「また、大学さえ作れない大学側に学生は何を求めるだろうか。」という部分じゃ な。ここはきっと,こんな論理の流れになっている。

(A) 東京都大学管理本部は,新都立大の理念を河合塾に外注した。
(B) なぜなら、都立大学の教員は,新都立大学の理念を作ることができなかった からだ。
(C) 上の理由(B)の背後には,大学の教員が(1)その能力がなかった,(2) 何らか の理由でそれができなかった,からだ。
(D) 大学さえ作れない大学側(教員)というのは,ひどい。

一般の人が普通に読めば,(C)の部分で,その背後の理由として(1)「教員は無能 だ」を選択してしまうじゃろう。(2)の特殊事情をよく知っている人は,それに 従って解釈するから,よく投書してくれたと感激するかもしれんが,それは まったく一般的ではない解釈じゃ。 ちなみに,これを読むと,理念を外注する ことはしないと言っているが,本当のところ,文部科学省が12月中頃までに 出せといっている書類を1月中頃まで待ってもらっているが,「都市教養学部」 の理念とか「国際文化コース」の理念をうまく自分達の思っている方向づけで 書くことができず,このままでは時間切れになってしまうからと知事に泣きつい て資金を出してもらったということだろう。
 最近の管理本部からの書類に「国際文化コース」の理念らしきものが書いてあっ たが,「歴史,宗教,思想,言語,習慣,行動様式など人文学の知見を総合 した幅広い教育を行い,アジアを代表する世界都市東京で活用できる人材を 育成する」というのは,読んだ時に頭がくらついた。骨組みだけを取って この文を考えれば東京が活用する人材を作るということだ。了見が狭い な。しかもアジアを代表する世界都市東京なんていったらアジア諸国が 怒りだすかもしれん。 「代表する」には (a) 「ある集団のリーダーとなる」, (b)「リーダーとなるのにふさわしいほど大きい」 の2つの意味があるが,(a)の意味で解釈されたら国際問題となる。 自国中心主義,東京中心主義,アジア中心主義,どれを とっても「国際文化」というコース名とは合わない。50年後,100年後に 東京は衰退しているかもしれん。それでも,学問は残るのじゃ。一時(いっとき) の思いつきでない本当の学問は時代を越えて研究され続ける。まあ,この文章は 河合塾で書き換えることになるだろうが。
 これまでも繰り返し言っていることだが, 都市教養学部という学部構想を持ち出したのは,東京都の側であり, その理念を大学側に押しつけているのは東京都の側であり,それにも かかわらず提案者である東京都の側が理念を考えていなかったという ことだ。この投書の大学生が「大学側が自分達で構想した教育の理念を作れないのはなさけない」 と考えているとしたら,それは大きな誤解である。 個人的には,やはり総長声明が欲しいところじゃ。
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P-6   今度は大学管理本部が語学教育も外注するという記事が12月11日に あったみたいですがそんなことできるんですか?  次へ

ポーカス博士

確かH-2でアウトソーシングの話をし たのを覚えているかな。例えば慶応大学藤沢キャンパスでも英語の授業をアウト ソーシングで行っている。記憶に間違いがなければ,ベルリッツの先生が大学で 授業をしているらしい。さて, 毎日新聞によれば文部科学省も今回の管理本部の案を問題視しているようだ。


文部科学省は「講師を招くのはいいが、授業の内容や成績評価まで丸ごと外部に 委託すれば、大学の授業とはみなせない」(高等教育局大学課)と懸念しており、 教授らからは「語学教育の軽視」と批判の声も出ている。

今回の語学授業の外注案は,ただ外国語専門学校の講師に大学に来て授業を してもらうのではなく,学生をその外国語学校へ送ってしまおうという丸投げ 方式を提案している。文部科学省の言うように,これでは大学の授業ではない。 授業の内容も成績評価も外国語専門学校がやるのなら, 大学に来る必要はない。学生の立場に立って考えてみると,今日は1時間目が XX外国語学校で英語,2時間目が南大沢キャンパスで「憲法」,3時間目が YY外国語学校でフランス語,なんていう生活をせなければならない。 お役人は,学生の立場,学生の生活を本当の意味で考えていないと思う。
また
「これまでは、文学や言語学を専攻する教授らが語学を担当することが多かったが、 「文学者としては権威でも、必ずしも語学教育が上手とは限らない」
という部分があるが,大学としての外国語教育は, その具体的内容を議論することが必要だ。前に も言ったように,ただ外国語で挨拶や自己紹介,道を尋ねるというような 会話をやっても大学教育とは言えないだろう。文学や言語学を専門でやっている 教員の中には,確かに語学教育に熱心でない人もいるだろう。しかしな, 文学はその言語を使う上でいろいろな教養を含んでいる教材なのじゃ。 また言語学は言語の構造から特定の言語の特徴を考える上で重要な下敷だ。 ただの道具としての外国語の習得というのなら,語学学校に行けばいいのだ。 では,語学教育の具体的内容とは何か? 例えば,基礎的な会話力の他にも 読解力をつける,語彙力をアップする,外国語で自分の考えをまとめる 訓練をする,自己主張できるような表現を学んで議論が出来るようにする, などが考えられる。その背景には,さらにあらゆることに興味を持って 自分の知識として取り入れ,批判的に自分の考えを構築できるという 姿勢を身につけていなければならない。こういったことができるように なるためには,語学学校ではなく大学という環境の中でいろいろな学問や 先生と接することで身につけるというのが近道だとわしは思う。
 しかし,今回の新聞報道の中にあったように,「教授を多く雇うより人件費が安くつく」 というのが本音なのだろう。安くあげたい,具体的な教育内容を議論する気が ない,というのは教育をまったく考えていない証拠じゃ。
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P-7   2004年2月5日に都立大ホームページに発表された 評議会の見解ってなんで1月27日付けなんですか?  次へ

ポーカス博士

そのことはすでにXX-10で説明されている。 つまり,2003年10月7日の総長声明の時,評議会内部からも, 「なぜ管理本部に事前に知らせずに声明を発表したのか?」という意見が出てい た。今回はそのようなことがないように,あらかじめ、管理本部長, 教学準備委員会座長,理事長予定者にこの「見解と要請」を送付した。 さらに総長は,この内容に関しての話をしたいとそれぞれの人物に面会を申し込 んだと聞いておる。管理本部長は4大学の学長がそろわないと会わない, と答えて,総長との直接の話し合いをさけたようじゃ。教学準備委員会座長から は,返事をもらっていないらしい。理事長予定者とは, まだどうなるかわからないようじゃ。
でな,結局,都立大評議会としては,手順を守り,充分に議論して「見解と要請」 を出したにもかかわらず,3氏からは満足な返事はもらっていない。 そこでようやく,文書の公開に踏み切ったわけじゃな。 管理本部は,2月3日の教学準備委員会でも, あいかわらず強硬に自分達の作った(河合塾に助けてもらった)案を通そうとし ておる。 ちゃんとした協議をする,という前提・手順をまったく無視している。
 もう1つの理由は,評議員の中には, 大筋において「新大学構想」に賛成する人物がいるということじゃ。 その人物が誰かって? そりゃあ,新大学説明会でスピーチをしたり, 教学準備委員会検討会なんかで活躍している方々だな。
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P-8   そうか,ぼくには理解できないけど,「新大学構想」賛成派もいるんですね。 いったいどんな先生たちが「新大学構想」賛成派なんですか?  次へ

ポーカス博士

おそらく,3種類の人達がいる。 まず第1グループは,石原知事の言葉を借りれば,基本的に「保身」ができる人達だな。 自分達の研究が,ほぼこれまでと同じように続けられそうに思える場合, あえて反対なんかして目立たなければ,「保身」ができる。 第2グループは,「新大学構想」で, 今よりも明らかに研究・教育環境が改善されたり,自分の名誉につながると 思っている人達かな。さっきもなんとなく匂わしたつもりだが, 例えば, 今までのように大学一年生を相手にした教養の授業をやらなくてよくなったり, 自分の研究分野が明らかに注目され, より多くのスタッフをかかえて研究ができるとか, 新たなXX構想の立ち上げに関わっているとかいった人達だ。 さらに,第3のグループは,ひたすらじっとしていたい人達, ひたすら目立たないでいたいと思う人達じゃ。 多少の不都合,理不尽は我慢して,とにかく首にならないようにしたい, という発想だろう。第1グループの人達も第3グループの人達も,賛成派ではない。 でも,同意書を出せといわれれば出すし,意思確認書を出せと言われれば出すのだな。 第3グループの人達にとっては,「保身」は主な関心事ではない。このグループの中には, 実際に被害を受けるような人達も含まれている。 今の「新大学構想」には反対だ,でも,少しくらい被害を受けるのは仕方がない。 今の世の中,誰だって大変なんだ,という諦めの中に生きている人達。 あと数年で定年だから,それまでなんとか首がつながればいい, と思っている人達。わしは, 第2グループが今回の「どたばた劇」の陰の演出者だと思っているが, 第1グループや第3グループの人達も許せない。それはな, 自分が我慢すればよいという自己中心主義に陥っているからじゃ。
 大学という組織を支えるには,いろいろな人の積極的関与が必要だ。 大学の運営や学生の教育に関わっていくというのは, ただ給料をもらって働いてお金を儲けるというサラリーマンの世界とは違う。 「研究や教育の特殊性」と呼ばれるものの実態が背後にある。 午後5時になったら学生との話もやめてさっさと帰宅するとか, 会議をやめて帰るとか,普通できないものだ。 学会活動では,もちろん無償でいろいろな運営の仕事を引き受けたり, 論文の査読をしたりする。そんな大学社会の中で, 「新大学構想」に対して<受動的に賛同する先生達>は, 自分の利己主義が大学崩壊の間接的原因となっていることを自覚して欲しい。 理不尽なことに対しては,積極的に声を上げて欲しい。黙っていたら, この世の中,確実に悪い方に進むことを忘れないで欲しい。 わしとても,東京都知事と大学管理本部というのは,巨大な壁のように思える。 何を言っても聞いてくれない,どんなに抗議をしても分かってもらえない, 今風の言い方をすればバカの壁があるような気がする。 でも,最後まで諦めない。2月28日の日比谷公会堂には必ず行くぞ。 ポーカス君も友達を連れて一緒においで。
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P-9   2004年3月8日の「恫喝書」がでましたよね。それ に公式に反対する2004年3月9日に発表された評議会見解には 「新大学準備のための開かれた協議を開始するように求める」となっていました が,ちゃんとした協議は始まったんですか?  次へ

ポーカス博士

いや,<開かれた協議>が始まったとは到底思えない。ただし,3月29日の 教学準備委員会の模様を聞くと,多少の雪解け状態が見えてきているのも 事実じゃ。教学準備委員会は,N-4 で紹介したような管理本部側からの一方的な報告がある場として知られていた。 例えば「単位バンクを導入します。単位バンクはxxという制度です。 皆さん,yyという作業をzz日までにやって下さい」 で従来なら終わってしまっていた。委員として学部長が出ていても,個人の資格 であって学部を代表した意見を述べては困ると言われていた。
 3月29日の教学準備委員会は,前回第6回に続き,都立大学総長と短大学長 が出席している(だから「拡大教学準備委員会」とも呼ばれた)。これは, 1つの進歩だ。「単位バンク」の導入についての説明が再び行われた ようだが,質疑応答があり不明な部分が多いので継続審議扱いになったそうじゃ。 これも1つの進歩。これまでは,教学準備委員会で出た資料は,すでに決定事項 としてあっというまにホームページやプレス発表で語られていたからな。 議論が多少でもできる環境になったというのは喜ばしいことじゃが, 必ずしも評議会が求めているような<開かれた協議>ではない。
 その一例が「首大」の「基本構成及び学部等の名称決定」に関する協議じゃ。 管理本部では,設置審へ出す書類作りに忙しいのだが, やはり評判のよくない名称はなんとか変えたいと思っているようだ。 例えば,都市教養学部。そこで委員会では,「都市科学部」, 「総合教養学部」,「都市的教養学部」(笑わないように!) という3つの名称を新たに出してきて, 委員からの意見を聞いたそうじゃ。出席者の内,4人が「総合教養学部」 に賛成したが(4/7総長要望書に応じて修正6→4), 外部委員でめずらしく出席していたK委員は, 大まじめで(!!)「都市的教養学部」に賛同, それを見たH委員が慌てて(?)やはり 「都市教養学部」がよいと発言(ということは,この人が名付けの親か?)。 座長である西澤氏が「では,この議論は私に一任させて下さい」と提案した ようだが,その結果,なんと「都市教養学部」に決まったというのだ。 これだけの賛同者の差があって一任したら,普通だれでも 一番賛同者が多い案を採択して,少数意見の人を説得するというのが, 議長のやりかただろう。しかし,そうはならなかった。
 <開かれた協議体制>というのは,(1) 反対意見が言えて議論できる, (2) 議事録がちゃんと取られ,議論の経過が公表される, (3) 委員が各大学組織の代表者として扱われる,というのが最低限の 条件だとわしは思う。その意味で, 反対意見がとにかく議論の対象になったことは喜ばしい。 しかし,教学準備委員会は3月29日をもって終了だそうだ。 4月からの新年度には新たなメンバーによる委員会が 作られるようだ。新たな委員会で<開かれた協議体制>が構築される ことをわしは望むが,どうやらすでに YES-MEN を「首大」の 学部長に並べ,委員に任命することを内定しているらしい。 やれやれ。
 ちなみに,今回はいろいろな学部やセンターの名称も再検討され, その英語版も紹介された。「都市教養学部」は,わしが恐れていた 通り(C-5)Faculty of Urban Liberal Artsになっている。海外の学会へ 行って自己紹介する時に,これじゃあ恥ずかしくってやってられない (これだけで,「首大」には行きたくないという人文の教員が激増することは, 目に見えている)。おお,大切なことを忘れておった,「首都大学 東京」の英語版は,Tokyo Metropolitan University だそうだ。はっはっは! 英語では,東京都立大学と名称が変わらないという 裏技だ。表と裏が違うというのは,管理本部の得意技じゃった。

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P-10   2004年3月29日の「総長の呼びかけ」を読んだの ですが,これでようやく都立大と大学管理本部の対立が解けたのですか?  次へ

ポーカス博士

部分的にはな。さっきP-9で言ったように, 管理本部での教学準備委員会で話し合いの姿勢が多少できてきたと言える。 しかし,時を移さずに出た組合の声明(pdf) にもあるように,まだ多くの問題を抱えている。

(1) 協議体制の具現化の問題。
(2) 単位バンクの修正問題。
(3) 大学院部局化問題。
(4) 学生・院生や都民の声の反映の問題。
(5) 意思確認書問題。

(1)に関しては,P-9で言ったように, これからいかに協議体制を確立していくか,という問題で予断を許さない。 新たな委員会が成立した時に,教学準備委員会と同じような経過・結果に ならないように配慮して欲しい。(2) 単位バンク問題は,「知事の公約だから 絶対にはずせない」というようなスタンスではなく,制度上無理なことは きちんと認識して切り捨て,教授会の意見の反映されたシステムを再構築 する必要があるだろう。そして(3)の大学院部局化問題は, 「首大」が都立4大学の知的資産を引き継げるか否かに関連した大きな問題だ。 今の「首大構想」は,何度も言っているように実学中心主義に貫かれて いるが,大学院部局化というのは, 基礎研究を含む研究大学としての位置づけを含むもので, この構想がきちんと作られれば,人文系の教育・研究体制がかろうじて 救われる可能性がある。(4) の学生・院生や都民の声の反映は重要な視点で, これまで多くの声明が出ているが東京都の大学なのだから,東京都という 行政側が自分勝手に作るのではなく学生や都民の声を本当に聞いて作るべきだ。 大枠が作られようとしている現在,緊急のアンケート調査をすることが望ましい のだが,そこまで管理本部がやる気になるかどうか。最後に,(5)の意思確認書 問題だが,「意思確認書を出さなかったから切る」という一方的な決定を してはならない。特に,経済のCOEグループを見捨ててはならない。 COEグループは,都立大として誇れる研究グループであり,これからも大学とし て最大限の援助をして行くべきだ。COEグループを切り捨てることは, 日本全国に対して「うちの大学は世界レベルの研究から手を引きます」 と宣言するようなものじゃ。それほどの象徴的意味を持っていることを 再認識して欲しい。
 残念ながら2004年4月7日の読売新聞などの報道によると,管理本部は 経済のCOE抜きで「首大」構想をまとめて設置審議会に提出してしまった ようじゃ。まったくもって...
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P-11   2004年4月2日に「総長の意見と要望」が出たそうですが, どのような趣旨の文書なんですか?  次へ

ポーカス博士

4月2日付の この要望書は,教学準備委員会座長 西澤潤一氏と 大学管理本部長 山口一久氏に宛たものだ。 「第7回教学準備委員会(2004年3月29日)の審議等に関連した意見と要望」 というタイトルが示すように,この日の教学準備委員会に出席した総長の 意見と要望をまとめたもので,管理本部との和解を示唆した 2004年3月29日の 「総長の呼びかけ」文書を補う形になっている。 全体は5つのポイントからなる。


(1) 新たな教学関係の委員会を作るに当たっての要望:
 (i) 都立大総長および短大学長を委員に加える,
 (ii) 現大学の長たる4大学の総長・学長に委員を推薦する機会を与える,
 (iii) 委員会の開催に当たっては議題等および資料の事前送付を 行い,また事後には議事録(議事要録)を作成し,その確認に日程もとることを 求める。
(2) 設置申請の事前協議の問題
 4月末の設置申請に当たっては事前にその全資料が現大学に示され,その内容 をめぐって協議がなされるべき。
(3) 「都市教養学部」の名称問題
 最終的には座長一任となったが,少数意見であった「都市教養学部」が採用さ れたことについて,合理的理由の説明を求める。
(4) 単位バンクについて
 継続して審議となった単位バンクは,基本枠組みに関してだけでも現大学との 間で協議をさらに行うべき。
(5) 学部の教育組織編成について
 各学部に複数の学科・専攻を設置すべき。


すでにP-10で(1),(3),(4)については触れてい るので,ここでは(2)と(5)について説明しておこう。  4月末の設置申請に当たっては事前にその全資料が現大学に示され,その内容 をめぐって協議がなされるべきだというのは,これまでも話題になってきた。 教学準備委員会でもこの点が指摘されたが,大学管理本部は否定的な発言を しているようだ(理由:あまりにも文書の量が多すぎるから)。しかし, どのような書類を設置審議委員会に出すのか, 本当にどのような案が最終案として提出されるのかを見なければ安心できない。 管理本部としては意思確認書や就任承認書を求めるような形で教員に 参加を迫ってくるが,その「首大の最終案」が分からないのでは教員は不安でならない。 各学部に複数の学科・専攻を設置すべきだとする(5)の点に関しては, これまであまり表だっては議論されてこなかった。この総長要望書に書いてある 通り,現在の案では<学部のおおぐくりをする>との方針ばかりが強調されてい て,学部の下にいきなり「〜系」という正体不明の区分が置かれ,その下に コース名が並んでいる(学部の下に学科が1つという形を強硬に主張する外部委員が いるという噂だ)。 これは (1) 学生の帰属意識を喪失させる, (2) 系統的な学習プログラムが保障できない,(3) 特定の分野で入試に対応でき ないという弊害がある。この不都合は英語にしてみるとよく分かる。
 仮に,生命科学生態学を専門に勉強している学生のことを考えてみよう。

大学名 首都大学東京 Tokyo Metropolitan University(←東京都立大学)
学部 都市教養学部 Faculty of Urban Liberal Arts
学科 都市教養学科 Department of Urban Liberal Arts
コース 生命科学コース Life Science

となった。理工学系というまとまりは,正式名称の中でどのように 位置づけられるのか分からない。 実際に理工学系の中には, 数理科学,物理学,化学,生命科学,電気電子工学,機械工学がある のだが,このまとまりが表面に出てこないのだ。そして,「学科は?」 (What department?) と聞かれても空虚に学部名と同じ,学部名と同じ あの恥ずかしい名称Department of Urban Liberal Arts(都市教養学科)を繰り返 すしかない。 「都市教養学部都市教養学科生命科学コース」というようになって, まさに管理本部が描いていた構図,すなわち,すべてのコースが 「都市教養」というえたいの知れない概念の下に位置づけられる。
健康福祉学部だけは,まともな学科構成がある( 看護学科,理学療法学科,作業療法学科,放射線学科) のだが,都市教養学部だけが 上で見たように<大ぐくり>した弊害で専攻の位置づけが不明になる。 これははっきりいって「百害あって一利なし」の状況だ。 どうしたら解決できるかって? それは簡単だ。上の例なら, 都市教養学部を「理学部」にして,「都市教養学科」を 「生命科学科」にすればいいだけだ(ようするに「都市教養学部」と「都市教養学科」をな くすのだ)。生命科学の中にも専門性が あるので,それをコース名にすればよい。 そうすれば,例えば「理学部生命科学科生態学コース」 のようにまともな構成になる。設置審に出た学部構成と,この この学部学科区分を並べてみれば, その分かりやすさは一目瞭然だ。 常識ある設置審のメンバーが文句をつけないなんて,考えられない。

  首大 従来の区分
学部 都市教養学部 理学部
学科 都市教養学科 生命科学科
コース 生命科学コース 生態学コース


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P-12   2004年4月9日に山口大学管理本部長から教職員宛の文書が届いたそう ですがどんな内容なのですか?
(「4大学総長・学長懇談会のまとめ」編) 次へ

ポーカス博士

4月9日に大学のメールボックスに配布されて,さっそく大問題になりつつある。 合計7ページの文書だが,最初の1ページを読むと,随分管理本部の文書も 穏当になったな,と思ってしまう。が,実は2ページ目からすでに今までと変わら ない一方的な判断の押しつけと未決定事項を決定事項として扱う姿勢に 溢れていることが分かる。まず第1ページ目。 ここでは4月7日に文部科学省に事前相談資料を提出したことが述べられており, 「この間の経緯を理解できるように主な事項をまとめた」となっている。 問題は第2〜5ページの管理本部長の まとめの部分だ。
 最初に指摘しなければならないのは, 3月23日の4大学総長・学長懇談の概要に, 意見の一致を見たとして挙げれられている部分が「3/30総長メモ」には ほとんど存在しないという点だ。3・30総長メモと 今回の4・9山口文書を比較のために以下に 再録する。


3/29総長声明(別称「3・30(配布)総長メモ」)
全学の教員のみなさんへ
2004年3月29日拡大教学準備委員会とその評価について


標記の件について、その主な内容を報告し、総長としての評価をお伝えします。

1.3月23日、総長の呼びかけで、総長・学長、大学管理本部長、理事長予定 者の懇談会が開催された。
(ア)そこでは、2005年(平成17年)4月、新大学を開設すべく、大学の 代表たる総長・学長、管理本部長、学長予定者、理事長予定者による十分な協議 を行いつつ準備をすすめることが確認された。
(イ)経済学部の経済政策専攻(COEグループ)も新大学に参加する方向をと るよう働きかけを行うこととなった。

2.3月29日、第7回教学準備委員会において、おおむね合意した内容ないし 方向性のうち、重要と考えられるのは、以下のとおりである。
(ア)上記1の(ア)をあらためて確認した。
(イ)新大学では教育と研究の一体となった総合大学とする方向で議論が行われ た。より具体的には、大学院部局化の方向をとり、基礎研究も位置づけるなどで ある。
(ウ)学部等の名称について、これまでの仮称とは別のものを採用する可能性に ついて議論した。また、単位バンク等については継続して協議することとなった。

3.昨年8月1日以降の経過を念頭におき、3月23日の懇談会および3月29 日の教学準備委員会の内容を評価すると、総長としては、そこに重要な前進があっ たと考える。

4/8管理本部長のまとめ(別名「4・9(配布)山口文書」)P.2
1 四大学総長・学長懇談概要(平成16年3月23目開催)

(1) 現時点で意思確認書の提出のない経済学グループを含め、多くの人が新大学に 参加してほしいという西澤学長予定者の意向に出席者一同が賛同した。

(2) 茂木総長から、これまでも17年度新大学開設に向け努力してきたが、引き続き 経済学グループの説得に最大限努力する旨発言があった。発言を受けて三大学学 長も支援する旨快諾した。

(3) 今後とも、何か重要なことがあったときに、このようなそれぞれ学長が率直に 意見をいう機会があればよいということを確認するとともに、以下の点について 意見が一致した。

・経済学グループの主張する定数間題では妥脇しないこと。
・総長推薦の経済学の窓口担当教員を変更すること。
・新大学への参加意思を示した人たちは、新大学の基本的な枠粗みを了解したうえで建設的 に新大学の実現に取り組むことを表明したのであり、文部科学省への申請段階で反対運動を 展開するということは許されない。
 詳細設計で意見を戦わすことはあっても、新大学に向け建設的に取り組むこと。
・教学準備委員会を決定機関として、新大学の開学準備を進めていくこと。
・過去のことは問わないが、法科大学院のようなことは二度と起こさない。
今後も、この教訓を重く受け止める必要があり、このようなことを二度と起こさないことは我々 の義務であること。

4・9山口文書の(3)に「以下の点について意見が一致した」という箇条書きの部 分があり,この部分が問題だ。1つ1つ見ていこう。

・経済学グループの主張する定数間題では妥脇しないこと。
いわゆるCOEグループの問題だが,8・1構想でそもそも16名の COE事業推進者のうち13名を経済学コースに割り当て,3名を過剰人員 (略して過員(かいん))としてしまったことに端を発する。 ここでの管理本部長のまとめは,8・1構想で示された定員は絶対に変更しないぞ という姿勢じゃ。そもそもCOE事業推進者の人員全員を新大学の定員として受け 入れないなんて姿勢が信じられない暴挙だな。日本の研究拠点として文部科学省 に位置づけられたのに,そのメンバーの一部を定員から外すなんてことが あっていいはずがない。 最初に決めたリストラの数字は死守する, というのがおそらく管理本部のやり方で,どんな研究・教育上の理由があっても 変更しないつもりなのだろう(後の大学院問題にもこの姿勢が登場する)。

・総長推薦の経済学の窓口担当教員を変更すること。
これは一体何を言っているのかというと,文字通り解釈すれば <総長が推薦した経済学教員がいて、その人は窓口となって外と交渉して いたのだが、その経済学の教員ではない別の人を今度は窓口にする> という話。具体的な名前が出てこないのと、総長の意見が反映されているのか どうかは不明だ。 3・30総長メモでは,「経済学部の経済政策専攻(COEグループ)も新大学に参加する方向をと るよう働きかけを行う」となっているだけなのだが。

・新大学への参加意思を示した人たちは、新大学の基本的な枠粗みを了解したうえで建設的 に新大学の実現に取り組むことを表明したのであり、文部科学省への申請段階で反対運動を 展開するということは許されない。
これは,おそらく管理本部長の本音で,3月23日の懇談会の話題になって 意見の一致をみたとは到底考えられない。分かりやすい言葉で言い換えれば, 「意思確認書を出したら,就任承諾書を出さないなんてことは許さないぞ」 ということで,就任承諾書が4月末以降,もし多量に提出されないような事態になれば, 管理本部がふっとぶことを本部長が考え, この機を捉えて警告したのだろう。

詳細設計で意見を戦わすことはあっても、新大学に向け建設的に取り組むこ と。
この部分は,総長が「十分な協議を行うこと」とした部分に対応するように見え る。しかし,この「建設的に取り組む」という部分がちょっと怪しい。 反対意見を出した結果,その意見は建設的でないから却下する, ということがあることを公に認めよ,とも読める。

・教学準備委員会を決定機関として、新大学の開学準備を進めていくこと。
3月29日をもって教学準備委員会は終了してしまったが,最後の2回を除けば, 総長は茅の外に置かれ,出席者は個人の資格で出席し,議事録は取られず議題だ けが公表され,議論されないうちに様々な事柄が決定されて一方的に発表されて きた。これが「首大」の開学準備を進める決定機関であることを3月23日の懇談 会で改めた,ということらしい。しかし,4・9山口文書の2〜5ページのまとめ を見ると,こんなことは決まってないはずだという事項がてんこ盛りだ (これを議事録というのなら,(案)と付記して,訂正を入れるべきだろう)

・過去のことは問わないが、法科大学院のようなことは二度と起こさない。 今後も、この教訓を重く受け止める必要があり、このようなことを二度と起こさないことは我々 の義務であること。
これも管理本部長の意思表明であろう。「過去のことは問わない」とまとめた ことにより,法科大学院問題は,へんてこりんな論理で責任追求を することはないということだ。この合意は覚えておこう。 2番目の文では,また「就任承諾書の提出で混乱が起きることを阻止したい」 というのも管理本部長の願いをまとめたものと解釈できる。もちろん, 懇談会出席者は,現都立4大学の混乱を静めたいとの意向は持っている はずだ。法科大学院の混乱はなぜ起きたのか? それは,あまりにも 一方的で強引な「8・1大学構想」の進め方に原因があった。 その一方的で強引な手法を管理本部が改めない限り, 都立4大学の混乱は沈静化するどころか,ますます大きな 流れとなって爆発する危険性があることを管理本部は覚えておく必要が あるだろう。 最後に,4・9総長緊急お知らせを引用しておこう。(1)と(2)が3月23日の懇談会に 関する部分で,3・30総長メモの内容が間違っていないこと, 「当日に出た意見を一部採録し」ているのみで, 「『一致』と表現できるような確認を、いちいち行ったわけで ない」ことを主張している。近日中に,総長からの新たな見解が 発表されるはずだ。


全学教員のみなさんへ(緊急)
2004年4月9日
総長
4月8日付の大学管理本部長山口一久氏による文書を受け取られたことと思います。 この一連の文書には、総長として了解できない部分が多く含まれていますが、配布、配 信だけは認めました。しかし、その内容には詳細なコメントを付すべき部分がたくさん 含まれています。とりあえず簡単に3 点のみ記しておきます。
(1) 3月23日の4 大学総長・学長懇談については、3 月30 日付けの総長メモ( 全 学教員に向けて送信) の通りであることを改めてお知らせします。
(2) 8日付け本部長文書の同懇談に係る「まとめ」は、当日に出た意見を一部採録し たものであり、「一致」と表現できるような確認を、いちいち行ったわけではあ りません。なお、総長が発言した内容については、その多くが掲載されていない ことも付け加えておきます。
(3) 第7 回教学準備委員会の「まとめ」に関しても、不正確・不適正な部分を多く含 んでいます。
なお、法人化及び人事制度に関する事項に関する記載は、3 月29 日の第2 回 経営準備室運営会議で扱われた内容ではありません。
今後、可及的速やかに事実の検証を行い、改めて報告します。


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P-13   2004年4月9日に山口大学管理本部長から教職員宛の文書が届いたそう ですがどんな内容なのですか?
(「第7回教学準備委員会」編) 次へ

ポーカス博士

4・9山口文書には,一見,第7回教学準備委員会の議事録の ように見える部分がある。しかし,4・9山口文書(P.2〜5) を読んですぐに気づくのは,これまでと変わらない一方的な管理本部の断定と 報告=決定事項という体質だ。項目別に見ていこう。

(1) 単位バンク検討部会報告について
単位バンクの組織案として学長直轄の独立組織が了承されたとなっている。 「他大学で取得した単位や大学外での経験をほとんど無制限に単位として認定す る制度」として,知事の掛け声のもと検討が加えられた単位バンク制度だが, ここにきてその制度が大化けしている。これに関しては,あらためて言及しなけ ればならないが,現在の組織案をとりあえず紹介しておこう。
「学位設計委員会」--- 社会のニーズを踏まえ、「新大学」の学位(≒コース) を設計する委員会
「科目登録委員会」--- 学生における有益性という点から,「新大学」の 授業科目を含む教育資源の評価基準を決めるとともに、具体的な評価を 行う。評価に満たない授業科目は,新大学の単位として認定されない。
「キャリアカウンセラー」--- 科目登録委員会の評価を受けた授業科目の中から 個々の学生のキャリア形成に必要な授業科目を選びだすことで, 学生のキャリア設計を支援する。
*問題点 --- (i) 教授会からコース(従来の学科)の教育設計を奪うことにな る,(ii) 「科目登録委員会」は学外だけでなく学内のすべての開講科目を審査する機関に なり,授業の厳しい管理体制が作られる。(このような組織が作られることが承 認されたとの報告はなかった。むしろ単位バンク自体が継続審査であるという認 識があったはず。)
学生の経済的負担,カリキュラムの系統性,JABEEとの関係はいずれも 今後継続して議論するという認識があったと聞いているが,この報告では, 他大学等の科目を履修する場合,学生が科目等履修生として自分で費用を支払う, カリキュラムの系統性は問題ない,JABEEと抵触するものではない, とすべて断定している。これら3つの点は,すべて難題なはずだ。

(2) 大学院WG設置報告について
4月下旬にワーキンググループが「座長たたき台案」をベースに構成案を 持ち寄るとなっているが,座長たたき台案とは,あの西澤学長予定者の 理念メモだとしたら,大変な 大学院ができてしまう。さらに,主要事項として分野をどのように切り分け るか,大学院部局化をしたときの担当教員が教員審査を受けることを 前提にしているが,大学院を担当しない教員の扱いをどうするかという 問題が生ずるとしている。<分野の切り分け>を今後どのようにしていく つもりなのか,分野別ワーキンググループが上意下達でない形で 作られるか否かが問題となりそうだ。人文学部では,すでに大学院構想を 部分的に作り上げて管理本部に示しているはずだが,果たして本当に その案が日の目を見るのかどうか,極めて不安だ。これまでも様々な対案を出し ては管理本部につぶされてきたからな(知事は何にも知らんじゃろうが)。

(3) 学部等名称について
英文の名称を含めて学部等名称が議論されたが,最終的に座長一任と なり,会議終了後に座長が決定したとあるが, P-9 で述べたように,理不尽な決定の仕方だった。

(4) 留学生サポート体制の強化
全学的な留学生のサポート体制を作るという案で, これはすでに4月5日更新情報として管理本部のホームページ に留 学生サポート体制の強化として載っている。不明な点は多々あるが(◯◯塾 とか),全学的に留学生をサポートするという趣旨は理解できる。 現都立4大学の交換留学制度が一切触れられていない点は非常に不安がある。

(5) 経済学コースの取扱について
経済学コースを置かない前提で本申請作業に入った話が記されているが, この部分に関しては,I-9  を参照して欲しい。

(6) 今後の進め方について
学長予定者から学部長予定者 の指名・報告があり,そのメンバーで準備を進めるそうだが, そもそも予定者が予定者を指名して報告するというナンセンス がそのまま通用するのだろうか? このメンバーでは,例えば人文学部では 何の意見も反映させることができなくなってしまう。 現大学の意見は,総長・学長を通じて必要に応じて反映する となっているが,このメンバーが不必要と見なせば,意見は反映されなく なってしまう。ここは総長や人文学部長も是非メンバーに加えてもらいたい ものだ。

(7) 都市政策コースについて
当初は「都市教養コース」だったものだが,河合塾てこ入れ案で浮上した 名前が「都市政策コース」だ。  都市政策コースの中核となる人材について、学長予定者から推薦のあった候補 者を4月上旬に教員専攻委員会を開催して審査する そうだが,都市政策コース担当の教員は公募していないはずだ。 学長予定者がいったい誰を候補として推薦し,どんなメンバーで教員専攻委員会 を開催するというのか,まったく不明だ。 ここでも予定者が候補者を推薦し,誰がどんな権限で集めたか分からない 教員専攻委員会のメンバーが審査するという図式が展開されている。
そもそも一旦は「死んだ」と言われた河合塾てこ入れ案が,一部は生き続けて 申請書類に載るということが,ますます本申請の中身に対しての疑惑を深めてい る。

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P-14   2004年4月9日に山口大学管理本部長から教職員宛の文書が届いたそう ですがどんな内容なのですか?
(「法人化及び人事制度に関する事項,教学に関して質問の多かった事項」編)  次へ

ポーカス博士

4・9総長緊急文書の最後にあったように*,「法人化及び人事制度に関す る事項」の部分は,第2回経営準備室運営会議(3/29)で扱われたことではないよ うだ。


4・9総長緊急文書
...
なお、法人化及び人事制度に関する事項に関する記載は、3 月29 日の第2回経営準備室運営会議で扱われた内容ではありません。


どうやら,組合と管理本部の交渉過程で話題にのぼったことを,つまみ食い的 に自分で思ったように管理本部長がまとめたものなのだろう。 都立大学・短期 大学組合のコメント(4/12, pdf)にも指摘されているように,ここに 記載されていることのほとんどは,まだ協議中のことであり,決定したことでは ない。これまでも管理本部のやり方として非難されてきた同じ手法じゃな。 外から見て議論の場に見える会議を設定し,資料を用意し議題を並べ, 会議終了後には,自分達の思ったように結論が出たとしてその結論を 公表してしまう。そんな中でもひときわ異彩を放っているのは, (1) 任期制の部分,(2) 16年度試行の研究費配分,(3) 教学に関して質問等 の多かった事項の部分だ。
 (1) 「任期制を公立大学法人の全教員に導入するのは違法ではない」 と宣言している。 その根拠は,公立大学法人では大学教員の任期等に関する 法律だけでなく労働基準法が適用されるからというもの。 注 1)  そもそも法人化前の大学教員は公務員であり,その働き先を 法人化するのであって,その段階で著しい雇用状態の変更があっては ならないはずだ。注 2)任期制を導入する理由が, 本当に「努力をし、業績をあげている教員を適正に処遇することに より教育研究を活性化し、優秀な教員を確保することにある」 のなら、一言,忠告しよう。任期制を一方的に大学に導入したら, 努力をし,業績をあげている教員の多くは大学を去っていくだろう注 3) なぜなら,任期制でないもっと安心して研究を続けられるポストが 日本中,世界中にあるからな。日本の大学では,管理本部が思っているより, ずっと市場原理が働いているのだ。 大学における教育研究を活性化させたいなら, 高等教育にもっと予算を配分することを考えたらどうだ。 アメリカの大学の任期制の実態調査もせずに,一方的に首切り リストラを考えて任期制を導入し,予算削減をするという下心がまる見えだ。
 その顕著な例が(2)16年度試行の研究費配分だ。 「首大」の予算配分の前倒し(N-11) が現在の都立4大学で今年度から試行されているが,人文の各専攻では 研究費50%削減という実態になっている。
研究旅費40%減,
個人研究費ゼロ,
継続図書をカットしようとしても書店との契約上できない (支払えなくなった分に関しては,ある書店は都を訴えると言明),
研究図書は購入禁止(すべて個人で購入する),
コピー代節約(最近は,文書が回ってくると,「これはXX専攻でコピーしたもの だから,YY専攻では別にコピーをしてくれ」という会話も登場),
...こんな決定をした専攻すらある。 (今年度の傾斜配分で,果たして昨年よりも恵まれた予算を 獲得している学部学科があるのだろうか??)
これが「首大」の予算配分で, そこに任期付きの教員がいて,自分の「クビ」を恐れながら良い研究や 教育ができますか? 教員数は過剰定員の整理と称して 年々削減され,経営効率という名の元に,学生数を増やしていく。 これでいい教育と研究ができますか? 誰が考えてもできるわけがない! だいたい,日本の大学の研究者は,給与が先進諸国の研究者に比べて低く, 獲得できる競争的研究費も低い。それにもかかわらず,日本にも優秀な 研究者が存在するのは, あまり管理されずに研究できるという自由が与えられていたからだ。 これで徹底的に管理されて「薄給,薄研究費,超管理大学社会」 という三重苦に追い込まれたら,もういいところなど無くなってしまう。
 最後に,「教学に関して質問等の多かった事項」の第1に挙げてある 部分に注目せざるをえない。


(1) オープンユニバーシティ等センター所属教員と大学院教育の関係について
 センター所属と学部所属の別により、大学院における研究指導等を区別するもの ではない。当初ご説明したとおり、大学院を担当できるか否かは、17年度の教員審 査により決定するもので、審査をクリアする限り、所属に関わらず、大学院担当は 可能。ただし、このために新たに定数を設けることは考えていない。
(アンダーラインはポーカスによる。)


いったい何が問題か,これだけでは分からないかもしれない。組合の文書にはす でに一部紹介されていたが,今のままでは人文学部の多くの教員がオープンユニバーシティ (旧エクステンションセンター)に配属になる。しかし,大学院部局化という 手段によって,教員を大学院に配置する案が人文学部から管理本部に提出されて いる。研究者養成大学院を最低限でも維持させて行きたいとの要望から, この人文案では(学部内の)人文関係のコースより多い定数配置を要求している。 しかし,この山口管理本部長文書では,新たに定数を設ける ことはないと明確に否定しているのだ。大学院を担当するからといって,その ために教員の定数を増やすことはない,と解釈できる。もしこれが本当なら, 人文学部の大学院の教員定数は, 学部内の人文関係の教員定数(+オープンユニバーシティ内の人文関係の教員定数) と同じということで, それ以外の教員は依然として過剰定員であり,やがては大学から 消えるということを意味する。わしのにらんだところ, <最初に教員定数削減ありき>であり, 「どんな理由があっても,この定数は維持する」というのが大前提なのではないか? そして,これからの大学院に関する議論でも,管理本部は決して妥協しないので はないか? ようするに,この人達は,初めから最後まで自分の意見を変えるつ もりなど毛頭無いのではないか? 協議などする気がまるでない人達。 そういう人達をわれわれは相手にしているのではないか? 残念ながら,そんな気がしてならない。

注 1)  「... 大学教員任期法に基づく任期制と労働基準法14条の有期雇用契約を 併用できるかどうかは疑わしいし(前者は後者の特別法とも解される のであるから、大学教員には専ら前者のみが適用されるという解釈は 十分に成り立つ)、大学教員任期法は、(1)先端的・学際的・総合的な教育研究 等の教育研究分野・方法の特性から多様な人材の確保が特に求められ る教育研究組織の職、 (2) 自立的に研究する助手の職、(3) 大学が策定・参画 する特定の計画に基づく有期の教育研究の職の3つの場合に、任期制の導入を 限定しているのである。」人見剛『東京都による大学「改革」の法的問題点』 法律時報第76巻3号,P.78.
注 2)  「...地方独立行政法人法59条2項に基づき 教員の身分および基本的労働条件は新法人に自動承継される結果、 現職教員に対する提案された内容の新人事制度は労働条件の不利益変更と なり、各教員の同意なくして導入は不可能である。」(米津孝司『東京都立大学 「改革」の問題点』「法学セミナー」2004年3月号,P.54.
注 3)  「都立大経済COEグループを巡る出来事が示 しているのは、任期制・年俸制導入という優秀な教員をできるだけ確保すべき大学にと って自己破壊的決定のために都立大はこれまで確保していた最も優秀な教員を徐々に失 いつつあるということである。ここ半年の事態の推移を見るなら、このプロセスはむし ろ始まったばかりであり、都が任期制・年俸制の撤回を明言しない限りあるラインまで 容赦なく進行すると予想される。その後に残される首都大が学術的に現在の都立大に比 ぶべくもないであろう事は想像に難くない。都立大再編に際して都がこれまで声高に宣 伝してきた「理念」を鑑みるなら、これはまことに皮肉な事態といわざるを得ない。4 月8日付の「全学教員の皆様へ」という文書で山口都大学管理本部長は任期制・年俸制 の導入について、「導入の趣旨は、努力し、業績をあげている教員を適正に処遇するこ とにより教育研究を活性化し、優秀な教員を確保することにある」、と述べている(「 意見広告の会」ニュース128より)。COEグループを措いて一体どのような教員が「努 力し、業績をあげている」と彼は考えるのだろうか。彼らに対して安定した研究条件を 提供する以外に一体どんな「適正な処遇」があると考えるのだろうか。こうした初歩的 な問いに答えるために都は一体どれだけの授業料を払う気なのだろうか。」 鬼界彰夫「選ばれる立場にあるのは誰か:都立大を巡る一連の事態の本質と大学を巡る市場原 理のあり方」『意見広告の会』ニュース131,2004年4月13日 全文はこちら


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P-15   2004年4月14日に都立大総長と山口大学管理本部 長の会談が行われたそうですが,どんな話し合いだったのですか? 最近の動 向がよくわからなくって。  次へ

ポーカス博士

都立大学・短期大学教職員組合から この間の経過と、組合 の見解(4/19, pdf)に話し合いの様子がまとめられているが,最近さまざま な文書が管理本部と大学の間を行き来していてよく分からない状態だ。 キャンパスでは新入生を迎えて一見平穏に見えるが,「首大構想」は, 目下時間が切迫して緊急事態になっている。 まず3月から4月にかけての動きを整理しよう。

2004年3月9日 (1)  管理本部からの「恫喝書」が届く(別称「3・9恫喝書」)
2004年3月9日 (2)  (1)に対しての評議会見解(3/9)
2004年3月23日 (3)  総長の呼びかけで、総長・学長、大学管理本部長、理事長予定者の懇談会開催
2004年3月29日 (4)  第2回経営準備室運営会議開催(午前中)
2004年3月29日 (5)  第7回教学準備委員会開催(午後)
2004年3月30日 (6)  3/29総長声明(別称「3・30総長メモ」)配布
2004年4月2日 (7)  「総長 の意見と要望」公表
(教学準備委員会座長 西澤潤一氏と大学管理本部長 山口一久氏に宛)
2004年4月6日 (8) 管理本部,経済学COEグループを「首大」に設置することを断念 すると発表。(4/9読売,共同通信,日本経済)
2004年4月9日 (9)  「各大学教職員の皆様へ」第1ページ 第2〜5ページ, 新学部長などの表, 「新大学」の学部 等の名称(pdf)。 (大学管理本部長からの文書)(別称「4・9山口文書」)
2004年4月9日 (10)  「全学教員のみなさんへ」(緊急総長文書)(別称「4・9総長緊急お知らせ」)
2004年4月12日 (11)  「3・9恫喝書」,「4・9山口文書」に対する 都立大学・短期大学組合のコメント発表
2004年4月13日 (12)  「3・9恫喝書」,「4・9山口文書」に対する 4大学教員声明呼びかけ人会声明発表
2004年4月14日 (13)  「4・14総長・本部長会談」
2004年4月19日 (14)  東京都立大学人文学部教授会 「4月8日付大学管理本部長文書に関する見解」(4/15)発表
2004年4月19日 (15)  東京都立大学・短期大学による見解 発表

これでわかるように,今回公表された「4・14総長・本部長会談」は, 「3・9恫喝書」,「4・9山口文書」に関わる疑念を都立大総長が直接,管理本部 長に確かめるために行われた。組合文書のまとめの部分だけを以下に引用する。


第一に、管理本部長は「意見を聞き話し合いを行うことについては否定しないが「協議」につい ては合意はない」としました。これに対して総長は、「開かれた協議を今後行うということでよい か」と確認を求めたが明確な否定はなかったこと、現大学代表者である総長・学長と話し合うとい うことが協議であることを主張しました。しかし本部長は「協議」についてはあくまで認めず、こ の点は物別れに終わりました。しかし、総長から意見を聞き話し合うことは行うとし、その際、新 しい教学準備委員会に総長等を加えるか、総長・学長懇談会で行うかは双方で検討することとなり ました。
第二に、指名による新学部長予定者らで構成が予定されている新しい教学準備委員会について、 総長は現大学の学部・研究科等を代表する人文学部長等のメンバーを加えるべきことを主張しまし た。本部長は現大学の代表者との協議を行わないという原則は崩せないと述べる一方で、総長の推 薦については真摯に検討するとしました。
第三に、単位バンクについて総長は、学位設計委員会および科目登録委員会の役割はともに教育 課程編成そのものに関わるので、教授会のもとにおくかなくすべきことを主張しました。
第四に、都市教養学部等の編成について総長は、学系・コースを学科・専攻に改めるべきことを 主張しました。
第五に、大学院部局化について本部長は、部局化については一度も認めていないと述べる一方で、 そのような方向をとる可能性についても示唆しました。
第六に、暫定大学院人文科学研究科長予定者について本部長は、総長に指名を求めました。これ に対して総長は、指名は大学になじまないと主張するとともに、今回の学部長予定者の指名につい ても学内で多くの疑義がでていることを述べました。
第七に、総長はこのままでは意思確認書を取り下げる等の動きが学内に出てくる可能性があるが、 これを総長として押さえることができないことを指摘しました。
最後に、4月16 日または19 日に再度総長・学長懇談を行うことを本部長が提案、総長もこれを 了承しました。


驚くべきことに,管理本部長は「協議については合意していない」,「意見を聞い て話し合いはする」と述べたようだ。「協議」と「意見を聞いて話し合いを する」というのは,管理本部では同じ意味ではないようだ。つまりこうだ。 総長さん,どうぞいつでもいらして意見を述べて下さい。話し合いはしましょ う。(でも最初から言っているように,)改革だから現大学との対話や協議に基 づく妥協はしませんからね。「協議する」というと,管理本部の側で意見を変え ることがありうるように聞こえるから,そんな言葉は使いませんよ。
 総長が何と言おうと,評議会が何と言おうと,学生が何と言おうと, そして都民が何と言おうと,管理本部は,自分達で思ったように「首大」 の設計をする。その根拠は,設置者権限(N-3) の拡大解釈だ。「何をやっても許される,なぜなら,今構想しているのは, 「新しい大学」だからだ」という論理だが,初めから「改組転換大学」なのを 偽って「新しい大学」と主張するところからすべてがスタートしているのだ。 どんな抗議をしても,設置者権限だと,トランプのジョーカーを出す。 いや,ジョーカーは枚数が1枚で一回づつ使われるだけましだ。一度に何回でも 使ってくるところは,水戸黄門の印篭(いんろう)を盗用して,使い方を 知らない悪人のようなものだ。 前から繰り返し言っているように,こんなことを続けていたら, 現都立の4大学の教員や学生は,再び怒り心頭に発し何をするか分からない。 管理本部は,そういった事態に対して,もう覚悟ができているのかな? 4月18日の読売新聞「展望室」には大学教員 再戦の予兆?という 都庁詰め記者の感想がでていたが,これからがまさに正念場。 記者曰く「こりゃ一筋縄じゃいかないぞ」

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P-16   2004年5月13日の「人事給与制度説明会」で, 総長からまとめた質問事項が出たそうですが,どんなものだったのですか?  次へ

ポーカス博士

2004年5月13日に都立大学で開かれた「人事給与制度説明会」では,資料として なんと第1回 経営準備室運営会議次第(2004年2月13日)が 資料として配られた。経営準備室会議はすでに3月29日に第2回が開かれている し,5月中旬に3ヶ月前の資料を出してくるとは恐れ入った。そしてその次に 配られたのが総長の質問事項をまとめた紙だった。 この時の説明会は,まずこの総長の質問事項に管理本部が答える形で 進行し,その後で自由な質疑応答が行われた。結論から言うと, 管理本部側の答えを聞くたびに,しらーっとした雰囲気が漂い, 苦笑や失笑がおこり静かに進行したが,90分の最後になって, ついにたまらずに切れてしまった教員が「まともな答えがひとつも ないじゃないか!」,「権利問題と事実問題を取り違えている!」と 大声を上げてしまい,会場から拍手が起き,司会者が最後にどうしても 発言させて欲しいと手を上げた人を無視して終了を宣言し,最後の 拍手なしに終了した。
 総長の質問事項に沿って簡単に管理本部の答えを紹介しよう。 わしのメモに基づくので,不正確なところがあるかもしれないので, 100%信用しないで欲しいが,概略は正しいと思う(重要な点で 欠けているものがあったら,指摘して欲しい)。 なんで会場にいた教員が,管理本部の回答を聞いてあきれてしまったかが 理解してもらえるだろう。

総長の質問

I   5年の任期制の新制度と昇給・昇任のない無任期の現行制度との選択制は、違法では ないか?

管理本部の答え

違法ではない。
「旧制度」は不利益変更ではない。なぜなら現行の職位や給与を保障しているから。 また、たとえ移行型一般地方独立行政法人であっても、現行と全く同じ労働条件が保 障されねばならないということではない。

総長の質問

II-1  新法人の下では、現在の助手は、「研究員」という身分になるとされているが、そ の労働条件の実態はいかなるものと想定しているのか?

管理本部の答え

研究員は、研究と教育補助に従事するので、今の助手とは異なる。 現在の助手がやっているその他の仕事は、TAなどの非常勤職員が行うようにする。

総長の質問

II-2  理工系の助手については、既にその再配置や交流・戻し交流をすることが言われて いる。他方新大学の認可申請書においては、助手もその配置数が記載されているはずであ るが、先の計画と認可申請書の記載との関係は?

管理本部の答え

申請書には、配置目標数を記載してある。 後は、新学長予定者との相談で決定する。

総長の質問

II-3  理工系の助手について経過措置として特別に設けられた「准教授B」なる教員の准教 授への昇任は、いかなる機関においてどのように行うのか?

管理本部の答え

准教授Bは、学校教育法上、あくまでも「助手」である。 一定の要件を満たせば,助手は「准教授B」を名のれるということだが、 まだその要件は未定だ。

総長の質問

II-4  人文系の助手については、「別途検討する」としたままである。どのように検討するつもりか?

管理本部の答え

人文系の場合の任期も、理系の研究員の5年+再任3年、求職期間の2年を加えて最大10年まで いれるというのと同じ。人文系の最終的配置案はこれから考える。

総長の質問

III-1  新大学の教員の人事・給与制度の方向性の一つに「優秀な教員を確保」ということ が挙げられているが、任期制がネックになってそれとは逆の結果になるとは考え ないか?

管理本部の答え

公募の応募状況には、いろいろな理由があり、任期制・年俸制が直接関係あるとは思っていない。 公募にあたっては、安定性を提示するより、公正な実績主義を示した方が、 より優秀な教員が獲得できるのではないかと思っている。 任期制で入っても、いずれはテニュアを獲得して、終身雇用に入ると考えられる。 従って、 任期制・年俸制の方が、外からの優秀な教員を確保しやすくなると考 えている。また、 終身雇用で何もしないでいる教員をふるいにかけることができるというのも任期 制のいいところである。

総長の質問

III-2  任期法の任期制と労働基準法の有期雇用契約を混用する結果、 例えば同じ5年任期の教員でも、前者は1年就労すればその後は随時転出できるのに、 後者は5年間の就労を義務づけられるのは不合理ではないか?

管理本部の答え

確かに不明確なところはあるが、任期法に従って一年就労すればその後、 随時転出できる、と考えている。 有期雇用契約で5年間の就労を義務づけていると必ずしも考えていないので、 実際に運用できる。

総長の質問

III-3  任期制によって複数年度にわたる(長期的な)外部資金の獲得に不利になるとは考 えないか?

管理本部の答え

特段はなやかな業績をあげなければ再任されないということではないから、 任期制によって外部資金の獲得に不利な影響はない。

総長の質問

III-4  任期制の適用によって例えば住宅ローンなどの面で種々の不利が生じると考える が、こうした問題についてどう考えているか?

管理本部の答え

住宅ローンを借りる場合などに、特に問題はおこらないと思う。

総長の質問

IV  評価者教員と被評価者教員の間に「主従関係」が生み出されることにな るとは考えないか?

管理本部の答え

東京都庁でもやっているが主従関係にはなっていないから、 大丈夫だと思う。 むしろ、学外の人を入れて評価し、 透明性を保った仕組みを導入するから大丈夫だ。 また不服がある場合,人事委員会に申し立てすることもできる。

総長の質問

V-1  人事委員会の主宰者は、事務局長(理事)であるとされている。しかし、教員人事 は、経営・教学双方に係わり、かつ大学の自治の根幹とされている事項であるから、人事 委員会を設けるとすれば、その主宰者は、教学側のメンバー例えば副学長(理事)とする べきであるとは考えないか?

管理本部の答え

いや、むしろ法人全体の人件費,資源配分にかかわるので経営側の人間が調整していく必要がある。

総長の質問

V-2  個別教員の選考・審査を行う教員選考委員会の結論に対して人事委員会が介入する ことは許されないと考えてよいか?逆に教員選考委員会の結論に対して教授会が関与で きないとすれば、それは大学の自治に反することになる。教授会が関与する制度設計をす る意思はないのか?

管理本部の答え

あなうめ人事をなるべく廃するという観点から、常に法人の 人事方針にそった人事を行う。その際、人事委員会では、 専門委員,学外委員を入れて、透明性を確保する。 従って、教授会が関与しなくても大丈夫である。

総長の質問

VI  新大学設立に向けて行われている教員人事については、現大学の教授会が全く 関与することなしに行われている。一方、新大学の設置認可申請は、認可済みの現大学教 授会による審査を経て採用された教員からなることを前提にした個別教員の審査省略の手 続によってなされている。これらのことは相矛盾するとは考えないか?

管理本部の答え

矛盾ではない。 新大学の人事なので,法人がまだないので、東京都が法人に代って行っている。 旧大学と新大学は、別の大学である。 旧大学の人間が新大学の人事に関わるということはおかしい。 従って教学準備会議が中心となって人事を進める。 また、新大学では部局構成が異なることもある。

この説明会では,この後フリーな質疑応答があったが,その 部分に関しては別に話そう。

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P-17   2004年5月13日の「人事給与制度説明会」での その他の質問にはどんなものがあったのですか?  次へ

ポーカス博士

わしのメモした限りでは,大きく分けて6種類の質問があった。 (1) 住宅ローン問題,(2) 任期制・年俸制関連, (3) 「首大」の公募問題,(4) 助手,研究員問題, (5) 職員の処遇,(6) 現大学に所属する教員の待遇,の6つだ。 メモに基づいて簡単に論点を整理してみた。

(1) 住宅ローン問題
これは(2)の任期制と関わる問題だが,具体的で分かりやすい問題なので 別にしてみた。総長からの質問リストにもIII-4に入っていたが, あまりにも簡単に管理本部側が,「問題ないと思う」と答えたために, 尾を引いてしまった。「任期制を選択した場合,例えば銀行に行って 住宅ローンを借りられるか?」という単純な命題だ。問題なしという 管理本部の答えに対して,「その根拠は何か?」,「事実として 銀行に行って確かめたか?」という追加質問が出された。 質疑の中で判明したことは,管理本部は,任期制を教員が 選択しても住宅ローンは借りられると考えているが, その根拠は無い。銀行に行って確認したこともないというものだ。 ただし,法人化に当たっては取引銀行を決定するので,その取引銀行 に言って,ローンを組めるようにしたいとの補足説明があったが, あくまでも口約束。これまで,管理本部がさまざまな所からの 公開質問状に書面で答えていないことを思い出して欲しい。 口頭での答えがなされても,普通それだけでは証拠になりにくいから, 後でいくらでも引っくり返す。例えば准教授になって任期5年だったら, 5年で首を切られる可能性があるわけだから,長期に渡っての 借金を銀行からするのは難しいと考えるのが普通だろう。 「取引銀行を決めて,そこになんとかしてもらう」 と管理本部が口約束しても,「話はしたんだけど,どうにも ならなかった」ということがありえるのだ。

(2) 任期制・年俸制問題
任期制・年俸制は(O-6), 「首大」の新制度として管理本部が位置づけているが,「旧制度」 という名前の不公平なシステムとの選択ができるという 形が提案されている。このいわゆる旧制度とは,任期制・ 年俸制ではなく,63歳まで雇用が保障される年功序列制度だが, 「現在の給与を定年まで据え置き」,「昇任は無し」 となる。この「旧制度」とは,雇用形態の「不利益変更」 ではないか,という指摘が総長の質問のIにもあったが, その点に関して法学部の教員から, これまでの判例を見ても「旧制度」は明らかに不利益変更で はないか との指摘がされ,管理本部が「不利益変更」ではないとする根拠を 改めて問うた。しかし,管理本部側の弁護士によれば, 「現行の給与を保障する、現行の職位を保障する, 新制度と旧制度の選択を時間を区切って迫ってはいない」 という3つの根拠から「不利益変更」ではないとする 意見が繰り返されただけだった。 例えば,現行の給与、職位だけを保障するのではなく, 生涯賃金という形で考えるべきだという指摘もあるが, そのようなことを管理本部側では考えていないことが分かった。
 一方で,「出産休暇,育児休業」は任期制でも保障されるか? という質問が出た。この質問に関しては,管理本部側も 準備がなかったようで少し躊躇して相談した結果,例えば 3年の育児休業を行う場合,その期間,任期の年月は 凍結され実質3年延びる,という解釈を披露した。これは, 覚えておかねばならない。
 最も多かったのは,任期制・年俸制で果たして 優秀な人材が集まるか否か,という点で, これは「首大」の公募が低調な原因となっているという 指摘が教員側から出されたが,管理本部は自信を持って, 任期制・年俸制の方が優秀な人材が集まる, という意見を繰り返していた。 年俸制だから来たいという人はほとんどいないという教員側の 意見とは正反対だった。

(3) 「首大」の公募問題
すでに進行中の「首大」の公募は,どのような権限で行われているのか, もう決まった人事はあるのか,低調だと聞いているがハードルを 下げることを考えているか,といった質問がでた。 これに対して,教員選考委員会と教学準備委員会が人事委員会の代りにやってい る事,すでに公募が終了して, 決まっている部分もあるし, 期限が過ぎていても決まっていないものもある, 審査基準を下げる気持はない,という回答がなされた。 管理本部は,あくまでも公募の低調さが任期制によるものではないといっていたが、 それならどのような活性化の策を考えているかという質問も出たが, 公募期間が短いことから難しい面もあるが,各大学に声をかけるなどして, やれることはやっているという苦しい答えが返ってきた。
総長を初め大部分の教員は,任期制・年俸制の導入こそ,低調な公募の原因 であると確信している。これは,実際にアンケートを取ってみれば分かる はずだが,そのような提案は残念ながらでなかった。

(4) 助手と研究員問題
研究員として位置づけられる従来の助手の仕事は, 「研究や教育補助以外の仕事がなくなる」と言われているが,実際にある それ以外の仕事は誰がするのかという質問が出た。 管理本部では,TAを含めた非常勤職員を検討しているとだけ答えたが, どの程度の非常勤職員を配置するかについては未回答。 「首大」では研究員を再配置する, という方針に対して,管理本部の再配置案では, 専門分野を越えた再配置があるとしているが,それでは困るという 意見が出た。「なるべくそういうことのないようにしたい, 常識(!)を越えて再配置をすることはない」という のが管理本部の答えだったが,一方で, 科技大には助手がほとんどいないことを考えて欲しい, だから都立大の助手が再配置されて科技大に行くようなケースは ありうる,との答えが返ってきた。 新大学発足直後に、助手配置のアンバランスを一挙に解決する必要はないのではない かとの提案もなされたが,それに対して管理本部は直接答えず, 「個別の事情はヒヤリングをしながら決めていきたい」と説明 したにとどまった。 准教授Bは再配置の対象になる可能性が高いのか, という質問にも,再配置の可能性がある,との答えだったが, 「どのくらいの規模にするのかを検討中である」とのことだった。 研究員と准教授Bの違いについての質問に対しては, 基本給のレンジが違う, 研究員は5年+3年のレンジで考えており, 准教授Bは,昇給の可能性があり,レンジが広い, 昇任審査ではなく,要件を満たせばなれるとの答えだったが, どのような要件なのかはよく分からなかった。
文系研究員に関しては,理系研究員と同様の任期(5+3)を考えている こと,経営準備室で検討して配置案を示すこと,職務条件を提示してから 配置案を示し,意思確認書を送付したいとの方針が明らかにされた。

(5) 職員の処遇
法人化後の職員は,すべて都からの派遣職員となるのか否か, という質問に対して,管理本部側は,すべてを派遣職員とする訳ではなく, 雇用職員も含むかもしれない,と曖昧な答え方をした。経営に 関わることは,最終的に理事長により決定されると繰り返していた。

(6) 現大学に所属する教員の待遇
現大学だけに所属する人の労働条件はどうなるか,に関しての 質問も多かった。「現給据え置き。昇給無し」という基本方針を 管理本部は繰り返したが,超インフレになれば別とも発言。 現大学に所属する教員(管理本部用語では「旧大学」の教員)の研究や教育の条 件の保障はどの程度されるのか,という質問があったが, 「これから部屋割りを検討し,その中で考える」と回答。 ようするに現大学に残る選択をした教員の研究環境が 変る可能性があることを強く匂わせた答弁だった。 部屋割りが変って,研究条件が大幅に変ることになると, 研究環境が保障されないということか,との質問には, 「研究だけしたいというのは、通らない。新大学が交付金を使っていくのだ。 旧大学の研究環境の維持だけを主張しても,そんなことは社会が納得しない」 と強気の回答。現大学に残る選択をした教員,および現大学の学生・院生の 教育環境の保障にきちんとお金を使っていくという姿勢を まったく示さずに終わった

質疑応答の最後の方になって,「これだけの情報しかもらわないのでは, 就任承諾書を出すかどうか判断できない!」, 「ちゃんと教員からの意見を聞くべきた」 という意見が出され同意を示す拍手があった。 管理本部側は, 「建設的な意見なら受け入れます」と答えたが, これは自分達の方針に沿った意見なら聞いてもいい 程度の意味でしかないことは,これまでの経緯からして自明だった。 最後に切れてしまった教員からの「管理本部はまともな答えをしていない! 権利問題と事実問題を取り違えている!」との大きな声での発言があり, 再度同意の拍手がおこり,時間切れとなった。

今回の「人事給与制度説明会」が終了したことで,管理本部は 「大学へはきちんと人事給与制度の説明に行った」と公言するようになるだろう。 場合によっては一方的に, 「教員の了解も得られていると思う」といった発言すら飛び出すかもしれない。 しかし,今回質問をして回答を聞いた限りでは, 都立大の教員は決して満足した答えをもらったとは思わない だろう。そして,就任承諾書を出すための納得のいく説明が あったと考える教員は,まずほとんどいないだろう。 なぜかって? そりゃあ,管理本部の2人の参事の回答を聞くたびに, 会場のあちこちからため息が聞こえ,苦笑や失笑が絶えなかったからだ。 納得して聞いたなら,司会者が最後に説明会を終えた時に,拍手が起っても不思議ではないだろう? 司会者の宣言によって説明会が終わったとき,さらにあちこちから 落胆の声がささやかれた。そして教員は拍手もせずに部屋を後にしたのだ。 納得のいかない説明,未決定事項の多さ,不透明な決定過程 ,この3点に尽きる。何を言ってもまともに検討しようとしない 管理本部の態度は,「のれんに腕押し」の状態だ。 これでは都立大の教員の間で,ますます不安が募る。 「首都大学東京」は,今のままで行けば絶対に危ない。 「行きたくない。どこかへ行きたい」と考えるのは, 自然な流れだろう。

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P-18   2004年5月18日の「総長・各学部長による説明会」 はどうだったかな?(ポーカス博士)  次へ

ホーカス君

茂木総長が新入生のことを考えて,なるべく分かりやすく説明しようとしている のが印象的でした。でも,総長からの概略の説明と, 自治会からの要望書の中の質問に 総長や学部長が答えるのに時間がかかって,一般の質疑応答の時間が少なすぎた と思います。総長の説明の中で印象的だったのは,この日の説明会に管理本部 からも質問に答える人に来て欲しいと要請したけれども,「学生への説明は 大学でやるべきだ」という返事で来てもらえなかった,というあたりかな。 先生達に話をきいていると,「このあたりは管理本部に聞いてみないと わからない」という答えがよく返ってくるから,本当は管理本部の人に 来てもらいたかったと思います。
 自治会の質問に対しての答えですけど,総長は分かりやすく答えていましたね。 一部の学部長の答えは曖昧でよくわかんなかったけど。
 えーと,まず「少人数教育が維持できるか?」という質問に, 総長は「いままで通りの少人数教育は維持できない」と答えていました。 これは,「首大」だけの話ではなくて「都立大」にも当てはまる 話で,教員数が減っていくけど教員の数を増やせないし, 科技大や保科大の教養の授業が南大沢で行われるようになるから, なんでも今まで1000人いた教養科目受講生が1500人 になるという話でした。「嘘はつきたくないから本当の事を 言う」って言っていたのも印象的でしたね。「教員の持ちコマを 増やすなどの工夫はするけど,今までのような少人数教育は できません」と断言していました。何しろ,8・1事件以後の都立大改革の 流れの中で,都立大の少人数教育はけしからんって言って, 改革すべき点にあげていましたからね。当然の流れでしょう。
 「来年度以降の開講数について」は,まず法学部長が答えていました。 今年度法学部の開講数は約130から約100に減少したという件に関しては, 「そんなに減っていない。自治会アンケートの後も 授業の補充があった。ロースクールのために,学部の授業をけずった 部分がある。学生へのアナウンスの仕方が悪かった」なんて答えて いましたが,よく分からない返答でした。いったい授業が どれだけ減少したのか,本当に今の時点で十分な授業が行われている と言えるのかどうか,法学部 生の公開質問状を読むと,カリキュラムの組み方にもっといろいろな 問題があると思います。経済学部長は,「十数人が経済学部では 意思確認書を提出していない。それに対して大学管理本部は非常勤で努力する と言っている。 一時はかなり険悪なムードだったけど, 今ではすこしづつ教員間の話し合いが復活している。 でも突然、教員がいっきにやめるような事態が起ると問題になる。 ある先生の元で勉強したいと思ったら,一年生のうちからでも早めに その先生の授業を受ける方がいい」と言っていました。開講数の維持は, 結局難しいということなのかな,という感じでしたね。最後の説明なんか, 教員が転出する前に授業を受けておけっていう意味ですよね。
「都立大学の研究分野が減っていくというのは、明らかに問題ではないか? 」 という質問に対して, 人文学部長は,「さまざまな専攻で史学と同じような状況が起き始めてい る。教員定数をオーバーしても,人員を確保すべきだと主張してきたが, 管理本部が作った定数を変えようとしない。 学生・院生の協力がないとこの事態の打開はできない」 という発言をして,拍手が起っていました。でも,この説明は「首大」 の話で,都立大人文の現状をどうやって変えるかという話ではなかった, と思います。昨年度に人文学部を去った教員の後は補充されていませんよね。 それどころか,この2〜3年,人事は凍結されているとかで, ほとんど新しい先生が入ってきていないから,減るいっぽうでしょ。 管理本部が学習権を保障するって言ったって,実際に 教育環境は悪化していますよ。今の都立大の教員が流失した 分を補充しないと,教育環境の維持はできないと思います。
あとは予算の話と学費の話だったけど,学費は今年度から 独立行政法人化された国立大学も値上げをしていないから, すぐに学費が上がるということはないだろう,って話でした。 予算に関しては,「傾斜的配分研究費」が話題になっていました。 初めは,「基礎研究」にまったく配分されそうにもない計画だった ようで,総長が申し入れをして「その他(基礎的研究)」という 部分を入れてもらったそうです。この予算配分自体が問題なんだ とも言っていましたが, 「独立行政法人化すると,独立した採算制が求められ, 経営と研究が分離されるから,これまでよりも いっそう基礎的な分野がないがしろにされるのではないか」という 心配の声も上がっていました。


 自由な質疑応答の部分は,ちょっとメモを見ないと。ええと, 結構長い質問が多かったのでおおざっぱな話ですけど。

◯ 「夜間過程が廃止。夜間授業はどうなるのか? 学士入学,社会人入学など多様な人材を受け入れるシステムはどうなるのか?」
今年度からB類(夜間部)の募集停止をしたが, 昨年の学生が卒業するまで、きちんとつづける。 それから,多様な入試形態は,「首大」でもやる。

◯ 「意思確認書」の取り扱いに関して,「総長は白紙撤回を求めた後, 管理本部との話し合いがあったようで『一定の前進』があったとの 声明を出しているが,あれは何だったのか?」
総長 --- 今も白紙撤回して欲しいという考えは変っていない, 「重要な前進」とは,管理本部の人間と「話し合い」ができるようになった ということだが,管理本部は「協議はしない」と言っている。 どうやら,管理本部にとって「協議をする」というのは, 対等な立場で話すことのようだ。管理本部と現都立4大学の 人間との話し合いは,あくまで管理本部が決定権を持った 話し合いだと考えているらしい,管理本部と現都立4大学は 対等な関係ではないと考えているようだ。

◯ 「(1) 同意書の状況, (2) 意思確認書, (3) 各学部内での議論はどうなっていたか?」 を各学部長に尋ねる質問。 その質問者曰く, 「法学部、経済学部の意思確認書未提出の教員がかなりいる。 教員同士の対立が生じていて,学生にも分かる状況になっている。 その対立で学生に不利益がかからないようにしてほしい。 これではまるで『白い巨塔』,『牡丹と薔薇』の世界みたいだ」 と言っていました。各学部長(工学部長は欠席で,代りに評議員が出席)が答えた ことでメモしたことだけ言います(脈絡がなくて書いた部分もあります)。

人文 --- 同意書は出さなかった。 意思確認書は、学部長の責任で出した。 人文が全員傾斜配分に参加することに管理本部に近々抗議声明を 出す予定である。
法学部 ---意思確認書は個人に任せている。 若干名だけ出していない。この間の騒動は「白い巨塔、牡丹と薔薇の世界」 なんて言うような,なまやさしいものではなかった。ゼミでのいじめとかは100%ありえない。 新しく来る教員は、新大学の方針に賛同して来る人だと思っている。
経済 --- 同意書はわずかな人しか出さなかった。 意思確認書は,近代経済の人は2名しか出さなかった。 2月19日の教授会で意思がかたまったようだ。 学生の不利益に関して言えば,個人的に悪いことをする先生はいないと思う。
理学 --- 同意書の提出者はいなかったと思う。 意思確認書に関しては,いろいろな意見の人がいた。 いろいろな立場がある。 結局,提出は遅くなったが全員が出した。
工学研究科(評議員)--- 教授会では熱の入った議論をした。 同意書に関しては,総長声明を尊重した(評議会の意見も)。 意見分布だが, 約半数の人は,明確な意思を表明しなかった。 1/4〜1/3の教員は同意書提出に反対だった。 工学研究科の苦しい立場を分かって欲しい。 実際に, 意思確認書に関しても8名が不提出だった。 学部専攻が,「新大学」では3つに分散してしまう。 最終的には、同意書の「配置案に同意する」 という言葉を取って、その時点でできることをした。 分裂することをさけたかった。 教育研究の中断をさけたいという希望もあった。その結果, 独自形式の同意書を出すことになり, 「作業に参加はする」というものを研究科長が まとめるという形にした。 意思確認書は個人レベルにきたもので, 一部の教員が提出しなかったが,最終的には全員提出した。
都市科学研究科 --- うちは独立大学院として10年前に設立され,メンバーは10 人。7人は大学院で、3人は学部に所属する。「新大学」では, 全員が学部に所属することになる(建築都市コース)。 同意書は出さなかったが,意思確認書は,基本的に個人ベースのもの。 先頭を切って出すことはなかったが,最終的には全員出した。

◯ 「傾斜的研究費の分配方法に関して。 新大学の方針に従って予算を分配することが納得ができない。 経緯は? どのように考えるのか? どのような行動をとるのか?」
総長 --- 経営準備室の会議で傾斜配分をすることが決まっていた。 実はその場に出席していたのだが,限られた少ない時間の中で, 膨大な資料を与えられて審議させられた。そこで決められたことだと 後から言われた。そこで,この配分方針はおかしいので, 実際的に手直しして欲しいと申し入れた。 すると,これは現大学の予算なので,「財務が決定し予算の承認を得ているので もう変えられない」と言われた。傾斜的配分に関しては,申し入れを して,最後に付け加えた形で「その他(基礎研究)」という部分を配分する 研究分野に入れてもらった。

◯ 「都立大学の少人数教育の破綻がおこらないか? A類,B類,昼夜開講,土曜授業を守ってもらえますか?」
守るつもりでいる。しかし, 現実は減った教員数でやるので影響が及ばないとは言えない。 なるべく影響が少ないようにする。

◯ 「この際,総長が言う<協議体制の再構築>ではなく、 17年度開講をあきらめるように、働きかける必要がないか? 説明会の時間を長くして欲しい。4'の時間(16時20分〜17時50分)だけではなく。 都市教養学部の学部長から,学部や「都市教養」について説明をしてほしい。(拍手)」
総長 --- もう少し,今後の動きを見たい。この2ヶ月位。 説明会は必要があればまた開催する。時間も考慮したい。
法学部長 --- なぜ「新大学」の学部長になったかというと, 新大学の学長から指命されたから。特に所信表明はない。 自分としては,大学がつぶれてしまうより,少しでも今後プラス になるような方向でいきたい。そのために全力を尽くしたい。 できることをする,という立場である。

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