都立大の危機 --- やさしいFAQ

T.  就任承諾書をめぐって


ダイレクト・ジャンプ T-1, T-2, T-3, T-4, T-5, T-6, T-7, T-8, T-9, T-10, T-11.

T-1  就任承諾書の提出をめぐって2004年6月4日に緊急4大学教員集会があったようで すが,就任承諾書を出さないとどうなるんですか?  次へ

ポーカス博士

6月17日締め切りの就任承諾書というのは,文部科学省に提出する書類で, 「教員の氏名等を記載した書類(様式3号)」の提出とペアになっている。 この様式3号というのは,教員の名前と担当科目のリストになっていて, とりまとめ担当者が記入するが,個人が提出する就任承諾書はその様式3号 の内容と一致した担当科目名が記されることになる。学部所属の教員が 出す就任承諾書の記載例はこんなだ。
 さて,就任承諾書を出さない教員はどうなるか? 「首大」に就任しないと宣言したわけだから,その後の選択肢は, (1) 都立大教員として2010年まで勤務する,(2) 他大学へ移る, (3) 退職する,の3つになるだろう。
 就任承諾書を出さない教員がいっぱい出たらどうなるか?   当然,その教員の科目がなくなるわけだから,様式3の方も変ってしまう。 いやいや,文部科学省に出した申請書と内容が変らないようにする ことができなくなるから,当然修正をするように追い込まれるだろう。 果たして,修正ができるのか,また,修正したぐらいで抜けた教員の分を 補うのができるのかは,これからの就任承諾書の提出具合いを見ないと 分からない...

「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る

T-2  それじゃあ,「就任承諾書」を提出したら, めでたく(?)「首大」の教員になれるんですか?  次へ

ポーカス博士

それが大変なのじゃ。 もちろん,今,都立の4大学でどのような立場,職場にいるかという 状況によって異なるのだが。
 例えば助手や助教授の場合,今年中に なんと昇任審査に応募できるらしい[06/11/04 修正]。そこで,注意しな ければいけないのは, 例えば助教授の人が教授になるという昇任が認められたら, その人は自動的に(強制的に)「任期制・年俸制」を選択させられる という点だ。もし逆に昇任がなかったら,いわゆる「旧制度」という名の 現行維持に見せかけたいじめ制度(給与据え置き昇任なし)を選択するか, 「任期制・年俸制」 を選択するかのチャンスが与えられる
 確かに昇任審査を受けるかどうかは(強制ではなく) 個々人の判断に委ねられている。 「私は昇任審査を受けたくない」と言うオプションがあるにはあるのだが, うっかりこの昇任審査にのってしまうと大変なことになる[04/06/11追加]。 つまり,ついこの間まで の話では、教員が「旧制度」と「新制度」を選べると言っていたのに, その前に「昇任審査」を選択してしまうと, 「昇任」が認められた教員は強制的に新制度という名の「任期制・年俸制」 を押し付けられるということなのだ[06/11/04 修正]。こんな話ではなかったはずだ。 このような状態を雇用状態の不利益変更が起きたと見なせない はずがない。例えば,わしが就任承諾書を出して「旧制度」を選択したいと 思っても,「昇任審査を今のうちにうけておきます!」と言って審査を受け, 助教授から教授になることが決定してしまうと, 「旧制度」を選ぶという選択肢がなくなってしまう[06/11/04 修正]。
つまり,わしが「任期制・年俸制なんていやだー!」と言っても 「はっはっは,ホーカス先生はあまい! 昇任したものは,任期制・年俸制なのじゃ!」 と言われてしまう。なんかとっても卑怯な手法だ。
2004年5月20日に行われた第3回経営準備室運営会議に(案) として示されているのだが,決定されたのかどうかは未だに不明だ。 この頃の経営準備室運営会議の資料は,何が決定されたのかちっとも分からない。 いつものパターンだと,議題に上がっただけで自動的に決定されてしまう 可能性が高いのだが,困ったものだ。


教員の昇任方針について(案)

基本的な考え方
○ 平成16年度中に既存四大学の助教授、助手の首都大学東京における教授、 准教授への昇任審査を行う。
○ 首都大学東京への就任を予定している助教授、助手を対象とする。
○ 教育研究上、特に顕著な業績をあげた者を昇任させる。
○ 昇任規模は、首都大学東京の運営費交付金額、設備環境面を考慮して決定す る。
○ 昇任が認められた教員は、任期制、年俸制による「新制度」を適用すること とする。
○ 昇任が認められなかった教員は、「新制度」、「旧制度」のいずれかを 選択できるものとする。

応募資格・方法
○ 応募資格
<助手から准教授への昇任の場合>
・平成17年4月1日現在において63歳未満の者
・助手歴3年以上
<助教授から教授への昇任の場合>
・平成17年4月1日現在において63歳未満の者
・助教授歴5年以上

○ 応募方法
 応募資格者が直接新大学設立本部に応募



「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る

T-3  それで本当に2004年6月17日までに就任承諾書が 管理本部にそろったんですか?  次へ

ポーカス博士

いんや,そろわなかった。少なくとも124枚は足りないことになった(おそら く150枚くらい足りないだろう)。
2004年6月17日の人文学部教授会では,これまで要求していた 大学院部局化問題,教員の身分保障と雇用形態の問題と並んで, 教授会の人事権に関して管理本部から文書による明快な 回答がない限り,就任承諾書は一致して出さないことを決議した。 6月17日というのは,あくまで大学管理本部が設定した日付だったので, 実際には7月2日が文部科学省の最終締め切りだ(6月16日の朝日新聞の「時 時刻刻」参照)。 さらに6月18日の東京新聞や毎日新聞にすでに報道されているが, 人文学部の124人が就任承諾書を提出しなければ,文部科学省の 設置認可は通らない。一方で,就任承諾書の 締め切りを6月10日の午前中までとしていた科技大では, おそらく大多数の教員が提出した(一桁台の未提出者はいるかも しれない)ようだし,保科大と短大は,少人数だということもあり, ほとんど学長や学部長の目の前で書類を書かされたりするという噂も あるので,間違いなく提出されただろう。
 文部科学省では,提出締切日の10日前に書類は提出するように, という「10日前ルール」(という暗黙のルール)があるそうだ。 そのルールを守るとすると,6月24日(土)までに は提出せねばならない。ということで,人文最後の戦いは, おそらく6月23日(金)までが1つの山場となるだろう。 この期間に管理本部から正式回答が来ない場合,「10日前ルール」 どころの騒ではなくなり,管理本部は 7月2日(月)にぎりぎり持ち込みセーフを狙う しかなくなるだろう。

えっ,経済COEグループと同じように, 「クビ大」から人文が切られないかって? それはできんだろう。124人を切るなんて,宮本武蔵でも 難しい。第一に,もし人文全部無しにして申請して 通るかな? これでは,設置審に出された書類と 比べて大幅な変更が加えられたと見なされるから, まず通らない。第二に,人文学部を切ったら, 来年度の入試問題が作成できなくなる。 国語,社会,英語といった基礎科目の入試問題の 作成や採点を一手に引き受けているのは,人文学部なの だから。もちろん,管理本部のお得意の外注という 手段も残されているが,公立大学が入試を外注した とかいったら,こりゃあもうスキャンダルだな。 おそらく外注先は予備校だろうから, その予備校が入試問題を作成しておいて, 受験生に受験指導をするという立場になる: 「自分達の予備校生には,問題をばらしません」 とか言っても,信じてもらえるわけがない。 河合塾に「都市教養」の理念の丸投げ を3,000万円出して行ったという経験からしても, 自分達の思ったようなものを期日内にもらえるかどうか, という問題もある。

 「首大」構想に基本的に賛成している都立大執行部の一部の人間は, 今回の就任承諾書では,「教員の身分・雇用に関わる問題は 関係ないから」,「とにかく文部科学省に書類を提出することが重要だ」 と圧力をかけてくるだろう(実際に科技大の学長は,すでに そのようにふれこんで教員を動かしたらしい)。 そして実際に,教員の身分・雇用に関わる部分は, 法人への就任承諾書で初めて明示されるはずなので,今後の定款の決定 とも絡むから,もう少し先に決めても良いと考える人達がいる。 しかし,それは罠だ。 ここで就任承諾書を出しておいて, 法人への就任承諾書を拒むことは,かなり法的に見て微妙なのだ。 意思確認書の時のように,書類そのものが法的な根拠のなかった場合とは 違う。今回の就任承諾書は正式な法的な手続きにのっとった書類だ。 今はとりあえず出しておいて,法人への就任承諾書の時に考えれば よい,という問題ではない,とわしは考える。 T-2で述べたように,助教授の人は, もし就任承諾書を出して昇任審査に応募して教授になってしまうと, 好むと好まざるとにかかわらず「任期制・年俸制」に移行されられて しまう[06/11/04修正]。だから,「任期制・年俸制」だけは御免だと考えている 助教授は,就任承諾書を出して昇任審査に応募して通ってしまうと, おやおや不思議, 「あなたは任期制・年俸制を選択しました!」と言われてしまうので, 注意が必要だ[06/11/04修正]。

「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る

T-4  ポーカス先生は,条件がそろえば就任承諾書を出すつもりですか? 次へ

ポーカス博士

いや,わしは就任承諾書を出すつもりはない。たとえ人文学部臨時教授会決議 (2004年6月3日)の条件である (1) 「新大学」における大学院の構成, (2) 教員の身分・労働条件が明示があったとしても,就任承諾書は出さない。 これは,わしにとって条件闘争ではない。わしは,ここまで大学という組織が ずたずたにされ,ぼろぼろになった例を「首大」以外に知らない。 実学中心に大学を改革すると言えば聞えがいいかもしれないが, その実,教育責任の不在(単位バンク,英語外注),教育の理念ゼロ(都市教養 理念の河合塾丸投げ), 基礎研究の軽視(人文系学問の縮小,工学や理学の基礎分野冷遇), 研究サポート体制ゼロ(話題にもならない!),最悪の評価システム(外部評価委 員がいつも「学外の有識者」という名前で登場するだけで,本当の専門家を 加えない), 教授会権限ゼロ(専門委員会に人事権がある),など数え上げたらきりがない。 都立大教員として 2010年まで大学に残る道を選択したいとも思っっていたが,今進行中の 研究費傾斜配分(N-13)を 見ると,都立大教員として残るのは茨の道のようだ。 つまり,都立大教員として残っても,研究費ゼロ,図書費ゼロの 可能性が高い。さらに,タイムカード導入とか研究室取りあげ とか悪い噂が渦巻いている。都立大の学生や院生と共に大学に 残る道を選択したくても,わしも研究者のはしくれだ。これでは やっていけない。いずれ脱出をせざるをえなくなりそうだ。

「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る

T-5  大学院の整備は,本当に就任承諾書を提出する前に 決まるのでしょうか?  次へ

ポーカス博士

6月8日の都立大学評議会では, 前日に行われた第1回大学院検討部会の内容と結果が報告された。 案の定,大学院の部局化は盛り込まれなかった。 管理本部は,「(大学院)重点化のメリット・意味が未だに不明」 だと言っているらしい。一方で,人文学部での大学院案の 構成と教員数は受け入れられ大学院の「人間・社会・文化研究科(仮称)」の 教員数 85名が明示された。しかし,その中の専攻別の数は示されていない。
 注意しなければいけないのは, 教員数というのが教員定数のことではない,という点だ。 どういう意味かというと,教員はあいかわらず学部やオープンユニバーシティ などに所属する。わしの所属するオープンユニバーシティの人文系チームを 例にとれば,教員定数10名のところに27名が所属することになり,27-10= 17 で17名が過員(過剰定員)ということになる。この数は人員削減の 数であり,辞めたら補充しない教員数じゃ。この17名が大学院を担当することに なっていたら,どうなると思う? 答えは簡単だ。大学院での研究・教育 なんてあっというまに崩壊する。人文学部に関して言えば,85名という定員を 確保できたなんていう状態ではないのじゃ。学部が64名でも大学院は85名, というのは大学院に教員が所属すること(大学院部局化) で意味を持つ数字だったのであって,定数削減が予定されている組織から 大学院に教えに来る数を問題にしているのではない。

都立大学理学研究科,工学研究科,都市科学研究科はすでに大学院 部局化しているのだが,「首大」構想では,教員が新たに学部所属となってしまう。 こんなことはこれまで聞いたことがない。 経済学COEグループが意思確認書を 出さなかった(I-9)ことから,設置申請書から経済学コースが抹消された のは記憶に新しいところだが,東京都大学管理本部 の描く「首大」構想では,研究は二の次であることが明らかにされた事件だった。 彼らにとっては,「首大」の教員設定数は,どんなことがあっても530人 なのだ。経済学COEグループが,世界的な研究拠点として文部科学省に 認められたとしても,「新大学における経済学グループの教員定数(ポスト 数)を、現都立大学における定員18名から、COE事業推進者総数16名 を下回る13名とし、余剰人員とされた3名を経営学グループに繰り入れる という配置案を提示した」(東京都立大学経済学部グループ有志『都立新 大学構想の評価と経済学者たちの選択』「世界」7月号,2004年,P.211) りするのだ。これは,本当に試金石だった。 だから,実のところ2004年6月15日以降に明らかになる「新たな大学院」構想に, わしはまったく期待していない。

案の定、2004年6月14日の第2回教学準備会議で出てきた大学院構想 は、6月7日に開かれた大学院検討部会で出された資料とほとんど同じだった。 ようするに、大学院検討部会で議論されたことはまったく反映されず、 原案が素通りしたということだ。しかも,この大学院構想は, 翌日の6月15日の読売新聞(「首都大学東京」の大学院は6研究科 東京都が概 要決定),日本経済新聞(「首都大学東京」、大学院は6研究科−都が構想を発 表、2006年春から)に発表されている。またしても都立4大学の 教員を無視して頭の上を素通りさせたのだ。その大学院構想の 構成メンバーに知らせるよりも前に,大学管理本部はマスコミに 垂れ流したようなのだ。まったくもってけしからん。 後になって分かったことだが,この管理本部からマスコミへの垂れ流し 事件は,6月15日の文部科学省での設置審でも話題になり,激怒した 委員がいたそうだ。当然だろう。「首大」の審査をしている委員に 大学院構想の内容を知らせずに審議させ,マスコミには教えるという そのやり方だ。ま,これまでも同じような手口でマスコミを利用して きた管理本部にとっては,何の罪の意識もないだろうが。
 ここでは読売新聞の記事の内容を引用しておこう。


都は十四日、来年春に開学を予定している「首都大学東京」の教育内容 などを検討する教学準備会議(座長=西沢潤一・学長予定者)を開き、 二〇〇六年春に設置予定の新大学院の概要を決めた。新大学院には、「都 市環境科学」「システムデザイン」「人間健康科学」「人間・社会・文化 科学」「法律・政治・経営」「理工学」の六つの研究科を設置する。それ ぞれの教員配置や学生数などについては、七月中に中間案を取りまとめる。 また、教員の任期制・年俸制導入については、学長、総長を通じ、教員の 意見を聞いた上で検討するとした。


この記事の最後に注目だ。「教員の任期制・年俸制導入については、 学長、総長を通じ、教員の意見を聞いた上で検討するとした。」 となっているが,あたかも管理本部が歩み寄っているような印象を与える コメントだ。しかしな,よく読むと「学長,総長を通じ」となっている ので,教員の意見の反映は「学長,総長」が責任を持ってやることに したよ,という意味だ。科学技術大学の学長は,これまでも「管理本部 万歳」の人物だということは知られているから,注1) 教員の意見がまともに届くとは考えられない。保健科学大学 や都立短大でも似たような状況だろう。都立大総長は,がんばるかも しれないが,「意見を聞いた上で検討」というのは,ただの儀式 で終わる可能性が高い。飴をちらつかせておいて,すきをみて 強硬手段を取る,という手口かもしれん。

そして,T-3で説明したような, 都立大学人文学部教授会の決議が行われた。6月14日の教学準備会議でも, やはり教員の大学院定員化は述べられていない。 教学準備委員会での説明では,「人文系の大学院 の85名は,大学院所属となる。しかし,定員はあくまでも学部や センターに付く」という説明だったようで,これは玉虫色の 説明でしかない。 これが「教員設定数について」(6/7付) (pdf)という文書だが,大学院の構成と学部構成の人間関係の図があり, そこには85名という数だけでなく, いろいろと怪しい数字が並んでいる。大学院計のところに477と 書いてあるが,括弧して(456)となっている。これは,85-64=21という 数字と一致するが,この括弧が一体何を意味するのか,管理本部は説明していな い。注2)そんな訳で, これまで何回も口頭での約束を反故にされてきた人文学部としては, 書面での明確な回答がなければ「就任承諾書」は書けない, としたのだ。ちなみに, 「書面での明確な回答が期日まで出てこなかったらどうするのか?」 という教員の質問に対して,人文学部長は, 「その時は,もうみなさんお分かりでしょう。 どうするかということは。 」と意味深長な回答をした。 不誠実な回答しかできないという人達とこれ以上付き合っていく わけにはいかない,という趣旨の発言が前後にあったので, この発言の解釈として, 「みなさん,覚悟を決めて就任承諾書を出すのはやめましょう。」 というのが正しい。人文学部長を含めた執行部では,それでも 生活がかかっている教員の処遇に対処するためには, 就任承諾書を出す方向での準備も進めているが(それ自体に 教授会内部では,大きな矛盾として反発があるのだが), 「書面での明確な回答(「矢印と数字と走り書き」ではなく, 曖昧ではない文で論理的に構成されているもの) 注3) が出てこなかったら, 本気で降りるからね!」と宣言しているのだ。

注1) 都立3大学が新大学構想に賛成するとの声明が2003 年10月9日に出された時に,そんなことは聞いていない, と科学技術大学の教員が教授会開催を求めて運動した。 科技大学長は,しばらく行方不明となったが,その後,教員の要求が 通り教授会が開催され,「新大学構想に賛成する声明」は,学長個人が 賛成したということだ,ということが確認された。しかし,「賛成声明」 を科技大のホームページから削除する要求は,個人としての資格でも ホームページに掲載できるとの主張を繰り返し,無視された。 2003年10月17日の東京都立大学教職員組合 科学技術大学支部に よる抗議声明を参照。 なお,この「新大学構想に賛成する声明」の執筆者は,当然のことながら 科学技術大学,保健科学大学,都立短大の学長ではなく, 東京都大学管理本部であった。そのホームページへの掲載のすばやさ, マスコミの利用のすばやさは計画的犯行であったことを裏づけている。 (2003年10月9日 朝日新聞,新大学構想、今度は都が「逆襲」-- 賛成学長の声明を発表)このマスコミ報道は,その後しばらくの間, 「新大学構想」に反対しているのは,都立大だけ,という印象を 世間に大きく広めた。
注2) 4大学緊急教員集会決議に基づき,主催・賛同団体(4大学教員声明 呼びかけ人会,開かれた大学改革を求める会,人文学部助手会有志,理学研究科 助手有志、工学研究科助手有志)は,南雲人文学部長,佐藤理学 研究科長,原島新大学院検討部会座長,鈴木工学研究科長, 石島科技大学長の諸氏と1時間〜2時間の面談を行った。 その結果は,大学院構想も任期制・年俸制問題も不透明なままだ ということが判明している。詳しくは, 4大学教員の皆様への報告 を参照。
注3) エクセルを使った箇条書きの文書ではなく,小論文を書きなさい, という意味。

「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る

T-6   2004年6月の設置審の結果次第で,就任承諾書を 出す人も出てくるのですか?  次へ

ポーカス博士

そうだ,その通り。まだ,この結果を受けて出さないという決断を する人も出てくるだろう。 実は6月14日付で,文部科学省高等教育局大学振興課大学設置室 からファックスがまいこんだ。その中には, 「設置構想審査の結果,申請内容の補正を求める意見は付されませんでしたので, 別添により追加書類を作成し、 7月2日(金)まで提出してください。」と 書かれていた。ということは,7月16日の朝日新聞「時時刻刻」が伝えるように, 7月2日が文部科学省へ就任承諾書と様式3を提出する最終日と考えても いいだろう。ただし,この書類の宛先には「大学等設置認可申請担当者殿」と しか記されていない。「首都大学東京」という文字はどこにもないところから, 認可してもよいと思われる申請者向けに作られた一般的な書類だと類推できる。 実際に,大学設置・学校法人審議会(大学設置分科会)「第1審査会」 でどのような議論があったのか?

ここからは噂であり,確かな証拠に基づいているわけではないので, 注意して聞くように。
6月9日(水), 6月15日(火)にいわゆる設置審が開かれた。 しかし,冒頭で紹介した文部科学省からのファックスは,6月14日付だった。 ここの部分の謎解きに時間がかかってしまったのだが,経過はおよそ次のようだっ たらしい。


2004年6月9日(水)設置審では,委員と文部科学省の役人との間で, かなり激しい意見の対立があった。委員同士の間でも論争があったようだが, 「認可を認めるべきではない」という委員と,「早期認可を実現すべきだ」 という文部科学省との対立が解けず,休憩をはさんで議論をしたが結論が でなかったために,次回(6/15)に先送りするとともに,上の委員会(運営委員 会?)へ議題を回した。
2004年6月14日(月)(11時24分)文部科学省高等教育局大学振興課大学設置室からの ファックスが,大学管理本部に届いた。
2004年6月14日(月)15時40分〜 第2回教学準備会議が都庁で開かれた。
2004年6月15日(火)設置審では,「17年に暫定大学院が発足して,18年に 新構想(内容不明)の大学院が発足するというのはおかしい」という強い意見が出た。 6月15日付で日本経済新聞に,前日の教学準備会議で議題となった大学院構想の 一部が発表になっていることを委員が知り,なぜ先に設置審に知らせないのか, という怒り表明されるのと同時に, 大学院の内容にもつながりがあり,ここまで出来ているのなら いいのではないか,という意見が交錯した。 しかし長時間に渡る議論の末,最終的にはいくつかの「留意事項」をつける形で, 審議を終了したらしい。


まだまだ不明なところが多いのだが,ようするに謎の「上の委員会」が 最終決定をしてしまったようなのだ。そして、そこでは,大学の認可権を 文部科学省にとどめておくためには,不認可というような決定をなるべく せずにおくべきだという「政治的判断」が働いたということらしい。 6月15日の設置審で,前日の14日に実質的に早期認可をするという書類が, 東京都大学管理本部に送付されてしまっていたという事実が, どのように捉えられたのかは分かっていない。

このような今回の設置審の判断に関して、ある専門家のは次のような状況分析 をしている。
○7月認可を承認のうえで、何点か「留意事項」が付けられる模様である。ただし、 これに拘束力があるかどうかは不明。
○仮に就任承諾書がある範囲を超えて不提出の場合は、7月認可は無理になり、 計画の手直しを待って認可となる。現状を見る限り教員の不満は大きいことが明 らかなので、どうやら設置審はこの可能性も視野に入れているらしい。しかし、いず れにせよ、自分の主体的判断で認可を遅らせたり、却下したりという危ない橋を渡 ることは避けた。

この設置審の結果, 「就任承諾書」の重みが変ってきた。 設置審の援護射撃が無くなったから, 「新大学」が7月認可でまっしぐらに進む。 そうすると,それを阻止するのは「就任承諾書」を提出しないという 戦略しか残されていない。大量の不提出者が出て,実際の カリキュラムが組めないことが判明すれば,いかに 経済産業省が文部科学省に圧力をかけても,いかに 東京都の知事周辺や自民党が文部科学省に圧力をかけても, 認可はできなくなる。 冷静になってよく考えて欲しい。この「首大構想」は, 東京都の単なる横暴ではない。ただ,都立4大学教員の責任 とかいう話ではない。このような「高等教育の破壊」を許す ことは,日本の高等教育にたずさわる者の負けを意味する。 これをきっかけに全国の大学の改悪が大々的に進行する恐れが あることは,前にも言っただろう。 それを阻止する最後の砦が,「首都大学東京へ出す就任承諾書」 の拒否になってきたのだ。
 大学の執行部としては,大学人の生活を守るために,いかに 「首大」構想がムチャクチャでも,「就任承諾」をして大学を 引き継ぎたいという教員がいる限りにおいて,様式3を作成し, カリキュラムを作成し,来年度の入試問題の作成をするように 動くだろう。現実的解決策を模索するという意味では, 執行部の動きは当然のことだと思う。
 しかし,これは根本的なところで間違っている。 大げさな話だと思って片付けてしまう人もいるかもしれないが, 落ち着いてじっくり考えて欲しい。 大学管理本部は,最後までどんな理由があろうとも, 教育の質とか研究の重要性など考えずに530人という 教員定数を死守するだろう。最後まで,現4大学教員との 協議は拒否するだろう。最後まで,教授会の人事権 は認めないだろう。「都立4大学解体事件」 は,後世まで語り継がれることになるだろう。 そして,その話の最後に,「就任承諾書の戦い」が 記されるのだ。 いろいろ騒がれたけれど,結局,大部分の教員が提出して, 「首大」という世界に例を見ない「東京都の思い通りに動く 学問の自由も大学の自治も保障されない大学」ができてしまうか, 大量の不提出の教員が出て,「首大構想」が座礁するか, 歴史に刻まれることになる。その瀬戸際に今, われわれは立たされているのだ。

「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る

T-7   都立の現大学の助手に対しては,意思確認書 の提出を求められているということですが,何が問題なのですか?  次へ

ポーカス博士

助手は,文部科学省に対して就任承諾書を出す必要はないようだ。 その代りに,意思確認書を提出せよと大学管理本部は迫っている。 しかし,以下の4つの点が問題で,意思確認書を出せないと 考えている助手が相当数存在する。
 まず第一に問題となるのは,管理本部のやり方だ。 助手がどのような仕事をしているのかを把握するために,これまで やったことと言えば,理学部の数人の助手に話を訊いた程度らしい。 その後,管理本部は, 2004年1月末に「助手に関する実態・意向調査」を実施したのだが, その調査方法・調査内容は,助手の日頃の業務内容を正確に把握で きるとは思えないものだった。 本当に助手の仕事を把握したいのなら,各学部へ出かけていき, そこで実際に仕事内容を確かめるべきだ。このような作業を大学管理本部は 怠った
 第二に,2004年1月末の「新大学における研究員(助手)の任用制度について 」と題した文書の中で,助手とは何の話し合いもないまま, 「研究員は任期制・年俸制」であると決めつけている。
 第三に,理工系の助手に対して専門分野とは異なる「再配置」を行う 可能性を示唆している。 2004年5月20日の経営準備室運営会議では,「研究員の目標数等について」 という項目があり,そこでは「首大」の「研究員の再配置」が実際に 提案されている。都立大学・短期大学組合の 「助手再配置問題に関する緊急要求」(pdf)でも明確に述べられているが, この時の「研究員」の目標数の設定は,現実をふまえていない 機械的な割り振りでしかない。教員と「研究員」の比率を 一律に3つに分類し,(1) 自然科学(数理科学を除く)は,2:1, (2) 保健科学と心理学は3:1,(3) 人文科学や社会科学などは6:1 とした。 2004年5月13日の「人事給与制度説明会」での質疑(P-17) で,管理本部は,専門分野を越えた再配置があるとしているが, それでは困るという意見が出たが, 「なるべくそういうことのないようにしたい, 常識(!)を越えて再配置をすることはない」 と答えていた。しかし5月20日の「『研究員』の目標数・仮設定数について(案)」 をみると,本当に機械的に割り振られている。以下,再配置を検討する分野だけ を引用する。仮設定数にある数字が現状の助手の数,そしてそれを備考欄にある 分配率で分配すると目標数になる。その結果が欠員数。たとえば生命科学は, 欠員:-7となっているので,7人減らされる。根拠はといえば,教員と助手の 比率が,上で決めたように 2:1 だから。「待ってくれ! 実際にこれだけ 必要なんだ!」といっても,そんなことに管理本部は耳をかさない。 「平等に方針を立てて再配分しました」というだろう。 「生命科学」の7人はどこに再配分されるか,と問われれば, 欠員の欄がプラスになっているところ(マイナスの符合がついていないところ) だ。「どーれ,ちゃんと常識を越えない再配置ができるかな?」。 誰でも分かる結果だろう。 実態を見極めずに,ただ機械的に割り振ろうとするからこのようになってしまう。 だから,時間をかけて実態調査をし,きちんと協議をすべきなのだ!

  専任教員 「研究員」(助手) 備考
  目標数 目標数 仮設定数 欠員
(都市教養)数理科学 22 4 9 -5 6:1
(都市教養)物理学 22 11 16 -5 2:1
(都市教養)化学 22 11 13 -2 2:1
(都市教養)生命科学 23 12 19 -7 2:1
(都市教養)電気電子工学 15 8 7 1 2:1
(都市教養)機械工学 15 8 7 1 2:1
(都市環境)地理環境 11 6 8 -2 2:1
(都市環境)都市基盤環境 15 8 14 -6 2:1
(都市環境)建築都市 22 11 13 -2 2:1
(都市環境)材料化学 18 9 13 -4 2:1
(システムデザイン)ヒューマンメカトロ 18 9 9 0 2:1
(システムデザイン)情報通信システム 14 7 8 -1 2:1
(システムデザイン)航空宇宙システム 14 7 0 7 2:1
(システムデザイン)経営システム 14 7 0 7 2:1

 第四に文系助手だが,管理本部の以前の文書では「別途検討」 と書いてあったが,結局いきなり比率6:1というのを見せられて, これ以上いるところは削ると言い出した。実態をとても把握できそうも ないアンケートを行って,それで終りにしてしまった。
 助手に関しては,さまざまな偏見がある。先日の「財界」7月号 に載った高橋宏理事長予定者が「助手はブルーカラーだ」, 「試験の監督や採点などの雑務をやっている」, 「理学部の助手は一生試験管を洗っている」といった噂話をまこと しやかに信じているようだ。喝だ! そんな噂を 信じるようでは,大学の理事長はできん! まず,理系の助手と 言っても分野によってやっていることは様々なのだ。化学だったら, 当然危険な物質も扱うから,このようなところの助手が削減されたら, 危険物の取り扱いができなくなって,そのうち大事故を起こすかも しれん。生命科学では,おそらく数多くの生物の維持管理を しているはずだが,助手が削減されたら,それらのめんどうを みることができなくなるかもしれん。実態を調査すれば, すぐに分かることなのに。研究者としても,理系の助手は 博士号を持つ独立した存在であることが多い。教授の言うことを ただ黙ってこなしているような職業ではない! 文系の助手は, 「雑用しかやっていないんだろう」という偏見と戦っている。 基本的には、「資料や図書の整理」という極めて重要な 仕事を引き受け,学生・院生や教員に情報提供をしてくれる 存在なのだ。今のままの計画で文系助手が削減されたら, 文系の資料や図書の管理者は激減し, 維持管理が不可能になってしまうだろう 。研究者として将来のある人々を冷遇するようなことだけは, やめて欲しいものだ。

「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る

T-8   2004年6月24日の人文学部教授会では, 就任承諾書を巡ってどんな議論があったのですか?  次へ

ポーカス博士

都立大人文学部教授会では,6月17日都立大人文学部教授会が要求した3点を 記した管理本部宛の文書と, それに対しての管理本部からの回答を南雲学部長がまとめたもの (「南雲メモ」)がまず配られ, この一週間の状況説明が行われた。 南雲学部長は,2回管理本部へ出向き,教学関係の参事や経営準備室関係の参事 を交えて長時間に渡る議論をしたようだ。その結果が「南雲メモ」なのだが, (1)の大学院問題に関しては,ある程度踏み込んだ回答が得られたが, (2)の教員の身分・雇用形態,(3)の教授会に人事権を与えよ, の2つに関してはほぼゼロ回答と言える(学部長は、(3)に関しては, 一定の前進があった,という積極的評価だったが,わしにはそのように思えなかっ た)。
(2) に関する問題の箇所は,教授会でも指摘されたことだが,まず

任期制・年俸制の内容については、就任承諾書提出後も引き続き話し合いを 行い、建設的な意見については取り入れていきたい。

という部分だ。これは,「建設的な意見」だと管理本部が思ったことは取り入れて いくつもりはあるけれど,そうでない意見,すなわち「管理本部の 構想にとって都合が悪そう」な意見は取り入れるつもりはないと確認してい るだけだ。(3) に関しての解釈の相違は,

 なお、教授会は「教員の採用及び選考等に関する方針に関わる事項」につ いて、意見を申し述べることができる仕組みとしていく。

の部分だ。教授会が意見を申し述べることができるというのは, いったい誰に対して(どのような組織に対して)なのかがまず不明であ る。そして、「意見は言ってもいいけど,そんな意見には従わないからね」 と言われたら一貫の終り。この最後の一行で,教授会の権限をある程度 取り戻したと考えるのは,あまりにも甘すぎる。

 「南雲メモ」の冒頭に「4大学教員の皆様へ」という文章が管理本部から出ると 予告されていたため,急遽,教授会を一次中止し, すでにその文書が大学に送付されて来ているかを 確認することになった。なにしろ, 2004年4月8日にも「各大学教職員の皆様へ」 という文書が配布され,その前に配られていた 「総長メモ」(3/29日付, 3/30日配布)と内容があまりに 異なっていた,という事件があったからな。 管理本部からの文章がすでに届いていることが確認されたので,コピーされて 教授会に配布された。

その結果,2004年6月24日の「4大学教員の皆様へ」 という文書と,「南雲メモ」は大筋において 一致することを確認されたが、3点の要求項目の内,教員の身分・雇用に関す る問題と教授会の人事権に対しては,十分な回答が得られなかったという意見が 大勢を占めた。また,「教授会権限」問題に関する表現にも,納得できないとい う意見が相次いだ。ちょっと比較してみよう。

なお、教授会は「教員の採用及び選考等に関する方針に関わる事項」につ いて、意見を申し述べることができる仕組みとしていく。(南雲メモ, 6/24)
なお、教授会は、教員の採用及び選考に関する方針・計画に係わる事項について 意見を申し述べることができます。(大学管理本部「4大学教員の皆様へ」(6/24))

違いが分かるかな?
(1) 南雲メモでは,括弧があるが,管理本部文書には括弧がない
(2) 南雲メモでは,「意見を申し述べることができる仕組みとしていく」と書いてある部分が, 管理本部文書では,「意見を申し述べることができます」となっている。

この2つの違いは,実は決定的なのだ。
南雲メモの括弧は,学則の特定の部分を引用している,すなわち,学則の変更を 迫るものだが,管理本部文書では,括弧からはずすことによって,学則とは関係 ない一般的言明をしていることになる(言語学用語では,南雲メモでは, メタ言語表現が使われているのに対して,管理本部文書には,それが無い, ということになる)。だから,管理本部は「学則とは関係ないからね」 と暗に示していることになる。 この部分と明らかに関係しているのが南雲メモの「仕組みとしていく」 のところだ。「仕組み」とは,すなわち学則であるが,管理本部文書では, みごとにその「仕組み」の部分がカットされている

学則に関する議論は,大学管理本部が6月21日を締め切りとしてめずらしく意見を 募っていたので,人文学部としても 新大学「学則(案)」に関する意見(2004年6月17日) をまとめて送付している。7月2日までに,管理本部は都立の現4大学から の意見を集約して就任承諾書と共に,学則案を 文部科学省に提出することになっているが,どの程度反映されるのかは 極めて怪しい。自分達で都合のいい部分だけをつまみ食いする, というのがこれまでの管理本部流だからな。

人文学部執行部は,ぎりぎりまでできるところまで交渉した,と宣言した。 そして,就任承諾書を取りまとめる方向で動き始めた。
 就任承諾書を出すか出さないかの結論は,個人と専攻単位で考え2〜3日の内に結 論がでると思われるが,就任承諾書を出さない教員のほうが少数派になりそうだ。 なぜかって? そりゃあ, 就任承諾書を出さないと決心することが,おおき なリスクを伴うからだ。就任承諾書を出さずに,都立大教員として残る ことは,さっき言ったように,5年間しか身分保障がない。その間に,流出し 他大学へ移るしかない(おっと,「途中から『首大』にやっぱり行きます」 というのも<あり>だ,と誰かが言っていた気もするが,今でも有効なのか どうか定かではない)。 就任承諾書を出さずに,都立大教員として残る場 合の,教育・研究環境がまったく示されていないから,非常に不安だ。だが, 就任承諾書を出しても,任期制・年俸制を選択すると准教授も教授も5年任 期だから同じように解雇の不安を抱えることになる。 わしを含めた一部の教員は,今回の「就任承諾書闘争」が一つの大きな 節目だったという実感を持っている。「一致団結して抵抗する」最後の場だった のかもしれない。もっと多くの学部で,団結して行動してくれていたら, 事態は変っていたかもしれないが...

「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る

T-9   2004年6月29日の毎日新聞に 「首都大、来月末に認可へ 大部分の教員、承諾書提出の意向」という記事がで ていましたが,本当ですか?  次へ

ポーカス博士

ああ,ほぼ正しい。まずは,その記事の内容から見ておこう。


 都が都立4大学を統廃合して来春開学を目指している「首都大学東京」の設 立準備問題で、新大学教員への「就任承諾書」の提出を保留していた都立大人 文学部の教員の大部分が承諾書を提出する意向であることが28日、分かった。 新大学の設置認可に必要な最低限の教員数が確保されることになり、首大は7 月末認可が濃厚になった。

 同学部教授会は24日、承諾書提出を専攻ごとに議論し、個々人が判断する ことを決めた。この結果、講師以上の124人のうち、最終的に提出しない意向 を固めたのは約20人にとどまった。
 関係者によると、都側が文書で「大学院を重視する方向」などを明言したこ とから、提出に応じる教員が増えたという。


わしの聞いた限りにおいては,人文の教員で就任承諾書を出さなかったのは22人。 22÷124×100= で,およそ 17.7% ということだ。昨年の8・1事件の影響もあって, 昨年度人文を去った教員が確か15人(もともと139人いたはず)。そうすると、 すでに37人が「首大」に行かないという決断を下したとも解釈できる。 これは27%,およそ1/4だな。これはある意味で,管理本部の思うつぼだ。 人文学部の人減らしができたわけだからな。 でも,本当にこれが管理本部の思うつぼかどうか,2つの点で疑わしい
 流出した教員の中には,確かに定年退職した教員もいるが, 本当に優秀な教員もかなり含まれていた。そして,今回の就任承諾書を 出さなかった教員の中にも,すでに流出が決まっている教員もいる。 今回の「大学改悪」騒ぎは, 優秀な教員をどんどん失うという結果になっているというのが,まず第一の ポイントだ。じゃあ,新しい教員を公募すればよい,というのが従来の 大学のやり方だが,今もって人文学部では教員の充足は行われていない。 それに,「首大」の近頃行われた公募にも,多くのポストで一桁の研究者しか応募して こなかった。ゼロのケースもあったらしい。これは,はっきり言って, 「首大」の将来は真っ暗だということだ。
 第二に,就任承諾書を提出した教員でも, 6月27日教授会にて決議された 留保条件,「身分・ 雇用に関わる諸条件が未確定な段階での就任承諾書提出について」と 要望「学則上の教員人事に関する教授会権限の記載について」 にあるように,全面賛成して就任承諾書を出したというよりは, 「自分達の専攻をなんとかして残したい」という一心で出したのであって, この決議の2点が解決しなかったら,法人への就任承諾書を 書かない,という教員もいる。組合の新聞「手から手へ」2292号に 書いてあるように:


そのため、たとえ現時点で就任承諾書を出すことがあっても(あるいは出さない 場合でも)、それは身分・雇用条件が不明な段階での暫定的判断であり, 最終的な判断をこの先に行う権利を保留することを教授会として決議し、 大学管理本部及び文科省・設置審に示すことを決定しました。

日本語の表現がちょっと変。 「最終的な判断この先に行う権利保留すること教授会として決議し、」
というのは, 「最終的な判断をこの先に行うという権利を保留することを教授会として決議し、」 とすると少しましになるが,ちょっと1つの文に情報を詰め込みすぎたようだ。


ようするに,今回の管理本部からの「4大学の皆様へ」という文書は回答になっ ていない,という認識は,これらの文書ではっきり示したわけだ。 そして,たとえ今回就任承諾書を出したとしても,この先に最終的判断を保留し たにすぎないと主張している。 2004年12月に予定されている「新構想の大学院」へ の「就任承諾書」も待っているから,まだまだ就任拒否の機会は残されている と考えられる。就任承諾書を出した教員も,まだ抵抗の意思を捨ててはいない。

「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る

T-10   2004年7月3日の毎日新聞に就任承諾書を 「4大学に在籍する対象者510人のうち、485人が提出」した となっていましたが,ちょっと変じゃないですか?  次へ

ポーカス博士

そうだ,よく気がついたな。大学管理本部の恣意的な数字の出し方が, これまでどれだけゆがめられたものだったかを思い出せば,疑い深くなるのは当 然じゃ。7月3日に朝日新聞や産経新聞でも,ほぼ同様の記事が掲載されている。 いつもながら,マスコミを巧みに利用した情報操作だと感じる。 まずは,毎日新聞の記事を見ておこう。


 「首都大学東京」の設立準備問題で、都は2日、新大学教員への「就任承諾書」 を文部科学省の大学設置室に提出した。都大学管理本部によると、現在の都立 4大学に在籍する対象者510人のうち、485人が提出に応じた。この結果、4月 末に認可申請した通りの学部・コースを開設するための教員数が確保されたとい う。
 一方、都立大学人文学部教授会は「現時点での就任承諾書提出の可否は、重 大事項が未確定な段階での暫定的判断であり、今後明確にされる身分・雇用に 関する条件次第で異なる最終的判断を行う権利を留保する」とする見解をとりまと め、場合によっては就任を拒否する構えをみせている。


まず,この記事の内容が間違ったものではないことを,記者さんの名誉にかけて ことわっておこう。「4大学に在籍する対象者510人」というところ に,裏がある。まずは,4大学教員の数を確認してみると, 教職員組合弁護団の2003年の報告時点では, 都立大が420人,科学技術大学が56人,保健科学大学が66人,都立短大が59人で, 合計601人となる。そして,この601名を,「首大」では何がなんでも 教員数を合計530人に減らそうとしている(69人減)。 そうすると「4大学に在籍する対象者510人」というのは, すでに4大学に在籍する対象者が人員削減の目標数より下回っている ではないか。注1)

ここに挙げた数字で計算すると,510-485=25となり,就任承諾書を 提出しなかった教員数があたかも25人(たったの5%)のように感じる。 朝日新聞は,「95%提出」として実際に報道している。 しかし,本当は,都立大人文学部だけで22人提出していないのだから, それ以外からは,たった3人しか非提出者はいなかったことになるが,そうでは ない。人文以外でも,経済,法学,理学から就任承諾書非提出者がでていると 聞いている。

この数字の差は,(1) 今年度すでに流出することが決まっている教員 を除いてあること,さらに(2) 「あんなにひどい 大学には行けない」と辞職する決断を下した教員も入っていないのだ。 組合弁護団の数字は,2003年度に使われたので,おそらくその前年度, すなわち8・1事件前の数字だ。 601-510=91,つまり4大学教員合計は, 2年前の数字と比べると91人減,だ。2年間で,およそ 100人の教員が都立4大学から出ていったことになる。注2) 定年退職した教員ももちろんこの数には入っているが, それにしても驚くべき数字だ。 これからも,まだ就任拒否をする場面が出てくることは, さっきT-9でも言ったばかりだが, 強引な任期制・年俸制の導入,教授会からの人事権剥奪は, この先も教員流出を止めることができない事態を引き起こすだろう。 この2つのポイントは,教員公募を徹底的に魅力の ないものにしているのは明らかで,「ごく僅かな応募」と 「あまり学会でも評判のよくない」教員を引きつけるのが 関の山だろう。先日も,「えっ,あの人が首大に決まったの?」 という驚きの声を耳にした。まあ,管理本部は,教員の研究や 教育の本当の能力なんて興味がないから,人がとにかく集まって「新大学」 が知事の公約通り発足すればいいのだろう。ひどい話だ。

注1 その後の調べで,2003年10月に管理本部が刊行した事業概要に よると,昨年8月1日現在の教員数は、 都立大 421名,科技大 52名,保科大 66名,短大 59名で, 合計 598名であったことが判明。上の数字との違いは,都立大 +1, 科技大  ー4。管理本部総務課『平成15年度ポケットデー タ』参照。

注2 より正確な都立大からの教員流出数の試算に関しては, 「25名だけが「首大」への就任拒否をしたわけではない: 都立大学文系3学部における人材流出の実態」 を参照。

「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る

T-11   就任承諾書を出さなかった大学教員 は,今の都立大の学生にとって教育上の責任放棄になりませんか?

ポーカス博士

まあちょっと冷静になって考えて欲しい。まず,就任承諾書を出さなかった 教員には,(1) 来年4月から他大学へ移る教員,(2) 来年3月に辞職する 教員,(3) 2010年まで存続予定の都立大教員として残り,その期間に 転出することを考えている教員,(4) 2010年まで存続予定の都立大教員として残り, その間/その後に退職することを考えている教員,の4つの タイプを想定することができる。
 (4)のタイプの教員は,都立大生の教育を放棄せずに立派だと 考えるかもしれないが,実際にはほとんどあり得ないケースだ。 ちょうど2010年に定年退職というのなら別だが,若手の教員で 2009年にちょうど他大学へ移ることができるなんて,そんなに 都合良くことが運ぶことは普通ありえない。そうすると, 残りの(1)〜(3)の教員は,遅かれ早かれ転出するという点では, 都立大生に対しての教育上の責任放棄のように見えるかもしれない。 実際に,管理本部や都議会議員の一部,さらに文部科学省の 役人の一部にもそのような考えを表明している者がいるらしい。 学生を置き去りにして他大学へ移るというと,一般に教員が 無責任というように目に写るらしいが,今回の場合は全く事情が異なる。 「首大非就任者の会」のホームページ で,荻野綱男氏がその点を明確に述べている。


 現在在籍する学生に対しては、辞職はある意味で責任放棄であると思いますが、 こういう行動をすることに関しては、私に責任があるというよりも、「大学改革」 (私からみれば大学破壊)を強引に進めた東京都に責任があるというべきでしょ う。東京都が今回のような構想を進めなければ、当然、私は東京都立大学を辞める ことなどなかったのです。
 教員個々人は自分の判断で大学を辞める権利を持っています。教員が辞めたあと をカバーして学生に対する教育責任を果たすべきなのは、大学側(さらには東京都 側)です。したがって、辞職する教員に対して教育責任を追及することはできない と考えます。


そう,就任承諾書を出さずに遅かれ早かれ転出を考えている教員は, 教育の責任放棄をしたいからそう計画しているのではない。今回のような 「東京都による大学破壊」がなかったら,そのような転出を考えなかっ たという教員が大部分だろう。 実際に,「本当だったら定年まで都立大で研究・教育を続けたかった」 と語る「首大非就任者」は多いのだ。 昨年の8月1日以来,都立大の教員は多かれ少なか れ強引な大学管理本部のやり方に翻弄されてきた。そして気がつくと, 人文学部のように教員定数を半数以下にされ,専攻を失ってしまうところがある。 COEを獲得した経済の研究グループでさえ,気がつくと人員を削減されて しまう。自分達の研究とは関係ない学科名、学部名をつけられてしまった り,不本意な組織に配属されてしまった教員もいる。 都市研究所のように大学院組織だったところが,学部組織の どこかの片隅に追いやられてしまったケースもある。 都立大の予算が,「首大」の予算配分方式 の前倒しと称して実行されてしまった。
 すべてこの調子で,まったく協議も話し合いもあったもんじゃあない。 この状況で,黙って耐えて,行きたくない 「首大」へ行く義務はまったくない。繰り返して言うが,就任承諾書を 提出しなかった教員は,このような異常な東京都の干渉と大学破壊が なければ,教育責任をまっとうする気が十分にあったのだ。 責任は,明らかに,強引に,早急に,自分達のために奉仕する 大学を作ろうとしている東京都にある。 責任ある教育をサポートする ために全力を尽くすのが,本来の設置者責任だろう。 教員が流出しないように, よい研究環境を保障すること,よい学生が集まってくるような設備や環境を整え ること, 学生が余裕をもって学習,研究できるような基本的条件を整えること, このような視点が今回の「新大学構想」にはすべて欠ているのだ。

優秀な教員が流出したら,大学側はきちんと人員補充をする責任がある。 都立の大学を管理している東京都大学管理本部が,例えば人文学部の場合, その補充を全くしないというのは,教育責任の放棄ではないか! これでは,人文学部の学生に対しての学習環境を保障していることには ならないだろう。 就任承諾書を出さない教員に教育放棄だと非難する前に, 誰がそのような行動を誘発させたのかを考えて欲しい。 もともとの原因を作った人が責められるべきなのだ。それは,すなわち大学管理 本部であり,石原都知事であり,そもそもこのような大学構想を東京で実現でき ると信じ込んで学長になることを引き受けた西澤潤一氏にあることは明白だろう。

「やさしいFAQ」の先頭へ戻る このページの先頭へ戻る