都立大の危機 --- やさしいFAQ

L.   「同意書」,「意思確認書」に関する質問


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L-1  ところでこの間,毎日新聞の記事を読んだら 「同意書」とかの話が出ていたんだけど,あれって結局なんなんですか?  次へ

ポーカス博士

2003年9月25日付けで新大学設立本部長から4つの都立の大学の教員に対して 出された書類じゃ。「同意書」というのはな,「ただ同意した」という意志を 示すだけならそれで終わってしまうのだが,今回問題になっているのは, (1) 新大学でどこに各教員が配置されるかが一方的に指定されている 点,それから (2) 新大学に関する今後の詳細設計に参加する同意を求めている ところ,さらに 詳細設計の内容は,特別な場合を除いて口外しないこと がかかれていて,署名して送り返すようになっているのじゃ。

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L-2  ふうん,それで「同意書」の何がいったい 問題なんですか?  次へ

ポーカス博士

「新しい大学の構想」は,ごく限られたメンバー だけが入っている教学準備委員が学部構成員の意見とは関係なく,大学管理本部 指導のもとで現在でも修正が加えられておる。それでな,「新しい大学の構想」 は突然都立大の教員に何の相談もなく押しつけられたという話はすでにしたが, 今度は「あなたは XX 学部/センター に配置されましたよ」 と書いてある書類がまわってきたのじゃ。しかも,協力します, 新しい大学に関することは秘密として口外しませんと約束させる ものなのだ。しかしな,これは法的に見てもおかしな文書じゃ。教員の配置を 決めるのは,最終的に「辞令」であろう。また,新しい大学の構想を口外するな というのも,「これからも密室で議論するよ」と言っているのに 等しいし,「協力しないものには言っちゃだめ」と宣言しているからじゃ。 このようなことを法的に有効な文書として位置づけるのは極めておかしい。

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L-3  なるほど,やっと分かってきた。 例えば自分が「言語学」を専門にする教員だったとして,受け取った同意書 に「**センター」へ配属するから協力してくれ,でもこのことは他の人に いわないでくれ,と言われたようなものですね。
それで都立大の先生は,本当に「同意書」を提出しなかったんですか?  次へ

ポーカス博士

これはすでに報道されているように,都立大の教員は学部長預かりという形で 第一回目は提出しなかったはずじゃ。本当に誰も提出していないかどうかを確かめるすべは ないがな。科学技術大学,保健科学大学,短期大学の全教員は「同意書」を 提出したらしい。ただし,科学技術大学でも実のところ,提出され た多くの同意書は,文言を変更,削除等しており,実質的な「不同意書」となっ ているらしい。
 10月14日頃に,今度は大学の事務局長名で第二回目の「同意書」が自宅に郵送されたようじゃ。 10月16日の「総長と学部長による説明会」では,残念ながら一部の学部では, 「同意書」の提出は個人まかせにされたことが判明した。さらに,文言を書き換えて提出 すると言い出した学部もあるが,大学管理本部は, 本文を書き換えたものを受け取らないと宣言しているとかいう噂もある。
また,回答の期限が10月15日だそうで,しかも一部の教員の話では,「配置案」 も入っていないのに,「同意」して「署名」しろと書いてあるそうだ。これじゃあ, 白紙委任状と同じだな,白紙の上に印を押して,どうにでもして下さいというのが 東京都というお役所のやることなのだろうか? 気の弱いわしは, あの封筒がパンドラの箱のようで封筒はさっさと学部長預りにしてしもうた。
11月3日の総長の説明会の席上で教養部長が明らかにした数字によると, 10月23日の時点で同意書を提出した教員は,人文学部0名,法学部3名, 経済学部13名,理学部0名,工学部68名,都市研0名だそうだ。 大学管理本部では都立大の先生も非常に多くの先生達が同意書をすでに 提出しているとか言っているらしいが,420名の内の84人じゃ。20%の教員が 提出したということだ。その中には,工学部のように部分的に内容を 書き換えて提出した者もいる。管理本部の言っていることは,いちいち 確認するまでは信用できないという1つの例じゃ。

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L-4  こんどは,「意思確認書」が出るってほんとうですか?  次へ

ポーカス博士

ああ,もうしばらく前から話題になっていた。Yomiuri Weekly(2004年2月2日号, P.81)には,管理本部の大村参事の言葉として次のように書いてあった。


「設置認可申請を前に、新カリキュラムに沿った教員配置に伴い、 各教員から就任承諾書を出してもらう。承諾書を出されない先生は、 新しい大学には行かれないと判断せざるを得ない。」


ここで気をつけねばならないのは,文部科学省に提出する「就任承諾書」と, 管理本部が今回郵送する「意思確認書」は別物だということだ。 都立大・短大教職員組合の呼びかけ(pdfファイル)にあるように, (1) 都立4大学の統合は,移行型であり,特別の辞令が発せられない限り, 全員新大学に移行するはず(地方独立行政法人法による)。
(2) 新大学の雇用・勤務条件・配置が明確になっていない時点で, 意思確認をするのはおかしい。
それにもかかわらず管理本部がなんで意思確認を求めるかというのは, 2004年2月10日の読売新聞夕刊に書いてある。


今回の「確認書」は、就任承諾書が何通集まるかを下調べする意味があり、 確認書が少なければ、新規募集で補う必要が出てくる。
 都が、二段構えで慎重に意思確認をする背景には、過去の”失敗”がある。 新大学に先駆け、今年4月に開講する都立大学・法科大学院(ロースクール) の教員採用で、就任承諾書を出した教員4人が、都の改革方針への反発から、 その後、相次ぎ辞職願を提出。その結果、大学院は設置基準に満たなくなり、 入試日程の見直しを余儀なくされた。文科省からは再発防止を強く求められた という。


ということで,ロースクールの時のようなドジは踏みたくない大学管理本部が, 再び就任承諾書の前段階のような確認書を求めるのは, 法的根拠がないもので,返答する必要はないものだ。
 文部科学省がもとめている再発防止とは, 意思確認書を出すことで教員を縛ることではない。管理本部と大学との間で, 良好な意思疎通のできる場を回復して欲しいということなのだ。 そんなことも分からずに, ふたたび焦ってこのような意思確認書の提出を迫るというのは,南雲人文学部長 が読売の記事の中で言っているように「いたずらに教員側との溝を深めるだけ」 だ。
すでに,「4大学声明呼びかけ人会」から, しっかりと考えて行動を決めることが大切との呼びかけ(2004年2月9日)が回ってきてい るし,「学生・院生連絡会」(2004年2月9日)からも, 先日出された評議会声明「開かれた協議を行う新たな体制の再構築」を実現すべ く,尽力して下さいという要望書が来ている。 いずれも,単純に「意思確認書」を出すなと要請しているわけではないが, 今,「意思確認書」を出してしまったら,どんな労働条件を後からつけられるか も分からないし,どこに配置されるかも未確定なままハンコを押してしまう状態 になることは明らかだ。わしは,当然のことながら4大学で一致した行動が取れることを強く希望している。

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L-5  ポーカス先生のところにも「意思確認書」は来ましたか?  次へ

ポーカス博士

ああ,きたよ。配達記録郵便でね。これが説明の文書これが意思確認書じゃ。
 前回の同意書の時のような,問題となる文章をつけないように気をつけたよう じゃが,これでも十分問題がある。ちょっと解説してみようか。


皆様方におかれましては、日頃から新大学設立に向けてご協力感謝しております。

  →→→ こちらからの提案は次々と切り捨て,管理本部が勝手に案を作っていて, なんで感謝されるの? 一部の賛成派の先生のことを言っているのかな?

 昨年の8月に新大学の理念や基本的なフレームをお示しして以来、 教学準備会委員会及びその下に設置された作業チームにおいて教学的な内容の実施計画に取り組んでいただき、 授業科目等の詳細が固まりつつあります。

  →→→ 作業チームがあるなんて,2004年2月5日になるまで 知りませんでした。「授業科目等の詳細が固まりつつあります」と言いますが, この仕事は今,締切日をつけて教員にやらせようとしている仕事でしょ? これまでも,授業科目は,何回も作ってきたんですが,あれはどうなっちゃった んですか? 河合塾案に合っていない,とでも?

また、過日の第5回教学準備委員会においては、入試、単位バンク、新分野など、 目的別の部会(部会長:学内委員)の中間報告が行われ、 新大学の教育課程の枠組み及び基本方針の方向性を決定するに至りました。 今後、各位の積極的なご意見を汲み上げつつ、早急に肉付けを行ってまいります。

  →→→「新大学の教育課程の枠組み及び 基本方針の方向性を決定するに至りました。」というのは,事実に反するのでは? 座長さんも,協議事項を一部協議はしたけれど, 結論にまでは至っていないと発言しませんでしたか? 決まっていないことに, 早急に肉付けしてもらっては困ります!

さらに2月6日、知事の記者会見の席上で、「首都大学東京」という新大学の名称が 決定・公表されました。

  →→→「首都大学東京」という名前は,将来の首都移転を視野 に入れた名前のようですね。さいたま市に首都が移れば「首都大学さいたま」に なる。知事は,首都移転反対論者だったように記憶していますが, この名前からすると,考えを変えたようですね。

皆様方のご努力に対して感謝するとともに、本年4月の本申請に向けて引き続き、ご 協力方お願い申し上げます。

  →→→前口上ですね。さて本論は?

さて、都立大学法科大学院につきましては、 専任教員として予定していた一部の教員が、 昨年6月1日付けで就任承諾書を提出していたにもかかわらず、 設置認可後に、退職届を提出してきたため、 学生募集と入学試験を延期するという、まことに残念な事態が生じました。 関係者の努力と迅速な対応により、 なんとか平成16年度開設が可能となりましたが、 受験を予定していた皆さんに多大なる迷惑をかけることになりました。

  →→→ なぜ,退職届を出したんでしょうか? それは,2003年12月の法学部教授の説明会でも明らかになったように, あまりにも強引な新大学構想の押し付けが原因ですよね? 週刊朝日にも出ていましたよ。 石原知事は,公の席上で「いやならやめたらいい!」 と繰り返し言っておられました。新大学になってからやめるのでは,遅いですよね。 だから都立大教員のうちに,やめたのではありませんか?

このため文部科学省からは、設置認可の申請にあたっては、 専任教員予定者から早期に確実な意思確認をとり、 法科大学院のような事態を二度と招くようなことのないよう対応されたいとの強い意見がありました。 そこで、本申請に必要な就任承諾書提出に先立って、今回、 首都大学東京の就任の意思確認を緊急に行わざるを得なくなりました。 時間的にも本調査は最終の意思確認とご理解いただき、 提出いただいた意志確認書は4月30日の本申請に向けての3月の運営委員会 (大学設置審議会)に必要な資料として集約し、 文部科学省に報告する予定(2月20頃)です。

  →→→「文部科学省からは、設置認可の申請にあたっては、 専任教員予定者から早期に確実な意思確認をとり、 法科大学院のような事態を二度と招くようなことのないよう対応されたいとの強い意見がありました」 という部分,本当ですか?
「専任教員予定者から早期に確実な意思確認をとる」ことを文部科学省側が, 口頭あるいは書面で求めてきましたか? すでに文部科学省は,管理本部に対して、 「文部科学省の意見に従ってこのような文書を出したという部分の文面の修正を求めて」おり, このような曖昧な内容によって, 予め就任承諾を求める法的根拠のないことも、指摘しているそうですね。


 文科省は10日になって都から確認書送付を告げられたといい、「事実誤認 だ」と訂正を求めた。都側は「新大学に残る見込みの教員数を示してほしいと 文科省に言われ、そのために都の判断で意思確認書を取ろうと考えた。誤解を 招かぬよう、ホームページで補足説明したい」としている。 (朝日新聞2月12日)

 「時間的にも本調査は最終の意思確認とご理解いただき」という部分も信じがた い発言です。 総長からのこの質問に対して,「就任承諾書を出す前の最終確認であり, 意思確認書をださない場合は, 就任承諾書も出さないというように理解している」と答えたそうですね。 あまりにも威嚇的な発言です。 意思確認=意確(イカク)だとお考えなのでしょうか?
 就任承諾書は, 大学認可申請の実務に用いる書類で, 教員の勤務条件を定めるものではないはずです。 文部科学省に出す「就任承諾書」は,4月30日の設置審提出(7月31日が最終締め切り) ではありませんか? 「意思確認書」は,2月20日頃の大学設置審議会の資料として出すだけですよね。 (「ほーら,今度はちゃんとみんな新大学に来るって約束してますよ」 と言いたいわけですね。)

勤務条件の詳細がわからなければ、 就任するか否か判断できないというご意見もあるでしょうが、 既にご提示している、「基本的に現状の給与水準を維持する」 「通常の教員としての能力を有し、 着実に実績をあげていれば特に問題を起こさない限り再任が認められる」 という骨格の案を前提に、これから理事長予定者、教学準備委員会座長、 各大学の総長・学長で構成する経営準備室において、 勤務条件等の詳細を決定していく考えです。

  →→→「勤務条件の詳細がわからなければ、 就任するか否か判断できない」というのは,管理本部も分かっているのですね。
「基本的に現状の給与水準を維持する」
「通常の教員としての能力を有し、 着実に実績をあげていれば特に問題を起こさない限り再任が認められる」
という骨格の案を前提にする,というのは公式の文書として存在するのでしょうか? 給与形態を旧制度と新制度という任期制に分けて, 新制度では基本給の半分しか保障しない,という案とは矛盾していますが, どちらが本当なんでしょうか?
「理事長予定者、教学準備委員会座長、 各大学の総長・学長で構成する経営準備室において、 勤務条件等の詳細を決定していく」というのですが, 経営準備室は2月13日に初めての会合を持つとか。 いったい,雇用条件はいつになったら決まるのでしょう?

今後開学に向けて準備を進める上で、東京都といたしましては、 都民をはじめとする将来の受験生の皆様の期待を裏切らない万全の措置を採らざるを得ませんので、 事情をご賢察の上、 ご協力賜りますようお願い致します。

  →→→やはりね,都民と将来の受験生が気になるんですね。 管理本部は,現在の大学教員と学生を裏切ることは, きっと何とも思っていないんです。もっと,時間をかけて話し合いをしましょう, と言っているのに,時間がないから話し合いをしない,というのは, 間違っています。変な大学を作ってしまって,後で「教員はいつかない, 学生は集まらない」状態になってしまったらどうするんですか? もっとも5年もすれば,石原知事はいなくなり, 今の管理本部のお役人もいなくなって, 責任をとらなくて済むと思っているかもしれませんが, 残された大学の教員と学生は,どうしたらいいのでしょうか。 短時間で斬新な新しい大学構想を作り上げることを目指しても, 無意味です。長い時間をかけて信頼と実績を積み上げていって, 初めて大学は評価されるのです。


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L-6  ポーカス先生は「意思確認書」を出すんですか?  次へ

ポーカス博士

まさか! 保留だよ,保留。もう一度「意思確認書」 を見てごらん。どこにも私の名前は書いてないだろう? 管理本部は,後になって「自分達が教員の勤務先を強制した訳ではない」 と言えるように,教員個人の名前が書いてないのじゃ。 その代りに,わしの場合は, 「エクステンションセンター」と勤務先を指定した紙を送付し, そこに本人の署名をさせることで, 教員の方で進んで勤務先を選択したかのように見せる書類を作らせるわけじゃ。 一種の念書で,後日の証拠としても使えるように考えてある。
 わしの場合,「エクステンションセンター」が行き先らしいが, E-5, E-6 それにXX-7で説明したが, 「エクステンションセンター」の組織はまったく白紙状態じゃ。 「エクステンションセンター」のセンター長はどうやって決めるのか? 「エクステンションセンター」は,大学の中の組織として「センター」扱いにな るのか?(学部以下という扱いで,教育や研究において不利になることはない か?) 「エクステンションセンター」の場所は特定の所(特定の建物)に確保されるのか? 「エクステンションセンター」の教員の研究環境は, どのように保障されるのか?(研究費は? 継続図書の購入は? 研究室は? 研究設備は維持できるのか? 助手はつくのか? 職員はつくのか?) 「エクステンションセンター」の教員は,どの程度, 都民のための「カルチャーセンターの授業」をさせられるのか? 「エクステンションセンター」の教員は, 大学院の授業の兼担ができるとしているが,学部の授業はできないのか? 「エクステンションセンター」の教員は, 基礎教育センターでの授業も協力するとあるが, いったいどれだけの負担をさせられるのか?
 考えれば考えるほど,何にも決まっていない組織で, 「そこに行きます」という意思を示すことがどんなに危ないことか, 念書というより「白紙委任状」のような怖さがある。
 ただし,大学には,今とそれほど変わらないと思える教員もいるだろう。 ようするに,学部や学科の名前が変わっても, 専攻としてちゃんと学部の中に自分の専門が位置づけられている場合じゃ。 そのような人達にとって,「意思確認書」を出すことは, 「新大学」へ行くことの第一ステップとしてまったく気にならないかもしれない。 しかしな, 今回の「新大学」が専門学校のような教育組織であることが明らかになってきた現在, 「新大学」で研究環境が十分に保障がされるとは思えないことを思い出して欲しい。 一方では, 研究業績によって, 給与も上下したり昇任にも関わるとして締め付けておきながら, 現在の研究環境の保障,より良い研究環境の提供といった側面を一切考慮しないようでは, 優秀な研究者は次々と新大学を去っていくだろう (どうやら,本気でそれを望んでいるようじゃ)。 そして,その当然の帰結として,研究者をめざすような学生もいなくなる。 これが,大学管理本部の目指している「首都大学東京」の姿なのじゃ。

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L-7   それで管理本部は,「意思確認書」に書かれていた文部科学省に関する部分を,ホームページで訂正したんですか?  次へ

ポーカス博士

いや,訂正などしておらん!
管理本部が2004年2月12日に追加した説明は, 意思確認書送付の趣旨についてというタイトルで出された。 朝日新聞(2004年2月12日)の文面を確認しておくと:


ところが,この中で都は「文科省から早期に意思確認をとるよう強い意見があった」などと記述。
文科省が「こうした文書を取れとは言っていない」と訂正を求めたため、 都は近くホームページに異例の釈明を掲載することになった。


その結果が,「意思確認書送付の趣旨について」じゃが, 「文科省から早期に意思確認をとるよう強い意見があった」 という主張部分は撤回していない。これに対しては, すでに文科省側で不快感を表明している。
「意思確認書送付の趣旨について」という文書内容を確認しておこう。

以下の文書は、平成17年4月の開学に向けて、首都大学東京の設置準備を進めるために、 設置者である東京都が現都立4大学の教員(教授、助教授、講師) に向けて発送した手紙です。
 同時に、現大学の助手に対しても通知を出しています。

今回の文書が助手にも配られたということを公式に明らかにしている。 助手宛の文書の方が後から作られ, その内容は文科省に関する部分を急遽書き換えたと伝えられている。

 就任承諾にあたっての意思確認書をこの時期にとる趣旨は、平成16年4月の設置認可の 本申請を控えて、都として、3月の大学設置・学校法人審議会大学設置分科会運営委員会 に手続きの簡略化のため、教員審査の省略について付議する必要があり、その前 に首都大学東京に就任する教員体制を固める必要があると考えたためです。

簡単に言うと,設置審での手続き簡略化のためじゃ。 「教員審査の省略」というのは,新設大学の場合,認められない。 改組・転換であることを示すために, これだけの教員が移行予定です,と示したいのだ。 実際に文部科学省が求めているのは,参考となる「教員数」だけなのだが, これだけ「新大学」に対する不満が報道されている中で, 「数」以上のものを管理本部は示したいのだろう。

 背景としては、都立大学法科大学院が設置認可された直後、一部の教員の突然 の退職願提出により学生募集・入学試験を延期せざるを得ない事態に陥った件が あります。
 幸い、再審査を受け、平成16年4月に法科大学院を開設できることとなりましたが、も う二度と、社会や受験生等に多大なご迷惑をかける事態を招くことなく、都とし て責任をもって、首都大学東京を開学し、魅力ある教育を提供していきたいと考 えています。

あいかわらず,法科大学院騒動が原因だ,と言っておるが, その原因が「都立大教員との協議不足にある」 ことを今だに認識していない。この調子でやると, 意思確認書でイカクしても,就任承諾書を取っても, 法科大学院の場合以上に, 大量の教員が最終的な段階で辞任する可能性もあるかもしれない。 大恥じをかき,大学の開設が遅れるようなことにならないうちに, 正常な話し合いの場を作るべきじゃ。 今からでも, 一年遅らせて話し合いの場を作ると宣言すれば, 管理本部の株も随分上がるはずだ。

<参考>大学の設置認可申請について
 文部科学大臣に対する大学の設置認可申請書は、開設前年度の4月末までに提出するこ ととなっています。
 通常は、授業を担当する専任教員について資格審査が行われますが、一定の要 件を満たす場合、この教員審査が省略されることがあります。
 教員審査が省略されるかどうかは、文部科学大臣の諮問機関である大学設置・ 学校法人審議会の大学設置分科会運営委員会で審議が行われます。 この運営委員会は、ほぼ月に1回行われますが、東京都としては、 申請事務の関係から4月の設置認可申請に先立ち、 3月の運営委員会に諮ってもらえるよう書類を提出することを考えています。

だから大学の新設ではないのじゃ。管理本部は, 1月にも2月にも設置審で審議してもらえると思っていたのじゃ。 毎日新聞2004年2月12日に 首都大学東京:設置審が審議先送り 「案件ほかに多数」 というタイトルで出て,2月13日の知事会見では, 石原知事が「事実無根」とか否定していたが,事実なのだから, 知事も裁判に訴えることはないな。むしろ,「事実無根」と主張していることが, 虚偽の発言なのだから。3月の設置審で審議してもらうように, 都市教養学部の理念とか国際文化コースの部分を河合塾案と差し換えて, さらに意思確認書を沿えて,万事めでたし, となることを目指しているのは,管理本部自体が認めているではないか。

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L-8   「意思確認書」は,4つの都立の大学でどのように扱われるのでしょうか?  次へ

ポーカス博士

それが問題じゃ。この件に関しては,臨時評議会が開かれた。その結果を受けて, おそらくほとんどの都立大の学部では,2月12日に臨時教授会や教員懇談会が開 かれたはずじゃ。 科技大の学長は行方がしれなかったようだが, 教授会を開くように求める教員の活動が功を奏して,2月17日に臨時教授会が 開かれた。そこでは以下の2点が確認され,教授会記録に残されたとの ことだ。(東京都立大学・短期大学教職員組合「手から手へ」2263号)


(1) 意思確認書の提出は事後の就任意思撤回について拘束するものではない。
(2) 任期制・年俸制など未定の勤務条件についての同意を意味するわけではない。

「全体でまとめて行動する方がよい」という意識は, 新大学に反対する教員の共通する部分だ。しかし, どのようにしたら共同歩調が取れるか,が問題なのだ。
 1つの解決策として打ち出されたのが 総長預かり(pdf ファイル) じゃ。その扱いを含めて,総長に一任する形で預けてしまう。 そして, 2004年1月27日付けの「評議会声明」の要望が実現することを目標にする, という総長に一任する。この文書の上には,組合からの説明があるが, そこで「文部科学省が求めているのは,見込み数だけ」で 意思確認は求めていない(pdf ファイル) という情報がある。 従って,わしも総長預かりにすることにした。
 2つだけ付け加えておこう。1つは, 都立大・短大の弁護団の一人である尾林氏が2月11日付けで見解 を出している。これは大いに参考になる。
 もうひとつは、2月11日に都立大事務局長から回ってきた,以下のような文書じゃ。


教員各位

本部に問い合わせたところ、

  今回は、「首都大学東京」へ行くか行かないかの最終意思確認であり、確認 書を出さなければ「首都大学東京」へ行く意思がないものと判断し、今後、就任 承諾書についても提出を求めることはない。

との回答でした。
 4月の本申請に向けての日程が切迫していることは充分ご承知のことと思いま すが、以上の趣旨をふまえ、各々の先生方がご自分で判断していただきたいと考 えます。
  都立大学事務局長

さっき上(L-6)でも触れたように, <「首都大学東京」へ行くか行かないかの最終意思確認であり、確認 書を出さなければ「首都大学東京」へ行く意思がないものと判断し、今後、就任 承諾書についても提出を求めることはない。>という文言は,ほとんど脅しだな。 弁護士の尾林氏が明快に述べているように, 「現在準備されているのは、 現行都立4大学の移行型地方独立行政法人であるし、 既存の教員組織を基にする以上、 勤務条件について何らかの変更をもたらすことは法令上予定されていないものである。」 それにもかかわらず,意思確認書を出さなかったら, あたかも「新大学」という偽りの名前の改組・転換大学へ行けなくなると宣言してい る。つまりな:

◯ 意思確認書に法的根拠があるのか? --- NO!
◯ 管理本部の判断で(改組・転換による大学なのに)一方的に就任承諾書を求 めないようなことが法的にできるのか? --- NO!

弁護士の尾林氏のことばを借りれば, <少なくとも「意思確認書」は設置認可申請のために法的に必要な文書ではな いし、予備調査でありかつ最終であるの矛盾した記載もあり、 その法的意味は不明確であるというほかはない。強いて解釈すれば、 正式な意思表示に先立つアンケートであって、 かかるアンケートとしては最終のものである、ということであり、 それ以上の法的意味は見出しがたい。> という部分に注目して欲しい。

 しかしな, 「もし,あなたが X をしなかったら,あなたに Y を求めることはない。」 というのは,立派な威嚇(イカク)という発話行為(Speech Act)だ。 で,この事務総長の文書を見て怯える教員もでてくる。 現実主義的にこれまでの経過を見れば,管理本部はメチャクチャなことを連発し てやってきたではないか? 「これからだって,いかに違法でも,いかに非常識でも,連中はやるさ!」 と思ってしまう教員もいる。なにも住宅ローンの返済に追われているとかいう, 家庭の事情だけでなく,大学から本当に追い出されるかもしれない, という恐怖じゃ。そんなことできるわけない,と思いつつ, いざとなったら別の大学へ行けばいい,と思いつつもな。 2月16日の提出期限を過ぎても,意思確認書を提出しなかったら, 管理本部は電話で確認を要求してくるという説 (「オレオレ管理本部説」) もある。 不条理な連中は何を考え何をしだすか分からない,という意味で, 背筋の寒くなる思いをしている教員もいるのだ。

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L-9   2004年2月18日には,4つの都立の大学で56%の教員が「意思確認書」を出したって本当ですか?  次へ

ポーカス博士

それはな,管理本部に問い合わせた結果,マスコミ各社が入手した数字らしい。 今回の報道でわしが一番最初に見たのは,共同通信配信のニュースだった。 内容をポイント別で整理してみると:


(1) 2004年2月18日時点で,都立大教員の61%は意思確認書未提出。
(2) 他の3大学はほぼ全員が提出。
(3) 4大学全体の提出率は,約56%。
(4) 新大学には約430人の教員が必要だが,今の希望者数では不足する。
(5) 管理本部は,
  (a) 今後提出者が増える可能性がある,
  (b) 最終的に数が不足したら公募と非常勤で補充する,と発表。


数字の出し方がまず不明瞭だ(これは後で判明したことだが, 管理本部はマスコミ各社に同じ情報を提供したようだが, マスコミ各社がそれぞれ記事の長さの制限の元に発信したために, 今回のような数字の混乱になったようだ)。 後で簡単な検証をしてみるが, 明らかに実態に合わない数字を使っているようにも思える。 決定的に問題なのは,(5) (b) だ。 「最終的に数が不足したら公募と非常勤で補充する。」 というのは,今回の「意思確認書」が最終的に有効だと今でも主張して いることにつながる「イカク」だ。文部科学省が, そのような書面を要求していないことが明らかになった今になっても, あいかわらず強行突破をしようとしている。 「意思確認書をださなかったら雇わないよ!」と宣言しているようなもので, その効果を期待しているのだろう(「これくらい強く言えば, もっと多くの教員が意思確認書を出してくるだろう,なあ越後屋!」と思っている)。
 それから「他の3大学はほぼ全員が提出」という部分も本当に そのままの形で提出されたのかどうか疑わしい。 科学技術大学では,雲隠れした学部長を探し出して,教授会を開いて, 議論したが, 意思確認書に関しては強い疑念と要望が出されたと聞いている。前回の同意書の時とは違って, 明確に反対する教員もある程度まとまった数になっている。 きっと都合の悪い数字を隠したいのだろう。 さて,管理本部の数字のマジック(情報操作)の裏側をちょっと見てみよう。


(4大学共同声明に基づく2004年2月18日の試算は, 4大学全体で797人,都立大582人を基にしていたが, 2004年2月19日の東京新聞,読売新聞では, 4大学合計の教員数(教授,助教授,講師)が518名, 全体での提出者が282人で, となっていた。この数字が正しいとして, 2004年2月20日に以下のように計算し直した(第3試算)。 2004年2月21日に毎日新聞(2/19)の記事を発見し,その数字がおそらく 一番正確であろうという結論に達した。(第4試算。これまでと 変わらない部分は,そのままにして修正。)
 4大学全体での教員数:518人(東京新聞2/19など)
 4大学全体での「退職の意思を表明したり長期出張中の教員を除いた」数:505人(毎日新聞2/19)
 都立大学全体での教員数:362人(信頼すべき筋から得た管理本部が使っ ていると思われる数字)

検証 [1] Q: 4大学全体での提出者が56%というのは正しいか?  A: YES. 148人分不足している!
   282÷518 = 0.544 (提出者は282人,未提出者は,236人
   従って,共同通信(2/18),読売新聞(2/19)で56%と発表された数字は
   納得がいかない。東京新聞の54.4%が正しいように見える。
   (しかし,毎日新聞(2/19)の「退職の意思を表明したり長期出張中の教員を
   除いた」数に基づけば,282÷505=0.558 になるので,
   4大学全体での提出者が55.8%(従って56%)というのも正しい見方。
   (そうすると提出者は282人,未提出者は,223人
   「430人の教員数に達しなかった」としているがこれは,
   430 - 282 = 148 --- (a) なので148人不足ということ。
検証 [2] Q: 都立大教員の61%が未提出とは何人か?  A: 220人。
   362×0.61 = 220.82 (提出者は141人,未提出者は,221人) --- (b)
   毎日新聞(2/19)では、都立大提出者は142人(39.2%)となっていた
   ので未提出者は,220人ということになる。
検証 [3] Q: 都立大を除く3大学の教員は,「ほぼ全員が提出」というのは正しいか?  A: YES, but その中身に問題あり!
   4大学の教員数−都立大の教員数=3大学の教員数
   505 - 362 = 143 (退職の意思を表明したり長期出張中の教員を除いた数を使う)
   4大学全体での未提出者数−都立大全体での未提出者数=3大学での未提出者数
   223 - 220 = 3
   この計算結果から,「都立大を除く3大学では3人が未提出」となる。
   毎日新聞報道では保健科学大と短大は全員、科学技術大は45人中42人が提出した
   となっていたので,合致。従って数を言うだけなら3人だけ未提出いうことで,
   ほぼ全員提出というのは正しい。 しかし,(提出された意思確認書の中身を考えると欺瞞があることが判明する。)


ということで,いつものように根拠のわからない数字だったが,どうやら 発表の仕方に問題があったのではないか。ほぼ正確に数をつかんでいた のは毎日新聞だけだった。2月19日の文教委員会でも, 505人という数字が管理本部によって使われているが, 他の質問にたった議員から518人という数がでても訂正しなかったので, 変だと思っておった。

今回の報道における数字のずれをまとめてみると:
     4大学教員数 提出者  提出者の割合   都立大の未提出者の割合
共同通信   ?     ?     56%        61%
読売新聞  518人  282人   56%        ?
東京新聞  518人  282人   54.4%      ?
産経新聞  505人  282人   55%        ?
毎日新聞  518人
        505人  282人   55.8%      60.8%*
*注:実際には提出者の割合が39.2%として示されている。
共同通信は割合のみに言及。読売新聞は, 数字と割合に言及しているが,明らかに計算間違い。 いったいなんでこのようなことになるのか? それは, 4大学全体での「退職の意思を表明したり長期出張中の教員を除いた」数 (505人)を使って計算したものと,そうでない数(518人)を まぜこぜに使っていたからだ。 東京新聞は518人を母数にして計算して割合を自主的に再計算した。産経新聞と毎日新聞は, 4大学全体での「退職の意思を表明したり長期出張中の教員を除いた」数を使っ ていた。)

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L-10   そうかあ,学生側からせっかく教員に対しての要望書を出し たのに,半数以上が提出したのか...それで,同意書の時みたいに「意思確認書」を書き換えた りして出した教員はいないんですか?  次へ

ポーカス博士

実は「保留」と書いて提出した教員がかなりの数になっているとの情報 がある。科学技術大学から提出された「意思確認書」のおよそ半数も「保留」と 書かれていたり,字句の訂正や文の書き加えが行われたという噂だ。 そして問題なのは,このような事態が管理本部の今回の発表では まったく触れられていないことだ。 もし事実なら,情報隠蔽が行われたことになる。2004年2月19日の報道内 容からすると,「意思確認書」の有効性やそれに何か文言が付け加えられていた という事にはまったく言及していないからな。 つまり「提出された」=「新大学へ行くことを約束/契約した」わけではない 。この部分を大学管理本部は隠しているのだ。そして, 最終的に<「意思確認書」の>数が不足したら公募と非常勤で補充する, と言っているが,提出者282人が皆,首都大学へ行くと意志表明しているわけ ではないのに,なんでそんなことが主張できるのだろうか?!

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L-11   いったい「意思確認書」問題は,この先どうなって行くんでしょうか?  次へ

ポーカス博士

実は,その後,理学部と人文学部では,「意思確認書」は出さずに,文部科学省が求 めている数字だけを管理本部に伝えるという方策をとった。 これには, 「現段階で意思確認を求められることは不当であり、新大学に就任するともしないとも答えられない」 という意見からすると,裏切りのように映るかも知れない。 しかし,数字を出すこと自体は,「意思確認書」を出すことと等しくはない。 誰が「手を上げた」か分からないからな。しかし,文部科学省が求める数字を提 供するという意味では,管理本部の手助けをしたことにもなる。
 2004年2月19日の文教委員会で管理本部の大村参事は,次のような答弁をしている。

臼井委員(自民党)
  意思確認書を出していない教員は、首都大学には行けないのか?
大村参事(管理本部)
  現在、具体的に教育課程を確定する作業をし、教員を固める手順を踏んでい る。必要であれば公募と非常勤で補充しなければならない。4月の本申請に向け て準備をしているが、時間的余裕がないので、意思確認書を提出した教員を中心 にあてていく。

と,あいかわらず「意思確認書」を求める方針を崩していない。ただ, 今回の文教委員会の答弁ではっきりしたのは,管理本部も「意思確認書」に法的 拘束力がないと認めていることだ。例えば,次の答弁を見て欲しい。

臼井委員(自民党)
 都立の大学は移行型独立法人だから教員の身分は保障されるとか, 意思確認書に法的拘束力はないとか,いろいろ言われているが,意思確認書は出 さなくても良いのか。
大村参事(管理本部)
 首都大学の教員になるには、今回の意思確認書の提出が必要。提出しない場合 には,法人には行くことになるが、これは平成22年までの大学であり、 新大学には行くことは出来ない。意思確認書は、設置者として出したもの。 これには法的拘束力はないというのはその通り。

つまり,管理本部の主張するのは,意思確認書に法的拘束力はないけれど, 出さなかったら首都大学には行けないようにするぞという脅しと, 意思確認書を出さなくても法人には所属し, 平成22年度までの間は現存の大学所属として残れるという解釈じゃ。 特に,この後半の解釈は,2003年11月に学生が管理本部から話を聞いた時とは, 完全に逆転している(I-7)。 もしも本当に平成22年度まで都立大の教員でいられるのなら, わしもそれを選択したいような気がする。
 文部科学省も求めていない「意思確認書」,法的拘束力もない「意思確認書」 になぜ管理本部はそんなにこだわらなくてはならないのか? それはな,時間がないからじゃ。ようするに,4月30日の本申請で, 必ず通るような案を出さねばならないところに追い詰められている。 だからこそ,「これらの教員は絶対に首都大学に来ます,ほら, (法的拘束力はないけれど,設置者権限で出した) 意思確認書がここにちゃんとありますよ。法科大学院の時みたいに, 逃げられることがないように, 数だけでなくて名前がものをいうんですよ。」と言いたいわけじゃ。
そして,今,管理本部と都立の4大学の間に, 理事長予定者の高橋氏が仲介に乗り出している。 2月17日には,高橋氏が大学管理本部の人間を連れて都立大にやってきて, 茂木総長,および評議会のメンバーと話をした。すでに新聞にも出ておるが, 意思確認書の件に関しても,高橋氏がコメントしたようだ。管理本部の人間は反 発したようだが,今後,どのようになっていくのか,まだ先が読めない。
 ただ2004年2月20日の都知事の会見では, 「まぁ、新しい大学に参加しない人も、 生活のつてもあるのだろうし、5年間は経過措置とって、古いままの大学に、 大学そのものは変わっていきますけども、 古い大学を首肯するままにいらしていただいて結構ですよと、 こう言っている訳ですから。」 という発言をしているので, 幾分柔軟な思考をし始めているのかもしれない。 あいかわらず「なんにも代案が出てこないんだ。代案出さずに反対と いうのは、バカでもできるよ。」とわめいているが, 対案なんて受けつけない教学準備委員会の実態を知らないんだろうな,この人は。 まったくおめでたいというか,なんというか...部下がやっていることを, ちっとも把握していないんだな。
 2004年2月23日の教学準備委員会では, あいかわらず管理本部側が「意思確認書」 を提出して欲しいと繰り返していたようだが, 2月16日を過ぎてしまった現在, <3月4日の設置審の日まで,いや, いつでもいいから出して欲しい>というような穏やかな表現になっているそうじゃ。

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L-12   じゃあもう「意思確認書」問題は,うやむやにな るんですか?  次へ

ポーカス博士

いや,そんなことはない。実は,2月24日付で理事長予定者,学長予定者,大学 管理本部連名で「4大学教員の皆様へ」という文書が来た。要点は, 「意思確認書を出した人達だけで『新大学』を作っていくよ」ということじゃ。 読めば分かるが, 理事長や学長予定者が意思確認書を強引に提出することに懸念を持っていると 言う噂を払拭する狙いがあるのだと思う。管理本部はあくまでも 「新大学」へ行く人の名前が欲しいと言っている。まあ,読んでごらん。


4大学教員の皆様へ

首都大学東京の17年4月開学に向けて、日頃からご協力方、感謝しています。
2月23日の第6回教学準備委員会は、2月13日の学長予定者公表に伴う、座長から
のご挨拶及び報告事項を中心に行いました。
 座長からご挨拶いたしました骨子は、あわせてお送りしますが、私たちの真意 は、
「現在、意思確認書を提出しないということは、一緒に働こうという意思が確認 でき
ないということであり、意思確認書を提出して、新大学に行きたいという人だけ で、首
都大学東京はつくっていくつもりだ。」ということです。
 このことについては、組織的に総数での回答や、回答を保留する意思を表明し た都立
大学の一部系やコースの代表者には、明確にお伝えしました。
 参考までに、送付文書を添付しますので、ご覧ください。
 私たちの認識を知っていただいたうえで、ご判断いただきたく、ただちに最終 判断を
下すことは避け、3月4日の設置審運営委員会付議を予定していた教員審査省略は、 急
遽、4月に延伸することとしました。
 他方、新大学へ就任する意思がない場合、17年4月に間に合わせるよう、公募 等の
措置を講じるには、もうタイムリミットであるのは事実です。
上記主旨をお汲み取りいただき、先生方におかれましては、今後とも開学準備に 向け
て引きつづき取り組んでいただくよう、お願いします。

                    平成16年2月24日    
                            理事長予定者  高橋 宏
                            学長予定者   西澤 潤一
                            大学管理本部長 山口 一久

添付文書には,人文学部長宛の文書,経済学部長宛の文書,理学部長宛の文書, 教学準備委員会(2/23)の学長予定者発言骨子,教学準備委員会会議次第, 意思確認書,助手の人達に向けた文書,エクステンションセンターに関する新し い文書,入試検討委員会の文書,2月23日現在での意思確認書提出状況一覧表, 設置申請までのスケジュール表などがある。3学部長宛の文書では, 首都大学東京を意思確認のある人達で作っていこうと呼びかけており, 学部長向け文書では 遅くとも今週末(2/28)までに返事をして欲しい とし, 個個人の意思確認ができない場合、これ以上待つことは今後の17年4月 の開学に向けた準備作業に具体的な支障をきたすと明言している。
イカクの構図 一見おだやかに見える文章でありながら, せっぱ詰まった管理本部の様子が感じられ,窮鼠猫をかむ 的な怖さがにじみでている。そりゃあいったい何かって? 想像するに,<意思確認書を出さない人は,みんな新大学では雇わないよ>, <公募するからね>,<どうしても名前の出てこないところは, 新大学からはずしちゃうかもしれないよ,本気だよ!>と言っているのだな。
 3月1日にまたまた,理事長予定者,学長予定者, 大学管理本部長の連名文書が届き,今週末(3/6)までに提出をして欲しいと 書いてあった。
その時点で,301名の提出者があったようだ。 ここまで「威嚇」されると,さすがに不気味なものがある。 今回の「意思確認書」は, とりあえず(注文でもつけて)全員提出してしまう,という案も浮上しているが, 果たして本当にそれが良いものかどうか。 管理本部の教員分断作戦というのが, 「イカクの構図」の中心にあると主張する人達もいるのじゃな。

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L-13   2004年3月10日に朝日新聞の「新大学批判者に 『最後通告』」という記事を読んだんですが,「首大」については もう自由に批判もできないということなんですか?  次へ

ポーカス博士

まあ,最初に問題の文書 を読んでみてくれ。書いた人は,大学管理本部長のようじゃ。 内容を西澤学長予定者にも確かめたというのだが, この文書を見せたかどうかは定かではない。
まず全体は3部構成になっていて,最初が今後の改革の進め方「知事にはまったく新しい大学として 『首都大学東京』を17年度に断固として開学する強い思い」があると 前書きをしておきながら (<改組・転換の大学>であることをあいかわらず, 無視して「新しい大学」と言い続けている), 「改革である以上、現大学との対話、協議に基づく妥協はありえない」 として対話や協議をしないと宣言している。 常識から言うと, 「改革である以上、現大学との対話、協議に基づく検討が必要である」 となるはずだ。 「改革である以上、妥協はありえない」という考え方は筋が通っているが, 「現大学との対話、協議」がよほどやりたくないらしく(時間がないから), 無理やり文の中に押し込めてしまったから, へんてこりんな文ができてしまった。
 現存する4つの大学の教員を吸収する形で作られるのに, その教員と対話や協議をすることが,すなわち妥協である, という判断は間違っている評議会の見解(3/9)でも述べられているように, <開かれた協議をしよう>と言っているのが分からないのだな。 公開の場で自由闊達な議論をする(なつかしい響き)というの は,当然さまざまな批判を検討してよりよい案を作っていくということじゃ。 「『首都大学東京』は、 東京都がそこに学ぶ学生や東京で活躍するさまざまな人々のために設置するもの であり、教員のためではない」というのが面白い点だが, だったら「学生や都民の意見を聞きなさい!」と言いたい。
 第2点の大学院の検討じゃが,これも検討部会を教学準備委員会の 下に作って,第3回教学準備委員会で提示した川勝委員案を元に作ると宣言 している。ここでも話し合う様子がない。 きっと他の検討部会にも登場する管理本部と仲のいい教授が名前を連ねる ことになるだろうと思っていたら,予想通りの検討部会ができてしまった。 さらに西澤潤一学長予定者の3月11日付の文 書まで出てきている。
 そして第3点。意思確認書提出の取扱い、混乱の責任。 これは,混乱の原因が「改革」に批判をした教員にあるという, 本末転倒の恫喝じゃ。「何らかの仕切りが必要」とか, 「なんらかの担保がないかぎり」というのはいったい何を意味しているのか? こんな言葉で大学の教育や研究を語ることができるのか? 威嚇かと思ったら,恫喝になっていた,という話じゃ。やれやれ。 借金の取り立て業者がやってきたような怖さがある。

 3月18日の文教委員会で管 理本部はついに「意思確認書」に関して,2月中の提出者と3月以降の提出者とを区別する と公言した。非協力的な教員に対する<差別待遇>がなされるとして毎日新聞 (3/19)は報道したが,果たして何をするつもりなのか? 法的根拠のない文書を 盾にして,その提出が遅れたからといって処罰や冷遇措置を講ずることは当然で きない。「首大」の設立記念式典に招待されないとか,招待されても椅子がない とか,いろいろな嫌がらせが考えられる。 「批判的な行動を繰り返した人たちが『新大学に行く』と急に表明されても, 建設的に参加するのかどうか。学長予定者らが納得ができる何らかの担保が必要だ」 という部分は,公式な場を設けて謝罪しろと言っているという噂だ。 数々の非礼,質問状に対しての無回答,現都立大の崩壊の責任に対して, 謝罪すべきは管理本部であろう。もっとも,謝罪してもらっても, もう崩壊してしまった部分は元に戻らないが...知事と 管理本部は,都立4大学の教員と学生にどれだけの負担をかけ, 研究・教育上の不利益を及ぼしたか,精神的苦痛を与えたか, 理解していないのだろうが責任は重大だ。 「首大」のことには無関心になれても, 現在の大学の状況は深刻じゃ。8・1事件以後に起った 「教員流失」,「人事ストップ」,「予算カット」 という三重苦の中で,「首大」のための書類を書かさせられ, 教育と研究も今まで通りにやれと言われるのが教員だ。 そんな疲れきった教員の元で学生が無関心でいられるはずはない。 指導教授が転出してしまって泣いている学生,教員が会議で多忙なために 十分な相談時間がなくなって困っている学生,優秀な非常勤の先生の 授業が予算カットで無くなって途方に暮れている学生...
 「首大」がこのまま成立したとして, 知事が替わり管理本部の現在のスタッフが別の部署へ配置転換になったとしても, 石原氏と管理本部のみなさんは裁判で10年以上引きずり回される覚悟を決めているのだろうか? もし,そんなこと考えてもみなかった, というのなら今から覚悟をしておいてほしい。(これはイカクでも恫喝でもない。 本気でこのように考えている教員と学生が大勢いるという事実だ。) 8・1事件からわれわれが学んだ事,それは決して泣き寝入りしないこ と,自分達の権利を守るためには戦わねばならないということだ。今起きている ことを,決して忘れてはならない。ひとつひとつ心の中に記録しておくのだ。

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L-14   2004年3月29日配信の共同通信ニュース には,「教員の96%新大学へ移行 都立大めぐる混乱収拾へ」という記事が出 ていたのですが,その真相は?  次へ

ポーカス博士

yahooニュース速報の共同通信ニュース (http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040329-00000228-kyodo-soci) に載っていたな。 「東京都が都立の4大学を統合して2005年4月に開設予定の「首都大 学東京」に4大学の教員の約96%が移行する見通しになったことが29日、分 かった」と報道された。さらに, 「一時は新大学構想に対する反発から都立大教員の6割近くが新大学への就任意思 確認書を提出せず混乱が広がっていたが、事実上収拾へ向かうとみられる。都は 教員配置を固めた上で4月下旬、文部科学省に設置認可を申請する」となって いるが,その真相はちょっとこみいっている。ここで意思確認書の話を書きたく ても書けなかった事情がある。簡単に説明しよう。(4/1修正)

(i) 2月末: 総長と高橋理事長予定者が連絡を取り,3月8日に総長,理事長 予定者,学長予定者,管理本部長の4者会談が設定される(西澤氏は予定 がつかず,結果的に3者会談となる)。
(ii) 3月3日: 上記トップ会談に向けて,論点整理のため実務レベルでの折衝 が管理本部で行われる。
(iii) 3月4日: 3月3日に引き続き事務レベルの折衝が継続される予定だったが, 突然の横槍でキャンセル。管理本部は「信義違反があったので全 体でお会いすることは今後ありません」(??)と説明。
(iv) 3月5日: 3月8日に予定されていた3者会談が正式にキャンセルされる。
(v) 3月8日(月): 管理本部長が総長との会見を行うとの連絡が事務局経由で 入り,都立大総長が管理本部に行くが,一方的通告を受ける(内容は, 翌日の恫喝文書と同じ)。
(vi) 3月9日(火): 管理本部長と学 長予定者連名の文書が大学に送付される(いわゆる恫喝文書)。 同日開催されていた定例評議会は, この文書を問題にし, 3月8日の総長と大学管理本部長の会見に係る評議会見解を発表。
(vii) 3月23日(火): 都立4大学学長,理事長予定者,管理本部長のトップ会談が開かれ る(学長予定者は欠席)。
(viii) 3月29日(月): 第2回経営準備室運営会議,第7回教学準備委員会が開かれる。

まず,トップ会談(3/4)がキャンセルされてしまったこと。せっかく話し合いの場 が設定されて,当事者が集まる予定になっていたのに,別の所からの圧力がかか りキャンセルになったという噂だ。その噂の背後には,大学管理本部と知事, 副知事のあたりの力関係・人間関係がからまっているという噂で,真相は分から ない。その結果,総長が管理本部に呼ばれ(3/8)恫喝文書(3/9)と同じ内容を告げ るられることになった。話し合いの土壌はここで一旦とぎれてしまった。
 都立大学総長や一部の学部,教員達は, 管理本部との話し合いの場所を作ろうと努力した(今度は,横槍が入らないよ うに気を使った)。管理本部側も一部でかなり軟化し,話し合いの機運が高まっ た。教学準備委員会(3/29)に先立ち,管理本部の知事や副知事の所でのブリーフィ ングが行われた。そして,そのあたりのタイミングを見計らって 人文学部の意思確認書がまとめて事務局長に提出された(3/22)。 提出の仕方は,学部長がとりまとめて所属先を削除し <まとめてドーン>方式だった (評議会決議の精神に反するという根強い批判もあったが,このような裏技で, 「威嚇」が無効になり,問題の焦点が4月末の就任承諾書に移ったという 認識もある)。 これで,管理本部としては,「意思確認書が人文学部からでました」 と胸を張って報告でき,人文学部としては, 「これを機会に話し合いをして大学院を作って いきましょうね」という下地を作ったように見えた。

 しかし,3月23日のトップ会談,つづく3月29日の最後の教学準備委員会 で話し合われた内容とその解釈は,大学管理本部と都立大総長の間で 大きく異なっていることが発覚した。 その部分のいきさつと内容に関しては, P-11P-12, P-13, P-14を見て欲しい。
 さてさて,お待たせしたが,「教員の96%新大学へ移行 都立大めぐる混乱収拾へ」 というのは本当だろうか?
答:本当ではない! 混乱は収拾するどころか ますます現状は混迷を深めている。 その理由を挙げよう:
(1) 管理本部は,あらたな教学組織に関する 話し合いの場を作ると言明しているが,まだその委員会のメンバーも公表されて いない。一部の協力派教員だけを集めて,密室での議論を繰り返しているという 噂もある(いままでの教学準備委員会よりも悪い)。
(2) 管理本部長は, 「4・14総長・本部長会談」(P-15) でも相変わらず「妥協を含むような協議はしない」とつっぱねている。
(3) 当初,4月末に管理本部は就任承諾書の提出を求めてくると考えられていた が,おそらく6月までずれ込むのではないかと予想されている。というのは, 各大学での管理本部による説明会が開かれていないし,組合との話し合いも ほとんど煮詰まっていないからだ。 「4・9山口文書」の第4ページに載っている

「任期制・年俸制の導入については、すでに組合に提示し、各大学での説明会も 開催したところであるが」

というのはなのだ! 都立大学での説明会は,2004年5月13日(木)に 初めて開かれる(科学技術大学だけで,3月8日に説明会が開かれた)。 保健科学大学や短大で,近日説明会が行われるという話は聞いていない。
(4) 「首大」における雇用条件の悪さ,研究環境の悪化,教育体制の管理強化 という三重苦が,多くの教員にとって重く影を落としている。 なんとか,これまでの研究・教育の火を消さずに頑張ろうと思っていた多くの教 員が不安を抱え,できたら「首大」へ行きたくないと考え始めている。 都立大の場合は,「首大」教員に移行せずに,都立大教員として平成22年度まで 残り,その間に再就職したいという希望者が激増している。

 そういう背景もあるので,2004年度の 傾斜配分にまで,「首大移行」を条件に付けてプレッシャーをかけているの だろう。「首大」へ移行しないと,こんなに不利だと宣伝し,就任承諾書提出提出を遅らせることで, 撤回されていない「3・9恫喝書」「4・9山口文書」での不快なイメージ を忘れさせたいのだ。最後に一言:これまでまじめに研究・教育に専心し てきた多くの教員にとって,『首大構想』は,全く魅力がない!

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L-15   2004年5月25日の朝日新聞の社説をどう思いまし たか?  次へ

ポーカス博士

「■都立大統合――現場の声をよく聞いて」というタイトルのついた論説だな。 敢えて「評価」をさせてもらえば,65点というところかな。 その根拠は後で示す。ではさっそく本文の検討から始めよう。


 東京都立大や東京都立保健科学大など都立の4校をまとめて新しい大学をつく る構想が、都の申請を受けた文部科学省から大学設置審議会に諮問された。新大 学の開設は、昨年4月に再選された石原都知事の選挙公約のひとつだった。
 大学の再編や統合そのものは、国立大学でも広がっており、大きな流れといえ る。問題はその進め方である。都側と各大学がよく話し合い、練り上げたとはと ても思えないからだ。
 4校の中では東京都立大の規模が一番大きい。新大学づくりにあたっては、そ の教職員の意見を十分聞くのが当然だろう。しかし、どんな教育コースを新設す るかなどを検討する部会にはだれも入らず、単位認定の仕組みを検討する部会へ の参加も1人だけだった。
 新大学の目玉となる都市教養学部の「都市教養コース」「国際文化コース」な どにいたっては、理念づくりや授業科目を予備校の河合塾に外注した。
 こうしたやり方に抗議して、東京都立大の法学部では教員4人が辞職した。 経済学部でも12人が移行を拒否した。
 申請を急いだためか、大学院は再編案が間に合わず、ほぼ今のままの形で申請 された。新しい大学院の姿がはっきりしないのでは、勉学を深めようとする学生 は不安になるだろう。
 教育現場の不安や不信を引きずっていては統合もうまくいくまい。大学設置審 議会は、大学側の意見をじっくり聞くなど腰を据えて論議してほしい。
 国立大学が法人に移行するのと併せて、公立大学も法人化が可能になった。都 立の新大学も法人化をめざしているという。ならば、都と大学側の意思疎通はそ の面からも大事だろう。
 東京都立大にも注文をつけたい。
 77校でつくる公立大学協会は昨年秋に「地域のかかえる今日的課題を常に念 頭に置いて」研究・教育に取り組まねばならないという見解を出した。大学が競 争時代に入る法人化を意識したものだが、自治体が設立しているのだから、当然 といえば当然のことだ。
 しかし、その点で、東京都立大の努力は十分だったとは言い難い。都市科学研 究科や都市研究所をつくったのは、ほんの10年前だ。他大学で盛んな地元高校 への出張授業などもわずか。大学の研究を起業に結びつけた「大学発ベンチャー」 も、まだもっていない。
 大学の原型は、中世の教会で聖職者をめざす若者がワラ束を持って集まり、回 廊のあたりに腰を下ろして教師の話を聞いたことだという。「学生と教師がいれ ば、それが大学だった」と、歴史家の阿部謹也さんは書いている。
 研究や教育の主役は、いつの時代も教員と学生なのである。
 東京都は設置者の権限を振り回さず、現場の声に耳を傾ける。大学側も地域 に何ができるか真剣に考える。そうあってこそ、よりよい大学ができる。


全体が5つに分かれている。その概略をわしなりにまとめてみたのが, 下の構成だ。

I. 問題提起:
 「新大学を作る構想の進め方がおかしい」
 →具体的には「都側と各大学がよく話し合い、練り上げたとは思えない」
II. 裏づけ:
 (1) 4大学中で都立大が最大なのに新設コース検討部会には都立大からは誰もいない。
 (2) 単位認定の仕組みを検討する部会には都立大からは1人しかいない。
 (3) 「都市教養コース」「国際文化コース」の理念や授業科目を河合塾に丸投げした。
III. 抗議の例:
 (1) 法学部では4人が辞職
 (2) 経済学部では12人が移行を拒否
IV. 筆者の観察・見解:
 (1) ?
 --- (事実の指摘) 大学院がほとんど今のまま。新大学の大学院の姿が不明。
 --- (推測断定) 学生が不安であろう。
 --- (推測断定) 教育現場の不安や不信を引きずっていては統合はうまくいかないだろう。
 --- (要請) 大学設置審議会は、大学側の意見をじっくり聞くなど腰を据えて論議 してほしい。
 --- (推測断定) 法人化するのだから,都と大学側の意思疎通は大事。
 (2) 都立大への注文
 地域のかかえる課題を念頭に置いて研究・教育に取り組むべきだ。
 「都立大の努力は十分だったとは言いがたい」
 具体例:
 (1) 都市科学研究科や都市研究所をつくったのはほんの10年前。
 (2) 他大学で盛んな地元高校への出張授業などもわずか。
 (3) 大学の研究を起業に結びつけた「大学発ベンチャー」がまだない。
V. 結論
 大学の原型--- 歴史家の阿部謹也氏の説明を引用
 「学生と教師がいれば、それが大学だった」 →研究や教育の主役は、いつの時代も教員と学生
 (1) 東京都は設置者の権限を振り回さず、現場の声に耳を傾ける。
 (2) 大学側も地域に何ができるか真剣に考える。
 →「そうすればよい大学ができる」

問題提起として,「新大学を作る構想の進め方がおかしい」とし, より具体的には「都側と各大学がよく話し合い、練り上げたとは思えない」 と始まる。このように始まったのなら,当然結論もそれにあった形で, 「都側と各大学が話し合いをすべきである」がそれを阻んでいるものは何か を分析し,このようにすべきだと提案するのが議論の進め方 として正しい。しかし,そうなっていない。これは昨今の朝日新聞の論説で よくあるパターンのような気がするが,「Aが大切だ,でもBも大切なことを 忘れてはならない。だからAもBも大切だ」という論理の組み立てになってい る(「大切」の部分には,「必要」でも「正しい」でも入れることができる)。 このような論説の書き方を<「右を見て左をみてから渡ろうね」手法>と呼ぶ。
 それが発揮されているのは,IV. 筆者の観察・見解の部分だ。 「都立大にも注文をつけたい」の部分をBとすると, Aの部分は誰に対してのどのような注文なのか? それは, 「大学設置審議会は、大学側の意見をじっくり聞くなど腰を据えて論議してほしい という要請」の形で書かれているが,その前に「東京都側に対しての注文」 が最後の結論部分で触れられているだけで,具体的に肉づけされていない 。東京都が大学管理本部という名のもとに,設置者権限を振り回して 何をやってきたのかが具体的に書かれていないのだ。論説の書き方として, <「右を見て左をみてから渡ろうね」手法>を使うのは勝手だが, ABを対等におくなら, Aの部分の肉づけがない,突っ込みがない というのは,純粋に論説の構成としてマイナス10点だ。

 Bの都立大に対しての注文というのも,とぼけているとしか言いようがな い。 「(1) 都市科学研究科や都市研究所をつくったのはほんの10年前」 というが都立大学の歴史はたかだが50年だが,その設立は1977年の 「都市研究センター」までさかのぼるから,27年の歴史がある (「東京都立大学50年史」)。ほんの10年前に始めたというのは調査不足だ。 また,本来批判をするなら,「実際に行われている研究」や, 「具体的な地元貢献」の調査結果を検討すべきだ。

また, 「(2) 他大学で盛んな地元高校への出張授業などもわずか」というが, 大学の地域社会への貢献の大きな柱に,地元高校への出張授業が位置づけられる とは思えない。もし,「大学の地域社会への貢献の大きな柱に地元高校への 出張授業がある」と主張したいのなら,その理由づけをすべきだ。さらに, 「(3) 大学の研究を起業に結びつけた『大学発ベンチャー』がまだない」 ことがまたまた都立大への大きな注文だとしたら,「大学発ベンチャー」 の社会における重要性,必要性を説いてからにして欲しい。ということで,ここ での都立大に対する注文は,説明不足と論点のすり替えということで, それぞれマイナス5点。5×3=15点のマイナスとした。
 大学教育を実践的な直接役立つものへ転換していこうという方向づけ以前に, 「本来の大学教育はこうあるべきだ」という視点が欠如している 論説が目立つ。残念なことであるとともに,なさけないと思っている。 今回の論説の背後にも,このような考え方が横たわっている,とわしは見た。

 結論部分の頭出しとして使った歴史家の阿部謹也氏の 「学生と教師がいれば、それが大学だった」という引用と, そこから導き出した「研究や教育の主役は、いつの時代も教員と学生」 は,それなりに筋が通っているのだが,最後に本当の結論として 「東京都も教員側も努力しようね」というところとは, まったくつながらない。整合性がない。この頭だしを使うなら, 結論も当然違ったものにすべきだろうし,この最終結論を使うのなら, この阿部謹也氏の引用は不要である。ここも論理不整合ということで, マイナス10点。

 純粋に論説という観点から見ての評価はこれくらいにしておこう。 都立4大学統合問題が, 朝日新聞という大新聞の社説に取りあげられた,という価値は大きい。 部分的に事実誤認(「単位認定の仕組みを検討する部会」というのは 単位バンク検討部会のことで, 単位バンクは大学教育を破壊するものだ ということを理解していない,「どんな教育コースを新設するかなどを検討する部 会」というのは「新分野検討部会」で,日野キャンパスの科学技術大学を大きくして, 南大沢の都立大をリストラし,削減するという動きがあって,都立大教員が 入っていないこと,など)があるが,世間に問題に気づいてもらうという 意味では,大きな影響力を持つと思う。 敢えてこの問題を社説に取りあげた 人達には,感謝とエールを送りたい。できることなら,もっと独自の 取材に基づく突っ込みが欲しかった,というのが正直な感想だ。

と書いたら,「意見広告の会」ニュース164号の中で,事務局の人に批判されてしまった。

 100点を満点とした評価を行うつもりはありませんが、「敢えてこの問題を社説に 取りあげた人達には,感謝とエールを送りたい」という「FAQ」には、当事者ゆえの 期待が込められすぎており(或いはもしかしたら「戦術的」に過ぎ)、大新聞の傲慢を 助長する恐れがないとは言えません。

はい,ごもっとも。朝日の「どんでん返し」の記事を批判しておきながら, 自分でも最後に「どんでん返し」をやってしまった。「反省!」 >ポーカス

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